おもい想い
…重い。
あ、もちろん体重ではなく。
結婚数年目。ごくごく普通の夫婦…と思ってるんだけどな、俺は。
目の前の彼女にとっては違うのだろうか?
「今日も1日お疲れ様でした」
そう言って笑う妻、ツキミと囲う夕食は今日も夫である俺の好物ばかり。
いや、嬉しいんだけど、毎日、男の好物はさ、
健康的にどうなの?とか思う。
野菜中心に用意されても俺は食べないけど。
ツキミは多分、野菜とか果物が好きなんだ。
たまに隠されるように冷蔵庫に入ってるから、
昼に食べるんだろう。
夕食毎日こっちに合わせてくれなくても、
我慢できるのに。
「ケンイチさん?」
好物食べながら難しい顔をしていた俺は声を掛けられハッとしながらいつもの一言を言う。
「うまいよ」
「…良かった」
ほっとした声を出した君は一瞬、作ったような顔をした。
何が君をそんなに不安にさせているのか分からない。
食べ終え、ソファーでくつろいでいるとツキミが近付く。
ツキミは俺に抱きつくのが日課だ。
(あ、そうだ今日は…)
ツキミが抱きつく寸前で腕で止める。
彼女の瞳が揺れた。
「…服、汚れてるから」
「あっ…」
「臭いし、風呂行ってくる」
動揺を悟られないよう、早口で言いその場を離れる。
湯船に浸かりながら先程の妻の様子を思い出す。
潤んだ瞳。傷ついたような顔。
別にこっちだって、拒絶したい訳じゃない。
ツキミは喘息気味だ。
今日はたまたま埃っぽい場所で仕事をした。
タバコ臭い奴らと一緒にな。
何ら後ろめたい事などないのに、
あんな顔されたらこっちだって傷つく。
信じられない?
結婚して何年も一緒なのに?
たまに、遠く感じる。
最近結婚した友達夫婦のが喧嘩したりと、見てて「夫婦だなぁ…」と思うんだよな。
大体、うちだって恋愛結婚なのに。
見合い結婚でも、ツキミに脅されてした結婚じゃないのに。
お互いの同意の上の結婚だよな…
何故ツキミは不安になるのか。
風呂から上がれば
「もういいよね…?」
と抱きつかれる。
なんなんだこの生き物は。
頼むからあまり誘惑しないでくれ。
そんなつもりがないのは分かってる。
だからこそ、余計にだ。
不安にさせているのは悪いと思うが、
普通は何年も一緒なら、関係にあぐらをかくものでは?
ツキミ自身が老けてきただの太っただの言うが、
出会ったのが十代なんだから当然で、
むしろ、出会った時ツキミは幼く、身体が細すぎた。
今の方が魅力的になっている。
まぁ、言わないけど。
(あ、ツキミ…良い匂い)
なんだかんだ、これはこれで可愛いし、
もうしばらくこのままでいいか