旅の終わりと旅の始まり
旅の終わりと支流の合流
ギド「おはよう」
アルス「おはよう」
ミリアム「おはよー」
ラミザリア「おはようございます」
ギド達は朝目が覚めて挨拶を交わした後に今日の目標について語り合う。
ギド「今日は取り敢えず毒の森の探索と当面の拠点の作成と食事の確保からやっていこうか。目標は漆黒の勇者との接触。相手次第ではその手伝いを行う。手伝いがなければ再び北上してトナリの村から首都を目指そう。何か意見や質問はあるか?」
ミリアム「はーい、漆黒の勇者が居なかった場合はどうしますかー?」
ギド「取り敢えず今日明日と2日探して居なかったら諦めて北上しよう」
ミリアム「具体的に何を手伝うの?」
ギド「流石に魔王討伐の手伝いは出来なくても、情報面や多少の雑用は出来ると思う。一応、首都に辿り着ければグレーターグリントから魔王の情報を手に入れられるかもしれないからな」
ミリアム「じゃあいっそストレイドギーごと漆黒の勇者のパーティーに加わって魔王討伐をサポートとかしてみたら?グレーターグリントよりも有名になれるかもよ?」
アルス「まぁ、状況次第では有りかもしれないな。グリントさんに会うために首都には行くが……」
ラミザリア「それなんですが、今は多分大丈夫だと思います。父や母を探すのは確かに目標ではあったのですが……今は私自身の意思でストレイドギーとして冒険しているのが楽しいのです。だから、首都には行けなくても構いません」
ギド「そうか、わかった。判断材料にするよ」
アルス「ラミザリアが……」
ミリアム「大人になっちゃった感じねー」
ラミザリア「いや、大人と言うかその……」
ギド「数百kmぶっ通しで走る事も出来たし、ネクロマンサー的に凄いアイテムも作れたし、ラミザリア自身が自分の出来る事を模索してるって事じゃないか?そうだろ?」
ラミザリア「その通り……だと思います。いつまでもお父様とお母様に頼ってもいられませんし、私に出来る事を……試したいのです」
ミリアム「私ももっと強くなってもっと色々な場所に行ってみたいな!そのためには沢山食べなきゃね!」
ギド「確かに食事は重要だが……ここでそれを言うか」
アルス「しかし、この辺は裏山と違って食料になるものが少ないから……食糧は重視した方が良いのは確かだな。多分近くにあると言う魔王城のせいだろうが……」
ミリアム「焼き鳥があれば満足するんだけど野菜も欲しくなるのよねー。あ、そういえばアルス、竹の無い所じゃ矢はどうやって補充してんの?」
アルス「消耗してる……。鉄の矢は勿体なくて使ってないが、実は竹の矢はそろそろ本数的にヤバイ。と言うかほぼ焼き鳥の串になった」
ミリアム「焼き鳥が食べにくくなるわねー」
アルス「そこ!?矢がないとそもそも鳥が取れないんだぞ!」
ギド「……取り敢えず、漆黒の勇者はこの先の毒の森の何処かに居る。もしくは今から来るだろうから、一応毒の森にも拠点を作ろうと思う。竹はないが木の枝と葉っぱで簡易テントを作って雨風位は凌ごう。そろそろハイドレザーコートやらマントやらじゃあ寒くなってきたしな。あと、矢は温存しつついくしかないな」
アルス「竹があればな……」
ギド「全くだ」
ラミザリア「お母様と素材や触媒を拾いにこの辺……と言いますか毒の森に着た事があるのですが、食べられられるものは極端に無い印象でしたね……」
アルス「此処にはあまり生き物の気配がしないから隣の森に行って獲物狩ってくるわ」
ミリアム「私は毒系の触媒がある筈だから、それを集めとくね!いざと言う時の為……猛毒撃撃てるように頑張る」
ラミザリア「私はアルスの手伝いをします」
ギド「じゃあ、ギドミリアム班とアルスラミザリア班に別れて行動だな。集合は3時間後に此処で」
