HIK ○○しないと出られない部屋
目が覚めると。
真っ白な部屋が視界に飛び込んだ。
「では、スタート」
「ど、どうするよ、え、どうしよう」
慌てふためくのはH。それを鼻で笑うK。
「どうするって、要はキスすりゃいいんでしょ」
「いや、え、それやばいやつじゃんフツーに」
「んー、まぁKがなんとかしてくれるでしょ」
余裕そうなのはI。腰に手を置いて気だるげそうに立っている。
「おいI、投げやりやめろって」
「そ、そーだぞ、I」
「えー、じゃあどうすんのさ」
しばらくの沈黙。
真っ白な部屋、ひとつのテーブルの上に乗ったタブレットには、「『キスしないと 出られない部屋』に入ってしまいました。30分以内に実行してください。」の文字が。
「...てか誰だよっ、こんな部屋に閉じ込めやがってっ」
H、一つだけある扉に向かって蹴りを入れる。
しかし扉はビクともしなかった。
「くそがっ」
その時、タブレットが音を発した。
「あと、25分です」
「ほらー!言ってるよH!」
「はぁ?!私かよ!誰と!?!?」
煽るK。
「あ、やる気なんだ、へぇ...」
「ちょ、違うじゃん、待ってよ。」
ドン引きのI。
「ほらやってよ、ベロチューのH♪」
「K、お前マジふざけんなぶっ飛ばすぞ」
「さぁ残り10分を切りました、やばいです。」
「んな事言ってないでなんか打開策!K!!」
相変わらず漫才のように喋るKとH。
「え?Hがやるんじゃないの?Kに」
「やだよなんで俺なのIでしょ?」
「いや、うちがやるなんて一言も言ってないんだけど」
沈黙。
そしてタブレットから音声が流れる。
「残り、5分」
「あーーーガチでやばいじゃん!!!」
頭を抱えるH。
「Iー、これ脱出しないと死ぬ系かなー」
「多分そうじゃね?」
「なんで2人とも余裕なのさーーーーー」
パニックの余り、部屋の中を走り回るという奇行をするH。
「残り、4分」
「うわ、ガチ奇行種w」
「wwwww」
「いやーーーー死にたくない!なんとかしてやKコラ!」
「なんとかするってもねぇ...I?」
「ねー、どうしよっか」
「残り3分」
「あ、I、ちょっとちょっと」
「んー?」
KがIにそっと耳打ちをする。
「残り2分」
「ど?よくね?」
「うわ、K性格悪っw」
「俺はこれが標準だから」
「いやーーーーーっ」
ドタバタと走り回るH。
「残り1分」
「も、もういい、2人がやらないなら私が...っ、」
「あ、H?こっち向いて」
KがHに声をかける。
振り返ると、Kの隣には嫌そうに目を瞑ったIが。
「うふふw」
「な、何してんだよ、2人とも」
「いーからいーから、みてて」
「残り30秒」
「Kー?まだー?」
「まだまだ、あと30秒もある」
「まだ焦らすのw」
「ね、ねぇ、時間やばいよ、ねぇ」
「残り、10秒」
とうとうカウントダウンを始めるタブレット。
「うふふw」
「そーそー、Hは座って見てればいいよー」
「はぁ?訳わかんない...」
残り2秒の時。
Kが、隣で目を瞑っているIの頬に軽くキスを落とした。
瞬間、扉の鍵が開く音が部屋に響いた。
パニックから一気に解放されて、腰を抜かすH。
「流石のゴリラも死には弱いかーw」
「ね?焦らした方が面白いでしょ?」
「いつも思うけどKの発想やばいよねw」
「いやこれが通常だからw」
「...へ、何が、」
座り込んでいるHを置いて、部屋から出ようとする2人。
「そんなんで一々ビビってたら生きていけねーって」
「おら帰るぞ」
はっ。
「...え?私の夢?」
なんだこれ。