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護国のメシア  作者: 袋石ワカシ
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第7話 追撃戦




 第7話



 

 「撃てぇぇぇっ!!」


 ズダダダーン――ヒュン、ヒュン――

 大きく開け放たれた北門から多数の火箭が伸び、多くの矢が放たれる。


 「次弾装填、急げえぇぇぇ」

 「おおお!!」


 東の空が明るくなりはじめ、当たりの惨状を照らした。

 夜襲による死者の遺体に加わり、さっきから始まった銃撃による死者の遺体が十重二十重にと積み重なっている。


 「てえぇぇぇっ!!」


 ズダダダーン――ヒュン、ヒュン――


 「騎兵突撃に移行する。カントレの廃城まで駆け抜けろ。突撃!!」

 

 王宮を守っていた通称パレス・バタリオン(王宮守備隊)の生き残りをくわえたサルヴァド勢は8000余となっている。

 その集団は城門前にいた一万余のルヴァイン王朝軍の一隊を蹂躙しカントレの廃城へと猛進する。

 ルヴァイン王朝軍は、横隊を組んでいたため、あっという間に砕け散った。

 しかし、問題はその数である。


 「敵第二波、四時方向から来ます。その数、騎兵3000!!」

 「騎兵隊、総員回頭し応戦せよ」


 斜め後ろから迫る敵に対し騎兵が突貫していく。

 騎兵という守りのための駒を失ったところにさらに敵が殺到する。


 「二時方向より敵騎兵3000!!」

 

 砂塵を巻き上げて近づいてきていた。


 「夜襲で騎兵を狙っておくべきだったか…っ」

 

 敵の騎兵は消耗されておらず疲弊もしていない。

 10000騎のままである。


 「閣下、悔いても意味はありませんぞ?」


 ハルトマンが槍を握りなおしながら言う。


 「そうだな、あとカントレまで半里とないが逃げ切ることは不可能だろうな」

 「無理でしょうなぁ」

 「歩兵隊!!方形陣を組み長槍でもって槍衾を作れ」


 芳しくない状況でありながら不平不満はまったくもって聞こえてこない。

 槍衾を形成し終わったころ、敵騎兵が突撃してきた。


 「各個にて撃ちまくれぇ!!」


 銃兵は三段に分かれその銃声は鳴りやむことがない。

 ダン、ダン、ダン、ダン―――

 絶えず銃火にさらされた敵騎兵はその数と勢いを減らしながらも数にものを言わせて突撃をやめない。

 彼我の距離がだいぶ近くなった。


 「歩兵隊は立ち上がって馬を狙って突け!」


 銃兵の前にしゃがんでいた歩兵たちが立ち上がり、悲鳴と鈍い音をときおりたてながら騎兵突撃を受け止める。

 槍で突かれた馬はその場でのけぞり、騎兵は落馬する。


 「八時方向より敵騎兵2000!!」


 しかし、敵は追撃の手を緩めることがなかった。

 

 「まだ、来るのか……。歩兵隊を半分、新手の敵に回せば崩れるぞ!!」

 

 そこに一人の煌びやかな武装を纏った青年がこう告げた。


 「自分たちが防ぎます」


 パレス・バタリオンの指揮官であった。

 

 「自分たちは、セルシオ様に救われこの命を長らえさせることができたようなものです。ここは私たちが防ぎます」


 セルシオを見つめる目は覚悟を決めた目であった。


 「わかった、頼む。あえて貴公の名前は聞かない。だから生きて帰ってこい」

 「ありがとうございます」


 青年が去るとパレス・バタリオンは、槍衾を築き始め時間稼ぎのためにわずかな300余の騎兵を突撃させるべく横隊を組んだ。


 「モリソン、パレス・バタリオンを援護してやれ」

 「はっ!!」


 銃兵隊が八時方向に走っていく。


 「十二時方向に新手の騎兵隊、来ます!! その数2000」


 新手の騎兵は、こちらに向かって驀進してきていた。

 ハルトマンが苦笑いしながら指示を出す。


 「迎撃態勢をとれ!!」


 残り僅かな、手すきの歩兵と弓兵でセルシオの前に壁を作る。

 セルシオも剣を鞘から抜いた。


 「者ども、踏ん張れ!! ここが正念場だ!!」


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