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メタリアトラス!~冒険者達~  作者: 林集一
ギド達の旅立ち
6/61

ミーティング

 


「これだけの時間がかかって、尚且つあの重い豚鬼(オーク)を裏山から引き摺ってきて1800Gか……」


「重かったよー!」


「こりゃ、武器や防具が壊れたり、矢とか魔法の触媒の消費があったら大赤字じゃないか」


 ギドは手にショートソードを持つように手を動かして、ため息を突いた。


 実際にギドのショートソード(1000G)は折れたし、ミリアムも攻撃魔法を2つ消費したし、アルスも矢を10本近く撃ち幾つかを壊した。大きな損失がある。


 しかし、ギドは素材の幾つかを集められた。ミリアムも触媒は補充できたし、アルスも矢の材料を補充できたので、赤字とは言えないが、まぐれの大当たりで倒した強敵の報酬がこれだと言われると納得がいかないものである。


 3人は、冒険者の酒場で語り合う事にした。


「私は……みんなが好きだから、明日も明後日もパーティを組みたいんだけど……良いかな?」


「アタシこそお願いしたい。勿論だよ! こんなに楽しくてハラハラした事は無いよ!」


「お前達を放っておくのも目覚めが悪いしな! 今日から俺達はパーティだ。盗賊のギド、魔法使いミリアム、そして俺は射手のアルスかな。みんな後衛寄りだが、何とかやっていくか!」


「あれ、私は盗賊なのか!?」


豚鬼(オーク)に止めを刺した技は盗賊っぽかったよ。明らかにクリティカル狙いで、流れるように首を斬ったじゃないか。それに、撒き菱とかセコい物を用意する辺り盗賊っぽいじゃないか?」


 アルスは自信満々に言い放つ。


「ああ、あとその短剣はショートソードなんかよりよっぽど業物だぞ。それに、折れたショートソードよりそっちが合ってるぞ?」


 アルスとミリアムは折れたショートソードを指差して笑い合う。確かに、と思いギドも笑った。


「話変わるけど、解体屋さんはさっきの解体で代金300Gって事は、1日5体解体して1500Gでしょー? 場所代とか刃物代とか入れたらさほど儲かってる感はないよねー。やっていけてるのかな?」


「確かに……と言うか俺達も3人で1日頑張って1800Gだもんな」


「しかも、豚鬼(オーク)を倒してなければ、その収入も殆んど無かった訳だろ? 水包(スライム)の核とか犬鬼(コボルト)の睾丸を売ったとしても、さほどの稼ぎにはならないし、冒険者って儲けられないのかなー」


「おいおい、お兄ちゃんお嬢ちゃん達、しんきくさい話をしているじゃねえか」


 酒臭い冒険者が乱入してきた。


「聞いたぜ、お前達初めての冒険で豚鬼(オーク)を仕留めたらしいな。すげぇじゃねえか!」


「いやー、まぐれですよ! まぐれー!」


 ミリアムは飲んでなくとも酔っぱらいのようにオーバーアクションで謙遜する。


「しかし、何だか気が抜けてしまって、冒険者って何なのかなと、ふと考えてしまいます」


 アルスは酔っぱらいのように押し黙る。


「でもな、こんな話があるんだぜ。これはある冒険者の昔の話だ」


「「「そんな時は大体本人の話ですけどね」」」


「近頃の若者は可愛くないねぇ…。


 と、まぁ語らせてくれや。


 その日の豚鬼(オーク)の下取り数が1匹で、そいつを狩ったのが俺のパーティだったとする。そしてな、2~3日して酒場でオークの干し肉が出たとする。それは、高い確立で俺が狩ってきた肉だってわかるだろ。


