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If at first you don’t succeed, try, try, try again あるいはその続きの続き

素直に前編中編後編にすればよかったと後悔中、なう


なんのために装備を整えたのか、それは悪魔を狩るためである。


「武器を持ったら街に行きます!」

「…シスター、目が腫れて「黙って、昨日の事は、忘れてください」イエス、マスター…」


銀の十字を背負い、銃を腰に下げ、聖水が弾丸の入ったポーチを付け、鎧を着る。勿論神父服のままである。


「シスター、この服で大丈夫なのか?」

「ああ、そこは心配ない、どうやら司教クラスの祝福がかけられている。呪詛耐性ならばそこらの武具に優っているし強度も金属鎧なみだ。安心しろ」


どうにも昨日からぶっきらぼうな彼女のご機嫌は非常に女心的なサムシングであり、秋の空的な、変わりやすさ移り変わりやすさを感じる。こちらを見るとうっすらと朱が指す頬がベリーグーッドである。


「シスター!シスターデート?」「みんな〜シスターがジョージとデートだってー!」

「遂に妖怪婚期逃しの汚名返上かー?」「俺はどうせまた妙にツンツンしてジョージが逃げるにおやつをかけるぜー!」


凄まじいゲンコツの音と共に子供らの悲鳴がいくつか響く。


「行くぞ!」

「ああ、そうしたほうがいいだろう。」


どうやらこの元大司教は忍耐と寛容さと言うのが足りないのかもしれない、俺はべそをかきながらトトカルチョを始めるたくましい子供達の将来を心配しながら街へと歩き出した。



「そういえば、言うのを忘れていましたけどその十字架で魔に属するもの以外を殺す事は出来ないしすれば死にます。」

「…突然すぎて耳が遠くなった様だ。なんだって?」

「それで普通の動物とか、人間を殺そうとすればあなたが死にます。剣としての存在、祝福、あらゆるものを犠牲にしてその十字架は悪魔を殺すためだけに創り上げれたのです。過去其の剣で上級悪魔すらも屠ったと言う話も記録としてあります。言っておきますが普通の銀剣はおろか特殊な体質や技能、圧倒的な心力、神の加護などが無いただの人間に使える物としては文字通りの最高級、寧ろその程度で済んで良かったですね?」


…癖で敵を斬りつける前に呪いの概要を聞けてよかった。本当に無駄に死ぬところだった。


俺は銃を抜き、ただの弾丸を五つ放つ。


「ヒュー、こいつは良い」


撃った先は藪の中と木の上、撃った結果は全弾命中バンディットウルフとゴブリン、ゴブリンアーチャー、ただの魔獣どもだ。正確には魔獣はバンディットウルフのみでゴブリンは下級悪魔以下の微小悪魔であり魔性の類なのだが目視するまでそれがなんなのかわからない以上剣での攻撃は控えるべきだろう。

俺は上機嫌でその死骸から換金部位を拾っていく。


「日々の訓練の成果です。殺気などの強い意志もそうですがその意を消す獣、悪魔などの動きを読むためにわざわざ毎日毎日手を替え品を替えて不意を撃ったり正面から攻撃してきたんです。」

「ああ、そう言う訓練だって言うにはわかってたんだが実際に自分の成長が見えるのは良いもんだ。」

だが、俺にとっては銃の方の試運転、誤差修正も兼ねていたのだがまるで狙ったところに獲物が来る様にすら感じるこの銃の精度、教会ってのは恐ろしいもんだ。


この後もちょくちょく魔獣やゴブリンなどの微小悪魔が現れたが、街に近づくにつれその量は減り、30分もしないうちにその姿を見ることがなくなった。その間に籠手や銃の性能をたっぷりと試し、知識としてはある冒険者ギルドでの換金部位がそこそこ集まった。使った銃弾は最下級の物で炸薬式ながらその火薬量のケチさ故に『爆竹』呼ばわりされている様な物を使ったので収支はプラス、その内教会に寄進して手に入れる聖水や強化銀弾、強化聖銀徹甲弾などを考えると雀の涙ほどの金だがあるに越した事はない、金とはいつの世も入り用で少なくともそれ無しでは聖職者ですら困窮するだろう。


