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旅立ち

 

「で?これはどういうことかな?」

「説明してもらおうじゃない?」

寝起きの少年と幼女の前に二人の少女が青筋を立てて立っていた。


(どういうことよ!これ!)

幼女、もといマモンは目線をシールに向ける。

(どういうことって言ったってお前のせいだろ!!)

マモンを睨みつけるシール。


「何か言いたいことでもあるのかしら?」

「あの・・・何か勘違いされてないでしょうか?」

「何を勘違いしているというの?」

そう言って、侮蔑の目をシールに向ける二人。


「その・・・コイツについて」

そう言ってマモンを指差すシール。

「この子が何か?」

「あの・・・コイツはただの幼女じゃなくてですね。」

「ただの幼女じゃなくて、何?」

「魔王なんですよ。コイツ」

「「は?」」


ビクッ!


ドスの効いた声がした。


「ふざけてるの?」


「い、いや、ふざけてないです。本当です。」

その言葉に凄い勢いでブンブンと頷く幼女。


「どこに証拠があるというの?」

「それは・・・」

「これよ。」


ドンッッ!!


「「ッッ!」」


一瞬にして部屋が立てなくなるくらいのプレッシャーに包まれる。


「もういいだろ。やめてくれ」

「そうね。」

先のプレッシャーが嘘かのように退いていく。


「な、何よ、今の?」

「凄く、怖かった・・・」

二人とも冷や汗をかいている。


「今のが証拠だよ。信じてくれるか?」

「いえ、仮に魔王だとしても、シールと一緒にいる意味がわからないわ。」

マナはただの幼女ではないと思いながらも信じられない様子だった。

「そうだよ。この子が魔王だとしたら、私たちを殺して村を滅ぼしているはずだもん。」

そして、さらっとやばいことを言うシル。


(私って世間からそんな風に思われてるのね。)ボソッ

「なんか言ったか?」

「いえ、なんでもないわ」

「理由は、色々とあるんだよ。」

「何よ。色々って」


そして、昨日あったことを説明するシールとマモン。


「「・・・」」

マナ、シル、共に口をポカンと開けて唖然としている。

「大丈夫か?・・・大丈夫じゃなさそうだな。」

「普通はこうなるわよ。」

「まぁ、そうなるよな。俺も最初は信じられなかったよ。」

「こんな話、普通は有り得ないものね。」


数分して二人の意識が戻ってきた。

「・・・この話、本気で言ってるの?」

「信じられない・・・今まで魔王だと思っていたのが勇者でしたなんて。」

「本気だよ。今見ただろ。この聖剣を。これは見た限りでは本物だ。」

「そう、よね。今まで見てきた文献とも一致するものね。」

まだ二人は信じきれない様子である。


「でも、それで何故二人は一緒にいて、寝てたのかしら?」

「それはコイツが・・・」

「私、魔王やめたいのよ」


「「は?」」

息ぴったりの『は?』である。


「それで?なんでここにいるの?」

「それは、彼に助けてもらおうと思って。」

「なんでシールなの?そもそも、シールには普通の研究者よ。あなたを助けられるほどの実力はないわ。」

「ただの。は嘘でしょう。彼には特殊なスキルがあるみたいじゃない。ましてや、魔王軍の幹部の中でも弱いとはいえ、魔人であるバラムとその軍勢を瞬殺する研究者が普通ではないでしょう?」

「それは、そうだけれども。」

(それと、一緒にいると楽しそうだし)ボソッ

「ん?何か言ったか?」

「いいえ。とりあえずそういうことで彼に頼んだの。」

少し本音が漏れるマモン。マモンがシールを選んだ理由は大半がこれである。


「それで⁈シールは了承したの⁈」

「最初は拒否したさ。でもな・・・『助けてくれないと、あのお兄さんに襲われそうになった。って村の人に言うよ』って言われたら仕方ないだろ。」

「ちょ、それはーーひっ」

「「どういうことなのかな?」」

マモンが気づいた頃にはもう手遅れだった。振り向けばそこには、鬼の形相をしたマナとシルが‼︎


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」

ただただ謝り続けるマモン。今のマモンに魔王の威厳は一切ない。・・・元から無かったかもしれないが。


「はぁ・・・もういいわ。」

「本当⁉︎」

マナの言葉に勢いよく食いつくマモン。目をキラキラ輝かしている。

「え、ええ。でもあなたを助けるかどうかは別よ。シールがどうするかによるから。」

若干引きながらもシールに任せると答えるマナ。そして、シルの方を向いて目線を送ると「いいよ」と言う。それを聞いたマモンは首を横にいるシールに向ける。目をうるうるさせながら。


「そんな目するなよ。」

更に目をうるうるし始めるマモン。そして一言「助けて」とか細い声で助けを求めるマモン。

「うっ、わかった、わかったから。そんな目をしないでくれ。やれることはやる。それでいいだろ。」

シールがそう言うとマモンは満面の笑みを浮かべて「うん!」と元気よく答えた。どうやらシールは幼女の涙に弱かったらしい。そんなシールの様子を見てシルが「ロリコン・・・」とボソッと言い、マナがそれを聞いて「変態」とシールを罵倒し始めた。

「ちょっ、マナ!シル!なんで俺は罵倒されたんだ⁈」

こんな感じでワイワイとしながら四人は準備をし始めた。


「よかったの?シール。この村を出て。」

「あぁ、このスキルを手に入れてからは自分で旅してみたいとは思ってたしな。」

「そうだったの?」

「ああ、自分で素材を調達できるのは色々助かるしな。こんな意味のわからないスキルを手に入れたから、そう易々とやられはしないだろうしな。」

「まあ、それもそうね。そういえば。私もスキルは手に入れたわよ。」

「・・・は⁉︎」

さらっと重要なことを報告するマナ。それにシールは驚きを隠せない。

「何で今発現するんだ⁉︎」

「まあ、ちょっと色々とね」

「なんだよ色々って!」

「色々は色々よ。はい、これ、スキル」

マナから渡されたステータスプレートにはこう書いてあった。


グルー・マナ


職業…研究者

攻撃…24

防御…15

俊敏…34

魔力…54

魔法適正

なし

スキル

《グルーの奇跡》


スキルlv1


熟練度0/100


射出(ショット)

•粘着質のある物質を飛ばし、相手を固める

•Bランクの魔物までに効く

•消費魔力は1

•一気に5発まで発射可能

[白き海]

•粘着質のある物質が一面に広がり相手の足止めをする

•消費魔力10



「なんだこれ」

「私にも分からないわよ。ただ、シールのスキルに少し似ていると思うわ」

「まあ、そうだろうな。粘着質の物質ってアレのことだろ」

「ええ、アレよ」

「はあ、そうか。なんかこのメンバーで旅をするのって心配だなあ・・・」

「そうね。下手したら歴史を変えるかもしれないわね」

「そうなんだよな。このメンバーにはそれくらいの力があるからなあ」

シールたちがそう思うのも無理はないのだ。なんてったって元勇者の現魔王に魔力があればなんでも治せる治癒術師、ある程度の魔物も魔族も拘束できるスキルの持ち主が二人。このメンバーが負けるなどそうそうないのだ。


「二人ともー!準備できたのー?もう馬車来ちゃうよー!」

外からシルの呼ぶ声が聞こえる。

「よし。行くかマナ」

「そうね。行きましょうか」


(告白は・・・また今度、落ち着いてからにしましょうか。とりあえず今は、この旅をいいことにすることを目標にしましょう!)


マナは密かに決意を固めて、他の三人は旅をするために歩み始める。

これから先のことを期待しながら。


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