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地獄の一日

あのほんわかとした日から、数日経った日だった。


「はぁ・・・。」

「あらシール、また溜息かしら。」

「ああ、そりゃそうだろ。あの《テープの始祖》が今となっては意味がわからなくなってきてるんだからな。」

そうやってシールのステータスプレートをマナに渡す。


「どういうこと?少し見るのが怖いのだけれど。」

「そのまんまの意味だよ。とりあえず見てみろ。」

マナはそう言われて手元を見る。




シールスヴェルト

職業…研究者

攻撃…1258

防御…1158

俊敏…1568

魔力…1865

魔法適正

無し

スキル

《テープの始祖》☆


スキルlv10


熟練度1000/1000


発射(シュート)

•テープを飛ばす

•SSランクまでの魔物の拘束が可能

•消費魔力1

•一気に10発射出可能

•派生スキル【ロール】の使用可能

【ロール】

•消費魔力5

•相手に巻きつき窒息死させる

•Aランクまでの魔物に使用可能

[粘着]

•テープが物に張り付く

•最大75m射出可能

[両面化]

•テープの両面に粘着質の物質がつく

[硬質化]

•テープが硬くなる

•派生スキル【テープシールド】の使用可能

•派生スキル【テープソード】の使用可能

【テープシールド】

•消費魔力15

•耐久力がある限り攻撃を通さない

•魔法耐性はあまり無い

耐久力…1000

【テープソード】

•消費魔力50

耐久力…1000

攻撃…200




「・・・。なによ、これ?」

マナが見間違いかしらん?という顔で聞く。

「わからないからこうやって、頭を抱えてるんだろ。」

「いやいやいや、おかしいでしょ!スキルの内容はともかくとしてこのステータスは何⁉︎二週間くらい前までは三桁も行ってなかったのに⁉︎今は四桁⁉︎あり得ないでしょう!」

スキルの内容もとにかくで済ませるようなものではない


めずらしく感情的になっているマナ。そりゃそうだろう、一カ月くらい前までは普通の幼馴染だったのが今やただの化け物みたいなステータス値なのだから。


「分からん。スキルの副産物だろ。」(適当)

どうやらシールスヴェルトは考える事を放棄したらしい。

遠い目をしながら言う。


「いやいやいや、スキルの副産物で魔王に匹敵するステータスってなんなのよ‼︎本当に何なのよー‼︎」

そしてマナの頭で理解出来なかったのか、したくなかったのかわからないが、マナから魂が抜けていく。


マナが少し壊れかけている。


そんな時

ドンッとドアを開ける音がした。


「シール!やったわよ‼︎ってマナ!どうしたの⁉︎」


マナから魂が抜けかけている。


「お〜、シルかどうした〜?」

「ちょっ、シールもどうしたのよ二人とも〜!」


シルが頑張って二人を正気を戻させる。


「で?どうしてこうなったの?」

「それはこれだよ。」

そうしてシルにステータスプレートを渡す。

「ん?このステータスプレートがどうしたって・・・」


案の定である。


そして、シルの意識が戻ってきて、


「それでどうしたんだ?シル。」

「いや、いいわ。これを見たら言う気が失せた・・・。」

「なによ、気になるじゃないの。早く言いなさい。」

「いや、本当にしょうもないことだから・・・。」

「早く言えよ。気になるだろ。」

「いや、あの、新しい回復魔法を覚えたから・・・。」

もじもじしながら答えるシル。


「本当か?すごいじゃないかシル。」

「そう、かな?」

「ああ、俺は魔法が使えないからな、羨ましいよ。」

「そう?えへへ〜」

シル、すごく笑顔である。


そんな中、

「ムッスー」

頰を膨らまして、不機嫌なマナがそこにはいた!

「ど、どうしたんだ?マナ?」

「なんでも。」


マナどう見ても不機嫌である。そしてシルがニヤニヤしながら、べ〜っとしている。

それに対してマナも鋭い目つきでシルを見る。

シルは咄嗟に目を逸らした。



そんな時だった。

「「「ッ!」」」

とてつもない悲鳴が町の広場の方から聞こえてきた。


「なんだ⁉︎どうしたんだ⁉︎」

「今の悲鳴は・・・。」

シールスヴェルトは嫌な予感がしていた。


窓から見える景色は・・・





地獄だった。






(クククッ、この村を滅ぼせば、あのお方は喜んでくださるだろう。)