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
およそ3時間後に合流したギド達は成果を確認しあった。
ギド「取り敢えず毒の森の入り口に風雨を凌げそうな岩の窪みがあったから、その周りに木の枝を立てて囲いを作った。何とか並んで寝られる程度の広さはあるが、まだ隙間風が吹き放題の格安物件だな。葉っぱの付いた木の枝を立て掛けて隙間を埋める作業をすれば多少は温かくなるかもしれん」
アルス「とりあえず毒の山から1番近い森を一回りしてきたが、鳥やら猪やら鹿やらは少ない。まぁ居る痕跡はあるが、獲れたのは仔鹿1匹。今ラミザリアが血抜きして薄切りにした肉を塩で漬けてる。魔物は全く見られない」
ミリアム「じゃあ今日は鹿のお肉が食べられるのね!」
アルス「そうだな。とりあえず半分は焼いて今日食べる用に沢に沈めて冷やしてある。残りは塩漬けにして干して明日以降食べられるようにしてる筈だ。まぁ漆黒の勇者様も人間だろうから食べ物に困ってる筈だからな」
ギド「そうだな。何でここに居るのか分からないが、最寄りのハジメの町が無くなったからには困る筈だからな」
ラミザリア「とりあえず仔鹿を塩に漬けて来ました~」
アルス「お疲れ様」
ギド「じゃあ行くか。毒の森探険」
ギドのクラン“ストレイドギー”第1パーティーのギド、アルス、ミリアム、ラミザリアは仮拠点に荷物になりそうな物と仔鹿の塩漬け肉を置き、武器を構えて毒の森に入っていった。
森は静けさの中に深い闇を孕んでおり、木洩れ日は雲の巣に掛かった砂粒の様に揺れ動いていた。
ミリアム「?どうしたの精霊さん達」
醸造の精霊「なぁ、林檎の」
林檎の精霊「ああ、居るな」
ミリアム「?」
林檎の精霊「この山……と言うか森に精霊が居るっぽい」
林檎の精霊と醸造の精霊はミリアムの胸から同時に生えてきて会話する。どうでも良い事ではあるが、胸から生えていると言う事は眼前を覆うと言う事で、ギド達からはミリアムは見えない。
その時、辺りの空気が一変し、何者かが脈動を開始した。
ギド「あ、あれは魔物か?」
ミリアム「あれ……もしかしてインプ?」
麓から見上げる毒の山中腹よりコウモリの翼の付いた子供の様な生物が大量に沸いている。
アルス「これ、漆黒の勇者じゃね?」
ミリアム「悪魔恐るべし」
ギド「取り敢えず行ってみたい所だが……これ襲われたりしない?」
ラミザリア「大丈夫じゃないでしょうか?」
◇ ◇ ◇ ◇
暫しの逡巡の後に、こちらに気付いたインプの群れが向かってきた。不思議と敵意を感じないのでそのままにして見守っていると目の前までやって来た。
インプ「キキッ」
ギド「来いってか?」
ミリアム「どうするギド……」
ギド「どうするって行くしかないだろ。666匹のインプか……どの道もう逃げられないのさ」
ギドが半身をズラしてミリアム達に視界を譲ると、そこには夥しいインプの群れが蠢いていた。
インプの案内に誘われ、毒の森を進んで行く。20分ほど経っただろうか、インプの動きが騒がしくなってきた。
開かれた場所に出ると両脇にインプが整列し、モーセの道の様に終点に向かって続いていく。終点に居るのは漆黒の勇者。
学生服と呼ばれる漆黒の天鵞絨色の固い服に身を包んだ漆黒の勇者が切り株に足を組みながら座っており、両脇には猫の姿をした精霊と蜥蜴の姿をした精霊が控えていた。
ギド「お初に御目にかかります。漆黒の勇者様。ハジメの町町長の遺言により、諸事のお手伝いに参りました。出来る事には限りあると思いますが、何なりとお申し付け下さい」
ギド達は演出された王への謁見が如きシュチュエーションに、思わず話を聞くと言う段階を忘れて、手伝いをする事を申し出てしまった。その場の誰もが同じ気持ちだった。
これにてギド編は終わりまして漆黒の勇者編に統合されます。




