全員 殲滅戦
N『こちら戦闘終了...負傷のためこれより帰還する』
M「了解。帰還ルートはアルファ5」
N『了ー...解』
目の前のクソデカモニターに映されているマップに、緑色の点がフラフラと動く。
その隣のマップでは、濃い紫色の点がビルとビルの間を有り得ないルートで動き回る。
黄緑と赤の点は動かないにしろ、たまに笑い声が聞こえ随分と楽しんでいる様子が伺える。
桃色はどうやら任務が終わったよう。目標建物内から出てきている。
紫は濃紫の傍で奮闘中らしい。
M「さて...と」
今のところの負傷者は、NとTと...Kかね。
Kは負傷かどうか知らんけど。
T『い゛った...は?どこだよ(銃声)』
あーこれは。
今回の魔改造済みのサブマシンガン、BP-9の連射音かね。
あれ銃弾手に入れるの難しいんですけど〜...。
T『クソ、一応報告。左腕被弾。かすり傷。』
M「了解。殲滅に支障は」
T『あるわけなくて。っだーもうこいつらっ』
ウンウンこちらも楽しそうでなにより。
と、突如聞きたくない鈍い音が。
H『あっ。やべ』
M「んーーあ〜〜〜聞きたくない聞きたくない何事????」
H『えっ!あー...ね!うん!』
鈍い音、というか何かが折れたような、聞き間違えれば甲高い音。
S『...こいつ今回のMから貰ったやつ折りましたー』
H『アッこらSチクるなッ』
S『いや帰れば分かること、っどりゃあ!』
えええええぇぇぇぇぇ。
まって、それもしかして今回渡したやつってさ。
もしかして第二次世界大戦時のナイフかなぁ〜〜。
M「〜〜〜〜ッ...私も欲しいKA-BAR...」
H『っだぁぁぁ!!!っと、ごめーん銃弾受けたら折っちゃった!』
M「はぁぁぁぁ......はい、負傷は...?」
H『お陰でなーいっ』
M「了解〜...引き続きよろしくね...」
怪我ないならいっかぁ、なんて少し涙が出てきたり出てこなかったりと。
T『ふー...こちらT、多少てこずったけど無事任務完了。』
おや。あの勢いで全て殲滅したか。
流石だな。
T『...どうぞ?』
M「!あ、了解!」
しまった。感心していたら返答が遅れてしまった。
T『しっかりしてよね司令塔』
M「ごめんごめん」
そして耳元で何かが潰れる音がする。
I『んー?あーこちらももんだいなーし。無事しゅーりょーっと』
M「了解。二人は帰路アルファ7で」
I『はーい』
T『ん』
さてとまぁ、医療キットの準備でもして彼らの帰還を待つこととしますか。
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K「はーあ!やだやだ!こんなもの被ってまでオッサンの相手とか!」
綺麗に装飾された控えめなネイルが月光に反射する。
ふわっと長い髪を風に乗せて、彼はビルから出てくる。
K「かわいい女の子なら沢山サービスしちゃうのに!なんでオッサン!?アタシそんな趣味ないわ!!!!」
そして、耳元の小さなインカムに手を添えて怒鳴る。
K「ちょっとぉ!さっきから黙って聞いてればあんたたち!?息遣い荒すぎ!!こちとらそれ聴きながらオッサンと密着してたんだよ!?!?」
今はまだNが殴られて間もない頃。
どうやらHとIがメインにKのインカムをうるさくしていたらしい。
H『ぎゃーーー!いきなり叫ばないで!?』
T『(キーーン)...お前もな』
S『 音 割 れ や め て 』
ふんっ、と息を吐き出すと、今日のモノについて愚痴を吐き始めた。
K「アイツさ〜!絶対チ〇コ綺麗にしてないって!まじ臭かった!ほんとヤダああいう男!!」
イライラがヒールの音によく響く。
どうやら相当嫌だったらしい。
が。
H『あーごめんそういうのは帰ってからで!聞くからー!』
I『今汚い話しないでー』
K「はー!!?!?あっそ!帰るっ!M!!」
M『あー、ルートアルファ4で。』
聞きながらキレながら、ライダージャケットを羽織りヘルメットを付ける。
K「もー!今日まじでいい事ない!俺も負傷で良くない!?」
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T「...え、え?え??」
I「ん?」
T「おま、殲滅数...?」
I「あーこれ?んー、ま、ちょっと多めにやっつけちゃっただけー」
T「あー、道理でこのビルに来るやつ少ないなって」
I「うん、このTの居る3本のビル全部守ったー」
T「やば。w」
I「よゆー(ピース)」
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その作戦から暫くして。
全員が帰還、応急処置、今回の殲滅数報告、戦況データ報告が終わり、それぞれが治療、メンテ、データ作りに専念しているところへ。
ドンドンと背後の扉を叩かれるM。
M「はーいまってー」
重く厚い防音扉を開けたその先には。
M「N、めずらし」
N「ん、ちょ手伝って」
不格好に湿布を貼った、やつれた顔のNが立っていた。
N「失礼するよー」
M「はーいどうぞどうぞ」
すとんとふかふかカーペットに腰を下ろせば、右手に持っていた救急箱を開けて何かを探し始める。
N「いやさー、顔に貼るのむずくて」
M「あーね、どれどれ湿布とりま取るよ」
すっと顔に手を添えこちらを向かせる。
ぺり、としわしわの湿布を剥がせば、隠れた青い痣がちらりと現れる。
M「うわー酷い痣...相当強い力で殴られたな。てか処置したの誰?貼り方きったな。」
N「S。」
M「あれー」
それからMは処置の仕方を聞く。
アレルギーの薬は?
_ない。
好みの薬は?
_ヒルドイドかなぁ。特に指定はないけど。
うーん、なるほど。湿布にする?ガーゼにする?一応擦り傷と内出血あるんだよね。
_個人的に片目使えなくてもいいから早く治る方で。
M「おっけー、ヒルドイド塗ってチビガーゼ貼った後に眼帯付けますね」
N「んーよろしく、ありがとうね」
M「いえいえ」
ぬりぬり、ベリペタ、スッスッ、ギュ。
ひと通り作業も終わり。
N「うおーサンキュ、こりゃ気持ち悪くなくていいな」
M「よし」
N「んじゃ、風呂上がりと寝起きによろしくー」
M「...んっ?」