50Gから始まる旅 前編
硬革鎧から始まった旅は、1日目にして盗賊のギド、射手のアルス、魔法使いのミリアムがパーティを組む事となった。
そして、冒険の準備のために裏山に素材採集に向かうも豚鬼に襲われる。それを無事倒して解体して売り、適当な素材も集める事に成功する。
1日の終わりには酒場でうだうだ注意され、宿屋でギドの母から宝石を貰って鎧にはめたら硬革鎧が強化された。それを見たアルスとミリアムが奮起して、1時間後に宿屋集合と言って装備を買いに行くアルスとミリアムだった。←イマココ。
◇ ◇ ◇ ◇
「集まったな。じゃあ……」
「……まずは私から。初めから持ってたお金が690G。それに3,500G足して4,190Gになったけど、特に欲しいものが無くて、買い物はせず。とりあえず折れたショートソードを下取りに出して60G貰って、4,250G。竹と麒麟蔓の蔦で撒き菱を作って、青コケと水包ゼリーで傷薬を2つ作った。あ、閃光キノコと発火キノコと爆裂キノコと麒麟蔓の蔦で閃光玉も作った。こんなもんかな」
ギド装備
E盗賊の短剣
E盗賊の硬革鎧
E背嚢
E革の靴
E竹の水筒
E竹の水筒
E撒き菱の小袋
E傷薬×2
E閃光玉
「俺は、初めから財布に持っていた2,050Gとさっきの3,500G合わせて5,550Gになった。で、550Gで鉄の短剣を買った。あと、5,000Gで中古の鉄の手甲を買って、それに竹で作った簡単な弩を取り付けた。こないだの洞窟では弓が邪魔になりそうな場所とか狭くて弓が使えない場所で何か飛び道具が欲しくてな。それ用の短い矢も作った。
それから、竹を削って矢羽根と鏃をつけて幾らか使えるようにしておいた。と言っても大した威力が無いのは昨日確認したと思うけどな」
E竹の弓
E弩手甲
E竹の矢筒[12]
E竹の矢×12
E柔革鎧
E革の靴
E鉄の短剣
E背嚢
E短矢筒[12]
E竹短矢×12
「アタシは有り金全部丁度で銀の指輪を買って~ちょっとだけ魔力を強化して、あとは触媒を魔法に変換しておいたよー。それとローブはボロボロになっちゃったから普段着に着替えたよ」
E木の杖
E普段着
E背嚢
E革のサンダル
E竹の水筒
E銀の指輪
E『魔術大全』
[火矢×1]
[牙弾×4]
[水浄化×1]
[洗浄×0]
[隣光×0]
[浮遊蝋燭×3]
「……変換?」
「あ、変換ってのは魔術用語で……、ほら、隣光使った時に触媒を使って儀式してたでしょ?仮に火矢使うって時にあんなトロトロ儀式してたらほら、タコ殴りにされるでしょ?だから予め儀式しておいて溜めておくのよ!そうすれば簡単に出せるんだからー!」
「便利だな。俺で言えば矢を作って溜めておく様なものか。大変だな」
「そうそう! そうなの! いやー旦那! 分かってくれるとありがたいたいよ!」
「この『魔術大全』ってのは魔法の本かな?」
「あ、うん。そうだよ。昔、人から貰ったんだけど、簡単な魔法の使い方が沢山載ってるんだ。ただ、昨日みたく爆裂キノコなら爆裂キノコって名前しかわからないから、触媒を集めるのが大変なのよねー」
「そうか、ギドの手帳があれば多少の素材はわかるもんな」
ギドの冒険者の手帳にはこの辺で取れるものに限ってではあるが、上手な絵で素材やクラフト品等が描かれていた。初級の冒険者にとって、その情報はかなり有益なものだった。
結局、この1時間は大した戦力補強にはならなかったが、冒険に対するモチベーションアップと多少の準備を整えるには役に立った。話し合った結果、手頃な目標として、戦力補強のためのお金が欲しいと一致。今回向かう場所は現金を稼げると有名なバッカスの洞窟となった。
「バッカスの洞窟は天然の酒が滴る世界有数の霊峰にある洞窟なんだ。山頂あたりに葡萄の木が大量に植えられていて、その葡萄の実が山頂の大穴に転がり落ちるように出来ているんだ。転がり落ちる過程で潰れて果汁が絞られて、山の洞窟の隙間に染み込んでいって、それが山の熱にあてられて徐々に発酵しながら麓まで降りてくる。その雫がバッカスの洞窟最深部の鍾乳石から滴ってくるから、定期的に冒険者が酒を取りに行くんだ。勿論高く売れる」
長い台詞だがギドは少し得意気だ。
「無駄知識だが、樽1杯取るのに3時間くらいかかるみたいで、無駄にしないように酒の精霊が常に樽を交換しているんだ。酒の精霊は食べ物を持っていくと喜ぶらしい。冒険者はちょいちょい取りに行くんだけど、あそこ洞窟の中は往復3時間くらいかかるらしいし、町から1時間くらい離れてるし水包とか怪しい魔物がいるから……たまに3日くらい誰も行かないときがあるらしい。暗い上に道中急いでるので、行く人行く人必ずどっか怪我するらしいしな」
「詳しいねー!」
「ギドはこの町の人だったよな。何かあったら便りにしてるぜ!」