「さァ、諸君仕事だ。」


オォォッッッッ‼︎‼︎‼︎


魔人に魔族、魔物が一斉にマーレの村に攻め込む。


数十分後には、あちこちから阿鼻叫喚の嵐。男も、女も、子どもも、老人も、獣人ですら、この大軍には手も足も出ずに蹂躙されていく。まさに地獄。そう表すしかない状況である。


「フハハハッ、フフッ、フハハハッ」

ただ一人、バラムは笑い続けていた。

「どうですかッ!魔王様ッ!これを見てください!美しい叫び声!人間どもの恐怖に歪んだ顔!どれもこれも美しいッ、素晴らしいッ、生きてて良かったッ!楽しいッ、嬉しいッ、喜ばしいッ!私はッ、私はァッ、今ッ、歓喜に満ち溢れているッ‼︎」

おそらくこのバラムを見て、かの魔王はこう言うだろう、一言、“キモっ”と…。


「フハハハッッ、ハハッ、ハッ、ハハハッ・・・と悦に浸るのはこれくらいにしましょうか。皆さん、私が最後の仕上げをしますので戻って来てください。」


マーレの村は赤一色に染められている。


「それでは、これで終わりにしましょうか。皆さん、さようならッ⁉︎」

そんな時だった、何か紙のような物が飛んで来たのは…。


「何を言っている。テメェはここで死ね。クソが」


そう。そこに現れたのはテープの始祖であるシールスヴェルトである。






何が起こっているんだ⁉︎何が⁉︎


シールスヴェルトは混乱していた。昨日話をしていた人が、幼馴染だった人が、お世話になった人が、皆、赤い液体の海に身を投げ出している。


何が・・・。


親を亡くしたシールをこの村の人たちは育ててくれた。それはシルとマナも同じだった。そんな大切な人たちが蹂躙されていく。殺されていく。ただの肉塊になっていく。


シールスヴェルトはそこで見た、こんな地獄絵図のなか、一人、気持ち悪い笑みを浮かべ高笑いをしている魔人を。そして、肉塊となった幼馴染のジークムントの姿を、


そして、シールスヴェルトの心に変化が起こる。


結果。


《テープの始祖》の上限を解放

スキルのクラスアップが行われます


・・・。クラスアップが完了

《テープの始祖》は《テープを極めし者》にクラスアップしました

[シュート]の派生スキル【狂龍】を獲得

[命]を獲得、同時に派生スキル【ケルベロス】【九尾】を獲得



【狂龍】

•消費魔力50

•代償として一週間の活動の停止

•相手を殺す

[命]

•テープに命を吹き込む

•派生スキル【ケルベロス】使用可能

•派生スキル【九尾】の使用可能

•派生スキルの消費魔力はいずれも100



スキルのクラスアップ、それは魔王でも、勇者でも、賢者でも、聖女でも辿りつけなかった境地。


「奴は、殺す」


それをシールは超えた、憎悪という感情を持って。


「ちょっと‼︎シール‼︎」

「待ちなさい!シール‼︎」


シールは魔人に向かい[シュート]を放つ。


「それでは、ここで終わりにしましょうか。人間の皆さん、さようならッ⁉︎」


「何を言っている。テメェはここで死ね。クソが」


「ッ⁉︎奴だ!殺れッ「【ロール】」


「んガッ⁉︎んガッ‼︎」

バラムが必死に抵抗している。

その様子を見て、魔人たちは一斉にシールスヴェルトに襲いかかる、がしかし。

「【ケルベロス】【九尾】」


テープにより作り出された二匹の獣。だがそれは、下位の魔人たちを相手するには些か強すぎた。


“ギェェェッッッ”

“ウォォォッッッッ”

“ヴォォーン”

“クソォォォッ”


魔人と魔物達の屍が積み重なる。


シールスヴェルトは一歩ずつ、バラムに向かっていく。

バラムはこの時気付く、

(コイツに、この村に手を出したのは間違いだった。)

バラムは感じ取ったのだ、シールの異常性を。


だが、時すでに遅し。


「【狂龍】」


「やめろオォォォォォッッッ」


龍の形を模したテープがバラムに向かっていく。

そして・・・


グシャッ、メキメキッ、ゴチャッ、ブシャァァァ


赤い花が咲く。


マナとシルは固まっていた。

そして、【狂龍】を使ったシールスヴェルトは、

ドサッ

「「シール‼︎」」

二人の声が重なる。




こうして地獄の一日は幕を閉じた。




周り一面には血の海が広がる、とても静かなマーレの村で・・・。




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