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メタリアトラス!~冒険者達~  作者: 林集一
ギド達の旅立ち
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50Gから始まる旅 プロローグ

【閑話】三人称視点です。



 ラミザリアは冒険者の子供として育った。母はラミザリアが14歳の時に亡くなったと伝えられ、父親と祖母に育てられた。しかし、ラミザリアは母が死んでいない事は分かっていた。「そう思いたくない」と言う願いから父や祖母の話を信じられなかったのではなく、確信として分かっていた。それは彼女の才能によるものだが、それはある(・・)時まで彼女以外理解する事は出来なかった。


 ラミザリアの母は特殊な職業(ジョブ)に就いていた。死霊術師(ネクロマンサー)。それは死者を操る禁断の魔術で、人々から忌諱されると共に、その絶大な力は多くの欲深い者共を呼び寄せた。


 死者をよみがえらせてほしい。


 暗殺をしてほしい。


 死霊術師(ネクロマンサー)は裏の依頼がひっきりなしに来る。政治家、貴族、王族。どれもこれも欲深い者だった。


 ある国の貴族からとある貴族を殺してほしいと依頼があり、対象の貴族を殺した。


 その依頼をした貴族が殺した奴から権力を簒奪すると、今度はまた別の貴族からその貴族を殺してほしいと依頼があった。


 その対象の貴族を殺すとまたその貴族が権力を簒奪した。彼女は、次々やって来る密使にうんざりしていた。


 そんな中、その死霊術師(ネクロマンサー)を命を預けるパーティとして迎え入れた連中がいた。それが冒険者であるグリント達だった。彼女は冒険者として初めてこの町の一員に受け入れられたのだ。


 そんな縁もあり、死霊術師(ネクロマンサー)のスカーレットは冒険者グリントと結婚し、ラミザリアを授かる。


 しかし、ラミザリアは呪いの子として産まれてきた。スカーレットの身から出たものかグリントから出た錆びかはわからないが、彼女は、生まれつき目で物を見ることも耳で音を聴くことも鼻で匂いを嗅ぐことも出来なかった。


 スカーレットはラミザリアを想い、死霊術師(ネクロマンサー)の力で死者の眼球と死者の耳と死者の鼻を与えた。結果、ラミザリアは5感のうち元々無かった3つの感覚を得る事となった。しかし、借り物の感覚では、精神が育つのに大きな遅れが発生した。他人と接する事の恐怖と、他人と違うという事への遠慮から友達が出来なかった。


 グリントが仕事先まで連れて歩いていたからか、滞在先の町の、解体屋と酒場では顔見知り程度の大人と話す事が出来たが、結局は深い関係を得る事はなかった。人との会話、特に同年代の子供との会話が決定的に足りなかったのだ。


 発達課題の初期の段階で躓いた彼女を救えるのは「母」であり、「友達」であり、「恋人」だったが、これ迄の人生では恵まれる事はなかった。


 しかし、この3つの存在に値する関係を今、得ようとしていた。




 ……その出会いは、父が「俺は死んだので、忘れてほしい」とだけ残して家から去った日から10日程たったある日の事だった。

 

 「俺は死んだので忘れてほしい」まさに馬鹿の一言である。余程特異な状況でなければ確実な嘘である。グリントは娘にそう言い放ったのだ。


 ラミザリアは母が父と同じような事を言って旅立ったのを覚えている。「私は今からとても危ないお仕事をするので、死んだと思いなさい」それが、母の最後の言葉だった。


 しかし、ラミザリアはある特殊能力を持っており、それにより母は生きていると核心している。


 その能力は死者との対話である。ラミザリアは死者を呼び出したり、死者と対話したり、死者を成仏させたりするなど、死霊術師(ネクロマンサー)としては最高クラスの特殊能力を生まれ持っていた。


 母が生涯をかけて得ようとした力と、その代償でもある5感の部分的欠如、その2つが、母が命をかけ健康を願って産んだ娘に宿っていたのは皮肉でしかない。


 さて、ラミザリアの元より旅立った母は、呼び出しに応じない。つまり、生きているのだ。


 同じく父も呼び出しに応じない。勿論生きているのだ。


 しかし、両親は生きているとはいえ、同じようにして出ていった事からラミザリアは不安になった。


 彼女は、人生初の()()()()による決断を2人暮らしの祖母に告げた。それは、「お父ざんとお母さんを探じにいぎだい!」という一言だった。祖母はその決断に涙を流して喜んだ。これまで、言われた通りの事をするだけの人形だった孫が、初めての意思を示し、決断をしたのだ。


