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覚醒

『 世界は謎で満ちている。』そんなことを昔の偉大な人は言ったらしい。


その言葉はどうやら本当なんだと俺は気づいた。ある能力に目覚めたおかげで・・・





なにやら実験している少年と少女がいた。

「これは、なんだ?」

彼の名はシールスヴェルト、それなりに鍛えられたしっかりとした肉体、そして結構なイケメンである。

「何か手にくっつくわね。」

そして、シールスヴェルトの隣にいる少女はグルー・マナ。彼女はシールスヴェルトの幼馴染で、誰もが二度見するほどの美女である。


彼等はとある実験をしていた。がしかし、実験中に思いがけないものができてしまった。

「これ、どうするの?捨てる?」

それは粘着質の物質だった。マナが手につけペタペタと指をくっつけたり離したりしている。

「いや、何かに使えるかもしれない。残しておこう。」

「わかったわ」

そして、謎の粘着質の物質を保管するマナ。


そんな時だった・・・

「シールッ!シールッ!」

いつものように聞いている声が窓から聞こえてくる。

「どうしたんだよシル。そんな慌てて。」

彼女はソニア・シルズ、シールの幼馴染でシールが住んでいるマーレの村で唯一の治癒魔法の使い手であり、童顔の小柄な可愛い少女である。


「そうよシル、見苦しいわよ。」

そして、シルに毒舌を吐くマナ。

「ちょっ、見苦しいってどういうことよマナ!」

「そのまんまの意味よ」

「はぁ・・・、おまえら喧嘩するなら外でやってくれ。俺は忙しいんだ。」

「って、そうよそうよそれより村に魔物が出たのよ!」


「えっ?魔物?シル、ボケてるんじゃないかしら?村に魔物なんて、結界のおかげで出るはずがないじゃない。やっぱりあなた疲れてるのよ。」

本気で心配している目をしているマナ。

「ちょっ、その目はやめて!あと、やっぱりってどういことよ!って、そんなこと話してる暇はないの!早く逃げないと魔物が来るわよ!早く!急いで!」

顔色をコロコロと変えながらシルが急かしてくる。


「そんなこと言われても、どういう訳か説明しろよシル」

魔物が出たと幼馴染から言われても未だに信じられないシール。それほど村に魔物が出るというのはあり得ない事なのだ。

「ああっ、もうっ!復活したらしいのよ!あの災厄をもたらした魔王が!」

魔王。それは誰もが恐れ、遠い昔に勇者との戦いで封印されたとする伝説の災厄。魔王がもたらした災厄は多くの人間を殺すこととなった。そんな魔王が復活したという話を聞いた二人は・・・


「「は?」」


二人の声が重なる。

そして当然驚いている。

「どういうことだ。魔王は封印されていていないはずだろう。」

「そうよシル、やっぱりあなた疲れてるのよ。」

次は哀れんだ目をシルに向けるマナ

「ムキーッ、うっさいわね!私はいつも通りよ!」

シルがぷんぷんと全く迫力無く怒っている。そんな事をしている暇は無いというのに・・・


キェェェェッッッッ⁉︎


「「「っ⁉︎」」」

三人の耳に嫌な金切り声が聞こえてくる。


「今の声は魔物の声⁉︎」

「なんでっ」

「早く逃げるわよ‼︎」

三人は慌てて家を出ようとする。が、やはりモタモタと言い合いをしていたからか・・・


キェェェェッッッッ⁉︎


魔物はすぐそこまで来ていた。


「っ、バードリア⁉︎本当に魔物が村にいるの⁉︎」

「だから言ったでしょ!早く、逃げましょう‼︎」

二人は逃げようとしたがシールは動こうとしなかった。

「シール!何してるの⁉︎」

マナはシールを連れて行こうとする。が、しかし。

「二人は早く逃げろ‼︎奴は俺が引きつける!」

「何言ってるのよ!シールも早く逃げるのよ!」

「三人で逃げても追いつかれるだけだ!早く逃げろォッ!」

そう叫んだと同時に護身用の短刀を懐から取り出し、バードリアに攻撃を仕掛けるシール。


「っ、人を呼んで来るわ!」

そう言って二人は逃げて行った。


「よし、ここが勝負所だぞ俺!二人が逃げる時間を稼ぐぞッ」

再度シールは攻撃を仕掛ける。しかしそれを避け、


キェェェェッッッッ⁉︎


嫌な金切り声をあげてバードリアがシールに反撃を仕掛ける。


バードリアは大きな鳥型の魔物だ。猛スピードでシールに突っ込む、しかし、それをスレスレのところでシールは避けそこらにあった石を投げつけ、バードリアをひるませる。


シールには魔法適正は無いに等しい。実際には使えるのだが、魔法を使えば魔力がごっそりと減りもの凄い倦怠感が襲い動けなくなるためシールは魔法を使うことができないのだ。