 それが、その辺にいる自慢話に忙しい冒険者の口に入ってな、そいつがエール飲んで笑うんだよ。


 そこで、俺は町の一員になれたんだなぁって思えたんだ。そうやって一歩一歩歩んで来て、知らないうちにこの町の中堅冒険者に仲間入りさ。


 まぁ、冒険者が実入りの良い仕事ならみんなこぞって冒険者になる訳だが、そうじゃない。危険でいて腕がなければやっていけねぇ。ひでぇ仕事だ。


 そんな危険な仕事を毎日やって鍛えられている俺達みたいなのがやっとこさ食っていける。それが冒険者ってもんだ。


 新人がまぐれで豚鬼(オーク)を倒したとか、たまたま素材の群生地を見付けて稼いだとか、そんなのはまだ冒険者とは言えない。お前達が冒険者と言える様になるのは、せめてその腕が俺達の手首ぐらいの太さになったときだな。ぅはははは!」


「また、グリントさんの説教が始まったぞ!ぅはははは!」


 別の冒険者も話に入ってくる。


「ぅはははは!」


 グリントと呼ばれた冒険者は別の冒険者の茶々に呼応して笑う。


「ぅはははは!」


 何故かミリアムも笑う。


「ミリアム、お前は混ざらないで良い……。ってお前はエールを飲むな! おい、ギド、ミリアムを止めろ」


「暫くは危険なところへは行かずに、薬草ヶ丘とかバッカスの洞窟辺りの採集にしておけよ。半年もしたら力は付くからな。死ぬなよ! それからこれは迷惑料だ。ぅはははは!」


 グリントは笑いながら隣のテーブルに帰っていった。


「ぅはははは!」


「ミリアム、お前は笑わなくて良い!」


 2人でため息を突きながらテーブルを見ると金貨が1枚置いてあった。


「これ……! 10,000G?」


 ギドは目を丸くして見る。


「そうみたいだな。貰っておこう」


「冒険者って……悪くないな」


「案外悪くないかも」


「ぅはははは!」


 ……。


 彼等は以外と現金だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 それから暫く3人で語り合った。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「今日は帰るか」


 ギドとアルスはミリアムを曳き擦って酒場を後にした。その日は3人で2人部屋の宿をとって、休む事にした。ギドとアルスは2人同じベッドで寝た。


(かなり狭い)


 しかし、ギドとアルスは「何でこんな事に……」なんて呟きつつではあったが、悪くない夜だと思っている部分もあった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 そして、夜が明けて部屋に光が射し込んで来る。


「おはよう! 2人とも! 仲いいね!」


 ミリアムがギドとアルスの寝ているベッドに飛び込んできた。


「「ぐぶぉっ!」」


 ギド&アルスはもみくちゃになりながらベッドを降りた。


「おはよう」


「おはよう……」


「よし、じゃあ荷物を整理して買い物に行って……!今日も冒険に行こうよー!」


 (ああ、そう言えば私達は冒険者になったんだ)


 ギドは豚鬼(オーク)のミドルメイスにやられた脇腹をさする。折れては居ないが身体の内側に鈍い痛みが残る。


(硬革鎧(ハードレザーアーマー)の衝撃吸収能力があったから今此処に居られるのだろう。ふと、父の顔が思い浮かんだ)


 アルスも、一緒に過ごせる仲間がいるという事に気付いた。


 ギド達は冒険者としての一歩を踏み出した。


 ――つづく……?




 ガチャッ!