「常識くらいなら何とか、町の人と言っても引っ越してきた身だから詳しくはないんだけど……」
「バッカスの洞窟の次は薬草ヶ丘とかにも行ってみようよ。なんか薬草沢山生えてるんでしょ?触媒貯めるからー!」
「薬草ヶ丘か、薬草と言いつつ雑草っぽいものも大量に生えてるから、籠一杯取るのはなかなか大変だよ。早い人で1時間、遅い人は3時間くらいかかる。まぁ、一応何度か取りに行ったから多少は早く集められるはず」
「私も薬草だったらある程度わかるよー!」
「その前に裏山に行って、竹で籠も作らなきゃな」
ギド達はそんな事を話しながら宿屋の外に出た。
「ぁの……」
「ぁのー……」
アルスの背後に黒い影が忍び寄る。
「ん?」
「なんか臭いな」
アルスは鼻を鳴らす。
「あら?、あなただあれ?」
ミリアムが振り替えるとそこには形容しがたい何かが立っていた。
「あ"の……、昨日……豚鬼を討伐じだ方でずが……?」
「そうだけどー……?」
「これ”、お礼です…。ぁだしが内臓を引き取りまじだので内臓引き取り"費用お返しじます…」
謎の女は薄汚れた布とも知れない毛皮の隙間からボロボロの手を差し出す。手のひらに小さな銅の貨幣が載せられているようだ。それをミリアムが受けとる。50G。それは確かに解体の時処分費用として解体屋に支払った50Gだった。
「ちょっと!」
ミリアムは謎の女の手首をそのまま掴む。
「いきなり来てお金だけ渡されても困るよー! せめて名乗りなさいよー!」
「アダヂは……ラミザリア、ど言い"ます。ぁりがと"うございまず……」
声と名前に反応してミリアムがラミザリアの頭から被っている毛皮……布を取る。
「あなた女の子じゃないの! 何でこんなに汚くてぼろぼろなのよ! それに臭いよ! 」
「お金ごなくて、少し疲れだだげです……。あと豚鬼の内臓たべまじたので……くちゃいかも……」
「あなたちょっと来なさいよー!」
「おい! ミリアム! なにやってるんだ!」
「良いから行くよ!」
「ギド! あれ貸して!」
「はぇ? あれ?」
◇ ◇ ◇
「ねぇ! 解体屋さん! こないだのお風呂貸して! この子臭いの!」
「おい、うちは風呂屋じゃねぇぞ! ってそいつはラミザリアちゃんじゃねーか! おい!! 脱がすな! 女の子だぞ!」
ミリアムは頭だけ剥ぎ取っていた布……ラミザリアの全身に纏う腐った毛皮をひっぺがした。
「大丈夫わたしもぬぐからー!」
すぽぽいぽーい。
怪盗顔負けの早さでミリアムも衣服を脱ぎ捨てる。
「オオイイイ! そんな意味じゃねー!! ってか店の前で脱ぐな! 早く風呂に行け! ってか隠せ!」
「はーい! 急ぎます!」
「急ぐよりまず隠せ! 急げと言ったがその格好で走るなぁああ!」
「「……」」
昨日の今日ではあるがギドとアルスは口を開けたまま動かない。
「えらい奴らに目をつけられちまったな……」
解体屋は後ろを振り替えって、ギド&アルスをチラッと目の端に納める。
「「……」」
ギド&アルスは解体屋の両肩に手を乗せてうすら笑いを浮かべた。
「お前達、お風呂の前に脱ぎ捨てた服を持っていってやってくれ……」
俺達は無言でうなずいた。
「……ん? あれ、服か?」
「ラミザリアちゃんの纏っていた獣の皮はダストシュートにインだな。お前達着替えとか持ってるか?」
「ミリアムの着替えを借りようか。ギド、それ捨てられるか?」
「触りたくない……」
ギドの呟きは空に消えた。
◇ ◇ ◇ ◇
「きれいになったよー!あたしの服着て貰った!」
「ってオオイイイ! それオーク血染めの破けたローブじゃねぇか!」
「///」
ラミザリアは赤面する。
(多分そこ赤面する所じゃない)
ギドは白目を剥いた。
「次はご飯だよー! 顔色悪いし、栄養とらないと出来物は治らないよ」
「あ! 解体屋さんお風呂ぁりがとうございます! お風呂代50Gここに置いておきます。時々お風呂に入りに来ますね!」
「浴室の中で服を脱ぐならいいよ……」
解体屋の呟きは小鳥に啄まれて消えた。
◇ ◇ ◇ ◇
解体屋は解体屋のカウンターで煙草をふかしながら一人言を呟く。
「しかし、ラミザリアちゃんにも友達が出来たか……。まぁ、あの連中なら仲良くやってくれるかもしれないな」
「何とラミザリアちゃんに友達が……にしてもここ臭いね!」
全く気配がない状態から隣に現れたのは……冒険者グリントその人だった。
「さっきそこにラミザリアちゃんg……」
「くさいね!」
(……この男には仮に……と言う言葉をつけてすら女の子の親になる事は無理だろう)
ゴツン!
何処までも広がる青い空に解体屋の会心の一撃が響き渡る。
覚える事
ギド(盗賊)
アルス(射手)
ミリアム(魔法使い)
ラミザリア(ネクロマンサー)
4人パーティーになる。
・次はバッカスの洞窟へ
自然に酒が出来る洞窟。
樽4つレンタル済。
・その次は薬草ヶ丘へ
文字通りの場所。