だがシールは戦えないわけではない。狩りにより投擲や体術、そして剣術の技術はあるため、ある程度は戦える。


だが相手は魔物だ。そこらの動物とは違うのだ。今シールには短刀しか武器は無く、魔法も使えないため、シールには勝ち筋は無いに等しい。


シールはバードリアが突撃してきて、隙が出来た瞬間に短刀を使い、バードリアにダメージを与えようとするが・・・

「チッ、やっぱりダメージは与えれねぇのか。」

バードリアの厚い皮に阻まれ、思うようにダメージを与えられない。

動きの速さは互角。バードリアは魔物の中では中堅の魔物だ。その魔物の動きについていってるだけシールのスペックの高さが伺える。


そこからもシールはバードリアの攻撃を避けては反撃、避けては反撃を繰り返していた。


そして、マナとシルが逃げてから数十分経った。今まで互角に渡り合っていたシールの動きも鈍くなってくる。


(クソッ、救援はまだなのか!)

そんなことを思った時だった。

「「シール!」」

遠くからマナとシルの声がする。

「ッ、マナとシルの声!救援を読んできてくれたのか!俺はっ、ここだっ!」

シールは二人にわかるように大声をあげる。

「「シール!」」

「シール!大丈夫か⁉︎助けに来たぞ!」

どうやら救援は、シールの友人のジークムントとその仲間達が来てくれたらしい。

「マナ!シル!助かった…」

シールが安心した時だった。それが隙になり・・・


キェェェェッッッッ⁉︎


バードリアが突撃してくる。

「シール⁉︎危ない!」

シールの耳にシルの焦燥に満ちた声が聞こえてくる。

シルの声を聞き、シールはその時気づいた。バードリアが猛スピードで自分に向かってくるのを。


シールの時間がゆっくりと進む。

(これが走馬灯か・・・。もっと生きたかったな・・・)

シールの頭に走馬灯が駆け巡る。


シルとマナ、そして救援に駆けつけてくれたジークムント達も助けようと必死にこっちに向かって来る。

シールは反射的に自分を守ろうと手をバードリアに向ける。


その時だった。


シュッッ


キェッ⁉︎⁉︎


バードリアに向けなにかが飛んで行く。


そしてそのままバードリアは木に磔になる。


「「「「「「は?」」」」」」


皆の声が重なる。


キェッ⁉︎キェッ⁉︎


バードリアが暴れている。それを見てみんなは唖然とする。


「って、おまえ等ボーっとするな!奴を殺せ!」


「っ、シール‼︎」

「大丈夫なの⁉︎とりあえず治癒するわ!」

シルが魔法を使い、淡い光がシールの傷口を癒していく。


「っ、ああどうやら大丈夫らしい。」

どうやら傷がまだ少し痛むらしい。


「何なの今の⁉︎」

「わからない。だが、あのバードリアを拘束している紙のようなものが俺を救ってくれたみたいだ。」

「でもシール、あなた空中からあの物を出したように私には見えたけれど。」

「私も!私も!」

「そうなのか?じゃああれは俺の魔法か?でも倦怠感はまったくと言っていいほどに無いぞ。」

「じゃああれは魔法じゃないとでも言うの?私はあんなもの見たことないわよ。」

バードリアを拘束しているものを指差して言うマナ。

「わからねぇよ。なんなんだあれは・・・まさか」

ある可能性に思い至ったシール、自分の家に戻っていく。

その後を追う二人。

「どうしたの?家に何かあるの?」

不思議そうにシールを見るシル。

「いや、俺のステータスプレートを見れば何か分かるかもしれないと思ってな。俺のステータスプレートを探してんだ。」

「っ、まさか、魔法が発現したとでも言うの?」

「その可能性があるって話だ。実際には見てみないとわからないがな。」


そんなことを話しているうちにバードリアは死んだのか、救援に駆けつけてくれたジークムント達がこっちに向かって来る。


「シール、おまえ、さっきのなんだったんだ?おまえは魔法適正も無ければスキルもなかったはずだろう。

ああ、あとこれ、魔物を拘束してたものだ。気をつけろよ、なんか手にくっつくんだ。で、なにしてんだ?」

ジークムントはバードリアを拘束していたものを剥がしたらしい。それをマナに渡す。

「この感じは・・・」

マナは何かに気づいたらしい。そんな時だった、

「わからないから今調べようとステータスプレートを探してるんだよ・・・、っと、あったあった。」

やっとシールは目当てのものを見つける。


ステータスプレートとは名の通りその人のステータスを見ることができる板だ。遠い昔に賢者が作ってできた技術らしい。


皆でそののステータスプレートを見る。




シールスヴェルト

職業…研究者

攻撃…37

防御…25

俊敏…52

魔力…100

魔法

適正無し

スキル

《テープの始祖》




「なんだこれ…」

「てーぷ?ってなんなんだ?」


ここにいる皆が思ったであろうこと。

皆全く意味がわかっていないのだった。


そして・・・

「シール、これ、触ってみて」

さっきジークムントから受け取ったものをシールに渡す。

「っ、おいこれって」

シールの顔が驚きに目が見開いた。それに対し、マナは頷いた。


「さっきの実験で出来たあの物質じゃねぇか。」


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