「うぉっ」


「ギド、おはよう。いきなりだけどコレ忘れ物だよ。父ちゃんの部屋にあったんだけど、その鎧の部品じゃないかな?」


「え? ギドのお母様!?」


「母ちゃん! って何でここが判ったの!?」


「だって、昨日一緒に飲んでたじゃない! グリントから金貨貰ったんでしょ?」


「知ってるの!?」


「あんたの父ちゃんの親友だよ! 冒険者なんだから当たり前じゃない!」


「ってか酒場のあのテーブルに居たの!?」


「息子が冒険者になるって言って家出したって愚痴ってたんだよ。そしたらしんきくさい顔してただ座ってる奴がいるからグリントに説教して貰ってんだよ!」


「」 


 アルスは固まっている。


「それはそうとして、お友達の2人、ギドをよろしくね!」


「「は……はい!」」


「じゃあ、またね。誕生日と言わずにたまには帰ってくるんだよ!」


 そう言い残して母は帰っていった。


 ……変な宝石を置いて。


 そもそも、硬革鎧(ハードレザーアーマー)なんて、わざわざ宝石を使って強化する程の物なのだろうか?皆の脳裏に沢山の?が生えてきた。


 そして、ますますギドの父親盗賊説が信憑性を増してきた様な印象を植え付ける。硬革鎧(ハードレザーアーマー)をそこまでして使うのは音を嫌う奴と金がない奴だけだ。と言う認識があるのだろう。


「ギドって、いや、みんなそうだけど友達の前に母親が来るとテンパるよね。さっきのギドは普段のギドの2倍はテンションが高かったよ!」


「それは言わないで……」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ……宿屋の外。


 ギドの母は宿屋の外に出て壁にもたれ掛かっている男に話し掛ける。


「やれやれ、さっそく良い友達に恵まれたみたいだね。心配して損したわ」


「昔の俺達みたいだな。確か……俺達も初めは、アイツと、お前と俺の3人だった」


「そうだったっけぇ?」


「そうだよ」


「まぁいいや、グリント、今日から予定は空いてる?」 


「空いてるよ、今回も大仕事なんだろ?」


「そ、例のドギツイのが待ってるわよぉー」


「って事は……動いたか……」


心配の種(子供達)の問題も片付いたし、私達も行かなきゃね」 


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ……宿屋の中


「これ、かなり凄い鎧じゃないかな?」


 鈍い光を放つ硬革鎧(ハードレザーアーマー)を目の前にしてアルスが呟く。


「魔法防御効果のついた硬革鎧(ハードレザーアーマー)なんて初めて見たよー」


「これ、普通の硬革鎧(ハードレザーアーマー)より硬くて、革の素早さを保ったまま……いや、更に素早くなって幾らかの魔法防御力を備えた魔法の鎧をゲットした事になるな。これなら鳥女(ハーピィ)の爪撃食らっても命は助かりそうだ。実際にあの豚鬼(オーク)の薙ぎ払い食らってもピンピンしてるくらいだしな。魔法効果が無い状態でも……それだから……。俺も欲しい」


「これが父さんの鎧……」


 ギドの母が持ってきた宝石を硬革鎧(ハードレザーアーマー)の胸部金具に嵌めると、鎧から感じる空気が明らかに変わったのを感じる。


 それを感じてパーティの空気も変わった。とりあえず、先に買い物から始めようと言う空気になった。アルスもミリアムも装備を強化する気満々だった。とりあえず宿代と酒場代を差し引いた1人3500Gを持って解散となった。


 大体1時間後と言う買い物時間を指定して、待ち合わせ場所は宿屋。その時に3人でミーティングする事となった。


(やる気出しすぎだろ……)


 ギドは青い青い空を見た。



・ギドの母親とグリントさんとあと1人は仲間。



オマケ


盗賊の硬革鎧

(ハードレザーアーマー)

防御力+9+5(盗賊の)+6(宝石)

魔法防御+0+7(宝石)

素早さ-4+6(盗賊の)

回避力+0+5(盗賊の)

※短剣攻撃速度+5(盗賊の)

※短剣攻撃力+6(盗賊の)

※短剣会心率+25(盗賊の)

※傷付きにくい(宝石)

※自動再生+1(宝石)……1日に擦り傷一つ分くらい再生して行く。装備者のMPを1づつ勝手に消費。


盗賊の短剣

攻撃力+5+11(盗賊の)

会心率+1+25(盗賊の)

命中率+4

素早さ+0+4(盗賊の)

※盗む確率+2%(盗賊の)


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