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海姫さまの冒険記  作者: 有寿
ー思い出編ー
5/8

1-5. 新しい世界

「号外!号外ー!禁忌(きんき)だー!禁忌を犯した者が出たぞー!」


僕は外へ飛び出して、父さんに駆け寄る。


「父さん!なんで!?どうして?!」


「誠……。いいんだよ…。お前は子供だから…。父さんの愚かさが悪いんだ…。ごめんな…。」


周りにいる野次馬が僕たちをゴミのような目で見て、コソコソ話している。


「父さん……。こんなのおかしいよ!!何で?絶対おかしいだろ!!」


「禁忌を犯した者は祭壇(さいだん)行き。ここではそれが(おきて)なんだ。誠。お前は大丈夫だからまずは安心しろよ。」


父さんは何か覚悟を決めたように、吹っ切れてしまっている。


そんな中、うみなり国の(おさ)が僕の後ろから言う。

「誠くん。大和は禁忌を犯した。君も……怪しいが人魚様が命を救ったというのは、どうやら本当らしい。だから君を祭壇行きにするわけにもいかない。」


「ははは。そういう事だ誠。お前は人魚様に助けられた命。宮司(ぐうじ)なったら、祠の管理(ほこらのかんり)を頼むぞ。」


父さん…なんでこんな時でも楽観的なんだよ。

少しくらい、死の恐怖はないのか?


「ては誠くん。今回特例となる君の免罪状(めんざいじょう)を言い渡す。君は20歳になるまでうみなり国への立ち入りを固く禁ずる。従って20歳まではワシの息のかかった環境で過ごしてもらうぞ。」


そんな事どうでもいい。父さんが……嫌だ……嫌だ……。


「誠!優!そんな顔するな!父さんは免罪になるため祭壇へ行くだけだ!母さんの事頼むぞ!!」


父さんはにっこり微笑んで、お別れの挨拶をして車に乗せられあっさりと去っていく。


僕は何の返答もできないまま、父さんはどんどん遠くへ行ってしまう。


知らない人たちが僕の荷物を段ボールに詰めて、乗ったことのない車に詰めていく。


「誠くん!僕が君の面倒を見る安部野光(あべのひかり)です。長い付き合いになるけどよろしくね!」


安部野…村長と同じ苗字。親子か…。


「じゃあお母さん!誠くんお預かりします。しっかり育て上げますので、ご安心ください。では!」


母さんも優も僕と一緒で、今どうしてこうなったのか状況を理解できていないんだ。


誰のせい……?僕……。僕が釣りなんてしようと言わなかったら……。僕のせいだ……。


「じゃあ誠くん。行こうか!!」

安部野さんは僕の手を握り、車に乗せ野次馬の群れを避けながら突っ走る。


母さんと優は死んだ目をして僕を見送る。

そうだよ。僕は母さんと優に恨まれて当然。



母さん。父さん。優。全部僕のせいだ…。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」


「誠くん!!落ち着いて!!落ち着いて。大丈夫!」


「!?」


安部野さんはいつの間にか声に出していた僕に言う。


「誠くん。僕は小さい頃、うみなり国で育ったんだ。大和とは1歳違いのいとこで毎日一緒に遊んでいたんだ。だから大和が息子の面倒を俺に頼んできて引き受けたんだ。辛いのは俺も同じなんだ。誠くんもうみなり国がおかしいって気づいたかい?」


「おかしいと言うか祭壇に連れられた人って、あの巨大エビに食べられるんじゃ無いんですかね……。」


「ああ。僕は見たことないから分からないが、そう思う。俺の親父は多分それを知ってて黙ってるんだ。昨日山田は親父と二人きりで個室に入って数分話した後、巨大エビなんて見てないって言うんだよ。裏事情は俺も詳しくは知らない。」


「父さん…長さんとここ最近、軽石(かるいし)を巡って罵声が飛び交うくらい喧嘩をしていたんです。」


「はあ…そうだったのか…。貴重な情報をありがとう。誠くん。俺の親父がおかしいと思うなら、君が親父より偉くなればいいんだ。」


「偉くなれば、禁忌や祭壇行きと言う馬鹿げたカルトを無くせる。僕は僕でやらなきゃいけないことがある。君が偉くなってすればいいんだ。」


「僕が…。」


「そうさ。うみなり国でも宮司の君は親父が死んだ後の長候補(おさこうほ)の一人だろう。僕も一応そうだが。あと優ちゃんと山田、その他合わせて7人か。誠くんならなれるよ。」


「僕には…そんな勇気もないです…。」


「勇気ってのは挑戦するときに必要なんだ。君はまともだ。まともな人がトップでなきゃ、その組織はまともじゃなくなるって話があってね。まあ、一つの思想を統一させられるのが長なんだ。君は適任だよ。」


「父さんも適任でした……。誰に対しても優しく温かい人でした。」


「ああ。そうだよ誠くん。だから君が長になるんだ。これ以上カルトを連鎖(れんさ)させてはならない。」


「あの!カルトって何ですか?」


「ああ。まあそれは家に着いてから説明しようかな。うみなり国をこの国視点で見たらよく分かるから。」


僕はその後、大きな建物が無数に立つ環境へ行き驚愕する。


今までうみなり国は世界一発展した国と教育されてきたけど、あれは絶対に嘘だ。


僕が20歳まで暮らすことになる安部野さんの自宅へ行き、カルトについて学ぶ。


僕の中で、うみなり国を変えたいという野望が出来始めたのはその日からだった。


僕は新しい環境で未知の文明の元で、賢くなって凄くなって偉くなってやる。


ーーー僕は希望を頭の中で唱えながら、寝落ちする。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

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