1-1. 浜鍋。
セミの鳴き声で目が覚める夏休みの朝。
僕は早朝4時に起こされて、釣りへ行く。
「誠。優。時間よ、起きなさい。」
「zzz(眠り中)」
「まだ眠い。zZZ」
優は双子の妹で、僕も優も母似である。
「車でまた寝れるから我慢してね。遅れたらサンドイッチ父さんが全部食べちゃうわよ。」
母さんは愛する我が子達を上手く起こし、足を運ばせる。
「いそげ優!全部父さんに食べられちゃうぞ!」
「眠い。。。zzZ」
僕は半寝の優を抱えて、洗面所に行く。
「優。歯磨き粉。」
「それヤダ。フルーツ牛乳味がいい。」
「じゃあ、俺も久しぶりに…。」
僕は7歳の時にお子ちゃま歯磨き粉を卒業したが、優は10歳の現在も使用している。
身支度を済ませ、車に乗る僕たち。
父は車の中で今日の狙い目をペンでマークしている。
「行ってらっしゃい!!大漁期待してるわよ!!」
母が見送り、船の待つ港へ行く。
サンドイッチを食べながら父と会話をする。
「二人とも。今日は小アジの群れを狙うぞ。」
「おー!」
港に着いた僕たちは、父が離れた駐車場へ止めに行く数分の間に、慣れた手つきで船を準備していく。
父が船に到着する頃には、準備完了で漁師の父は喜ぶ。
父は尻ポケットに突っ込んである酒を手に持ち、一口・二口飲み船のエンジンを付ける。
「出港!!!」
父はこの習慣を10年以上続けている。
マークした穴場へ船を走らせ釣りをしていく僕たち三名。
楽しむ時間はあっという間に夜になり、夕食を作り出す。
「んー。小魚いっぱい釣れたし浜鍋にしようか。」
「わーい!ハマ鍋大好き!」
「酒足りるかなぁ……。」
夕食を作り終え、乾杯。
4人はハマ鍋をワイワイ食べている所、船に救難信号が入る。
山田「エ゛ビ゛が゛!゛助゛け゛て゛く゛れ゛!゛お゛?゛う゛お゛お゛お゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛泣」
この後、水に落ちる音が聞こえ、何も返答が無くなる。
僕たちは沈黙し、皆が嫌な想像をした。
父は沈黙を破り、僕たちに言う。
「本当はダメなんだが、お前ら連れて行くぞ。」
「ばれたら大変だよ!」
「でも元気のおじさん待ってそうだし。」
「んー。待ってそう。。。」
父は申し訳ないという面持ちで二人に言う。
「すまないな。万が一の時は父さんがかばうから、安心してほしい。」
「じゃあ行こう!!」
僕は碇を上げ、優は夕食をそそくさと片付け、父は操縦席で目的地への指針を把握。
不安がつきまとうまま、船を走り出す。
こうして、僕たち三人は洞窟へ向かうーーー
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