街に着くとアンリは教会のシスターである事を示す身分証、精巧な祝福儀礼済み聖銀のロザリオを出し、ついでに署名を作って俺の身元を保証する。衛士はそのロザリオの裏にある悪魔狩り、聖騎士としての印に眼を剥いていたが、それはそれ、話は無駄に円滑に進んだ。


「それではパラディン殿、その付き人殿我らがオーグスト公爵領最東端、『イース』へ、ようこそ」


アンリは顔見知りの様だったが始めての俺がいるために街の名前を言ってくれた様だが、神父服と顔に刻まれた刺青の様な印、ついでに少し若返っただけでわからない様だが、実はここにきたと言う知識だけはある。

まぁ、そうは言っても今の今までどこにそれがあるかわかってなかったし、そもそもこの衛士とあった事があるかどうかなどの記憶も無いので始めての様なものだ。


マリアといた街、処刑されかけたこの近辺で一番大きな街よりは人通りも少ないが、落ち着いた雰囲気と雑然とした人の住処という感じがして安心感がある。


「じゃ、取り冒険者ギルドですね、換金部位を持ち歩いているのも面倒ですし、教会の身分証明用のロザリオは現状の貴方には絶対に与えられないのでお金と紹介状で簡単に手に入る冒険者タグを貰いに行きましょう。」

「ああ、そうなるのか」



教会身分証明証

基本的にロザリオであり近年では過激派の発行する物と穏健派の発行する二種類の物と教皇直々の特別なものがあるが、表には教会のみで可能な祝福聖銀の装飾、裏に教会内での身分が示された凹凸がある。

また、其の発行には五年以上の修行と三回以上の下級奇跡の行使可能な心力、説法に必要な経典の暗唱などの試験がある。それ故に身分証としての力は冒険者のそれよりも上だが、国教ではない宗教教会の物だったり他国に出ればそれは異端の印でもある。



冒険者ギルドでは特に揉め事はなかった。強いて言えばどこか懐かしい様な、そんな雰囲気の中でぼんやりと以来の張り出される掲示板を見ていたらルーキーの腰を抜かしてしまったことくらいだろう。


「ハハハハハ!」

「そう笑わないでほしいね、シスター」

「いやぁ、おかしいおかしい確かにでかくて厳しいけれどもまさか目があっただけで腰を抜かすなんて…君やっぱり聖職者にはなれないよ」


彼女はップ、クククっとニヤニヤしながら俺をからかう。まぁ、正直桶に汲んだ水を覗き込むとある顔はいささか凶悪だ。何か大きな怪我の傷の跡が無数にあり、眼は人を何人か殺せそうなほどに鋭く、正直言って好印象は与えない、極め付けに悪魔に付けられた印がギャングやマフィアの刺青の様に顔の左側に存在しておりかなり怖いのだ。

少しでも印象を良くしようと髪や髭を整えているのだが、そうするとさっぱりするはする。さっぱりしてはいるが…なんというか、非常に怖い、清潔感のあるマフィアの若頭みたいである。



ぶらぶらと歩いているうちにこの町の教会の前にたどり着く。以前いた街の教会よりもサッパリとしていて荘厳さや清廉さを感じるが、ごちゃごちゃとした装飾は少なく。規模は大きいが教会がでかいと言うよりも他の施設と合体しているために大きく感じる。

ふと横を見るとシスターはまだニヤニヤしている。


「まだ笑ってるのかシスター、もう着いたぞ」

「いあ、だっておかし…くっぷふぅ」

「おい、貴様!」


だが其の笑みは不躾な声に引っ込んでしまう。笑われているのが自分とは言え美女の子供のような笑みは少しそそるものがあったので残念に思っていると俺の肩が叩かれた。


「貴様だ貴様、でかい方!」

「…俺がなんだって?」


振り向くとそこにいたのは豪奢な鎧に身を包んだ尊大な青年と其の背後に影の様な、しかしながらまるで殺意の塊の様な俺と同じくらいの身長の男が静かに控えていた。

俺の直感でいうと俺の肩を叩きこちらを見上げる青年よりも奥にいる殺意剥き出しの神父の方がやばい、殺意剥き出しなのよりも単純に其の技量が、だ。恐らくは悪魔狩りの中でもシスターに近いかそれより上の化け物、下級悪魔を息をする様に消しとばし、武器はわからないが腕の筋肉のつき方から察するに投げられる様な大きさ、重さの片手剣の様なものだろうと思う。