 祖母はラミザリアのために支度をした。衣服、食料、お金、道々で道を尋ねるために使う札木。万全を期した準備ではあったが、どうしようもない部分があった。それは護衛。


 ラミザリアの祖母はなけなしのお金で冒険者を雇ったが、その冒険者はあまり賢くはなかった。そこでやらかした冒険者のミスはラミザリアの護衛を、グリントの居るであろうミナトの町への護衛……ではなく、補給の為に立ち寄って欲しいと木札に書いた町への護衛だと勘違いしたのだ。それは、祖母の依頼金の安さがあだとなっていた。


 ラミザリアはハジメの町の南端から南西に向かう途中にある二十数棟程の農村で置き去りにされた。


 そこからは彼女のみの旅となるが、それが熾烈を極めた。途中盗賊に荷物を奪われ、服まで奪われた。不潔ゆえに奪われなかったものもあったのは幸いだが、彼女は丸裸のまま、徐々に寒くなっていく季節に旅を続けた。元々ふくよかなラミザリアではあったが、この7日間程の旅で体重が5kgも痩せた。


 道中の食事は死んだ動物の場所を探し当てて生でかじりついた。その死体から素手で皮を剥ぎ取り、身に纏った。


 彼女は生まれ持っていた物や育ってきた環境のせいで全く違う価値観を持っていた。死霊術師(ネクロマンサー)の母の影響で死体に対する抵抗感や解体に対する抵抗感が全くないのだ。


 冒険者の父の影響で解体屋に入り浸っていた事もあり、解体の手順も記憶していた。


 嗅覚や視覚や聴覚に対する常識も異なっていて、ラミザリアは臭いと匂いの違いがあまりわからなかった。関心もなかった。見た目に関する感覚も鈍かった。彼女にとっては銀糸で刺繍した絢爛豪華なローブも剥いだままの血だらけの獣の皮も大差ある衣服ではなかった。言葉も、変に高い声を出すのだが、相手にとってどう聞こえるのかに対して関心がなかった。相手の心に寄り添ったり、他人の事を考える事が感覚として育っていないのだ。


 彼女は、周囲の人々の視線と感情、それからネガティブな自己否定の思考から、「嫌われている」といった感情を理解して町や施設の中に入るのを躊躇していた。最低限しかそこに居ないならば迷惑はかけないだろうと考えていた。


 父の手がかりとなる可能性がある場所……。ラミザリアが父と行った事のある町は1つ。それはミナトの町。ミナトの町にて彼女が知っていた場所は3つ。酒場と、解体屋と、宿屋の3つだった。


 彼女はまず、解体屋へと行った。夜ではあったが、顔見知りのラミザリアに解体屋は優しく対応した。


 解体屋はラミザリアの状況を知っていた。だからある願いを込めて話し掛けた。


「ラミザリア、たまたま今日は豚鬼(オーク)の解体を頼まれてな。普段はネクロマンサーが居ないから、処理費用として50G受け取ってこの内臓を処理しようとしてたんだが……これ、ラミザリアなら有効利用して処理できるだろ? だからこの50Gを宿屋に泊まってる3人組に返してきてくれないか? 勿論この内臓は貰っていい。50Gも、もし渡せなかったら貰っていい」


「ラミザリア、あと冷たいけどシャワーを……」


 解体屋が振り替えるとラミザリアは居なかった。まさか豚鬼(オーク)の内臓を持ったままあの格好で行ったのか……。先が思いやられると思いつつ、あの3人組ならば、ラミザリアを任せられると思ったのだ。


 もし、見つけられなくても、50Gでパン1つなら食べられるだろう。あとは時々ドでかい獣を持ち込むあの冒険者、ラミザリアの父親を見つけたら1発ぶん殴ろうと思って店を閉めた。


 ラミザリアは町の外で豚鬼(オーク)の内臓を食べていた。飢えていたのだ。その際にラミザリアは血と汚物にまみれて、町に来た状態より大分ひどくなっていた。形容するならば、肥溜めに落ちたゾンビといったものだ。しかし、ラミザリアにとっては、服を一着着替えた程度でしかないのだ。


 翌日、宿屋に向かう。手元に光る50Gを持って。ラミザリアは家族以外から初めて頼まれた「ヒトに頼まれた仕事」を遂行すべく、張り切っていた。


 そこでラミザリアは運命の出愛いを果たす。



覚える事


・母親→スカーレット(ネクロマンサー)

・父親→グリント(冒険者)

・娘→ラミザリア(ネクロマンサー)


・ネクロマンサーはレア職業。

・ラミザリア→小汚い。

・ラミザリア→霊と話せる。



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