50Gから始まる旅 後編
◇ ◇ ◇
舞台は冒険者の酒場へと移る。
「ごめんね! 今日はあたしお金ないからギドのおごりね! 」
「あうあ"うー」
「すまんなギド」
「おう……」
ギドは何となくこれ以降もこんな感じでお金をむしられるような予感がしている顔をしている。恐らくそれは間違ってない事なので、ちょっとした仕組みを考えている様子が見える。恐らくそれを提案するのは遠くない――。
「あの……あの……!」
ラミザリアは涙をポロポロ流しながら酒場特製シチューを飲んでいる。それがラミザリアの五臓六腑の隅々まで命の糧を届けているのがその場の誰にでもわかる。それがその場の全員に強烈な衝撃を与えていた。離れている酒場の主人も涙を流している。
先程までは泥だらけの犬……いや、控えめに言っても肥溜めに落ちたゾンビだったのだが、ミリアムがギドから奪った石鹸で、それが消滅するまで水洗いして汚れと臭いを取り、ぼろきれと言う毛皮1枚に身をくるんでいただけの状態だったラミザリアに袖のある服を与えた。最もその服も酷い物ではあったが、辛うじて人間としての体裁を保っていた。その様子に感激しているのだ。
「アルス、思ったんだが、お金は等分で配分して各々が管理するんじゃなくて、私かアルスが管理して装備品を整えた方がいい気がするんだがどう思う?」
「ああ、まぁ、そうだな。奇遇な事に同じ事を考えてた。俺達は元々その日暮らし程度の考えでお金を使ってきたが、今回の買い物と、ギドのおごりの食事で目が覚めた気がする。これからはギドに管理をお願いするよ……。いいかい?」
「ああ、多分私が一番管理に向いてそうだ」
「さぁ、お腹一杯になったからには話してもらうわよ! ラミザリアちゃん。お父さんとお母さんは?」
「はぃ……。お父ざん"とお母ざんは…死にまぢた。多分生きてますげど、死んだと思えと言われて家に帰って来なぐなったので……探しに来まちた……」
「なんてこと! お名前はわかる? 冒険の片手間でよければ探すの手伝うよ!」
「母はスカーレット、父はグリントと言い"ます……」
「「グリント!?」」
ギドとアルスは立ち上がって驚く。
「あなたグリントさんの娘なの!?」
「あい、お父ざんを知つてぃる“んですか……?」
…………。
「ラミザリアちゃん、お友だちが出来たんだねぇ……!」
酒場のマスターが割り込んできた。
「マスター、知ってるんですか?」
ギドが席に着きつつ返す。
「当たり前だよ、ラミザリアちゃんは3歳の頃からこの酒場に来ていたからね!」
「この辺にいたの!?」
ギドは再び目を剥く。
「家はハジメの町だから少し遠いんだけどね、お父さんがあのグリントだからね、冒険者として時々この街で滞在してたのさ。しかし、グリントは……」
「グリントさんは……?」
アルスが食い入っておうむ返しをする。
「とある依頼でアメリアの首都に行っちまった。少なくとも1年は帰ってこない……」
「なんてことー!」
「死んだと思えと言われたのか……。あの男は父が務まるほどまともな男ではなかったが……ここまでラミザリアちゃんに苦労を掛けるとは……!」
「そーだそーだ!」
ミリアムは机にドンと拳を降り下ろす。その指には銀色の指輪が輝いていた。
「(その指輪は誰から貰ったお金で買ったのですか……?)」
ギドはボソッと呟いた。
「しかも、グリントの野郎さっきまでここにいたぞ……」
「えっ!」
「しかも、あいつ首都まで走って行くとか言ってたから……今から走っても到底間に合わないと思うぞ。あいつ時速40km位で走るから……」
時速40kmで走る中年男性を頭に思い浮かべながら4人の若者は互いに顔を見合わせる。ふとラミザリアが目を瞑って立ち上がった。
「皆さん有難うございます……。とりあえず追いかけようと思います」
丁寧にお辞儀をするラミザリアの手を掴んでミリアムはこう言った
「ダメだよラミザリアちゃん! ハジメの町からここまで来るだけでそんなに泥んこになってたんでしょ?首都まで物凄い距離があるんだから行けっこないよ!」
「そうだな。行けっこない」
アルスは飲みかけの水を一気にあおる。
「もし良かったら……」
ギドの目が光る。
「もしよかったら……」
アルスの唇も光る!
「私達と一緒に行くわよ!」
ミリアムが吠える!
「ぇらい! シチューはタダだ! 持ってけドロボー!」
酒場のマスターがバナナの叩き売りが如く机をひっぱたく!
「「「ありがとうございます!」」」
ギド・アルス・ミリアムが一斉にお礼を言う。
「でも……」
「大丈夫! 臭くならないように私が香水とか作ってあげるから!」
「そこ!?」
ギドは突っ込む。
「なら今から行く先変える?」
アルスがイケメンに見える。
「変えなくて良いよ! バッカスの洞窟でお酒もらって、まずお腹いっぱいご飯食べよう! それから薬草ヶ丘で香草摘んで香水作るよー!」
「「おー!」」
「じゃあいくわよー!」
「「「バッカスの洞窟へ!!!」」」
「へ?」
ギドとアルスとミリアムは勝手にラミザリアをパーティに加えた。それは、見るからに危なっかしいラミザリアをほっとけないと言う気持ちと、グリントの子どもと言う不憫な境遇に親近感を持ったという理由があるが、何より、この年代の子供達は友達を欲していて、何より何より遊びたいのだ。
こうしてラミザリアはパーティとなった。
ラミザリア(New)
Eボロボロなローブ(ミリアムより)
E竹の水筒 (ギドより)
E麒麟蔓の草履(アルス制作)
「行くんならこれ持ってけ、この背負い樽を酒で満タンにしたら1,300Gで引き取るぞ」
マスターから背負い樽を4つ借りた!
林´∀`)σ)∀`)この時代(古代~中世)は結構不潔な時代だけれど、世界的には綺麗好きな傾向があるんだ。ラミザリアは時々通報されるレベルの不潔さなのだよ。