俺がそんな戦力評価をしていると青年の口が動く。


「見ない顔だ。名前は?」

「ジョージ、姓はない」

「なぁ、貴様…悪魔の匂いがするぞ?」


そういうが早いかそれとも剣を抜く方が早いか、おそらく祝福儀礼済みの聖銀製強度は鉄以上振るわれる速度はそこまでではないが見た感じ過激派、どう動くのが正解だろうか…

そう思って左腕を中途半端に出していると横合いから其の剣を弾く者があった。


「…何をする。」

「失礼致しました。最近は悪魔の数も多く。武器の手入れもままならないのですよ」


シスターアンリは剣にべったりと悪魔の血を着けて笑う。それを見ると青年はフンと鼻を鳴らして先に教会へと歩いていき、立ち止まって吐き捨てる様に言う。


「双翼のアンリ殿、貴殿が何をしようと関係ないが我ら神聖派の邪魔立ては賢いとは言えないぞ」


それを聞いたシスターアンリは…あ、だめだこれなんかキレてる。そう思うとシスターが消え青年の横っ面が歪んで錐揉み回転し倒れる。


「な、何を!」

「うっさいなぁ、人の従者、それも私の従者に手を出そうとしてこの程度で済んだんだから感謝しなさいよ坊や?」

「アグっ!?」


鎧の胴の部分を踏みつけられ地面に完全に背を押し付けられる。


「私は天上が認める『狂犬』であり元『天使』悪魔を見たこともない様な其のアホヅラ肉塊にしましょうか?」

「おい、シスター!」「クハハハハハハ!」


俺がシスターを止めに行こうとするとそれより先に影の様な大男が笑った。


「いやぁ、失敬、シスターアンリ、そして従者ジョージ…私はしがない神父でね名をアンジェロという。そして今シスターに説教をされているのがマクスウェル、申し訳ないが今日は彼の母親の命日でね、それが悪魔に凌辱された後に殺されたの物ですから、少々気が立っていた様でしてね」

「…『狂信者』アンジェロか、弟子の管理くらいきちんとしておけ」

「はい、『片翼』アンリ、あなたの弟子はどうやら賢い様ですね」


彼ら彼女らの会話は非常に心臓に悪いというか、互いに理解する事という会話の本質を粉砕した様な物だった。アンジェロ神父が気絶したマクスウェルを軽々と担ぎ教会に入っていくのを見て俺はようやく安心した。と、同時にアンリのが来たので今度は左腕を前に押し出し弾く。が、次の左が認識を上回る速度で脇腹に刺さる。剣を抜いてれば対応できたが、やはり修行が足りないのだろう。

吹き飛ぶ事なく少し痛い程度で済んだが彼女はどうにも不機嫌そうだ。


「どうしたシスター」

「なぜ防御しなかったんですか!」


ああ、やはりか、彼女は俺のために怒ってくれてそして今も俺の行動に不満があったのだ。


「揉め事は起こしたく無かったし、新参者どころか聖職者ですらない俺が聖騎士をぶん殴ったら駄目だろう?」

「だからって斬られるなんて馬鹿じゃないですか!?」


いや、さすがに斬られてやるつもりはなかったが、悪魔を殺すためにマリアのために障害になり得るものはできるだけ無い方がいいし、粉砕するにしても今ではないから曖昧にしただけだ。


「…っ!もういいです!早く行きましょう!」

「ああ、それがいい、俺は悪魔を漸く倒せると思うと年甲斐もなくワクワクするよ」


不機嫌で、俺からの返答も得られず、俺から滲み出る殺意を感じて顔を歪めたシスターと上機嫌で、悪魔を殺す事以外何も考えていない俺の二人組はなかなかどうして、いい感じにすれ違っていた。

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