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メタリアトラス!~冒険者達~  作者: 林集一
ギド達クランの旅立ち
54/61

スパルタスロン

ギド「道は…ここで…あってるの…か?」

 

ラミザリア「あってる…はずです」

 

ザッザッザッザッ…。

 

拠点を出てラミザリアの故郷ハジメの町を目指すギド達は誰ともなく始めたマラソン大会に没頭していた。

 

アルス「時速…10kmは…出てるな…」

 

ミリアム「ナナミちゃん…以来の…マラソン…だね…」

  

ラミザリア「そうです…ね…」

 

 

誰かが少し走り出した…。

 

それに誰かが反応した。

 

それだけで走り出してしまう15歳と言う年齢。

 

そして工務店にて培った体力。

 

久々の冒険に逸る気持ち。

 

幾らかの条件が重なった事により発生したこの長距離行軍は、距離凡そ400km近くの道程を時速10km少々の速度で突っ切って行く。

 

ザッザッザッザッ…! 

 

結果として開始3時間半にてフルマラソンを越える距離を走りきってしまった。一向は遅い昼食を兼ねて少しの休憩を挟む。

 

「ふぅ…案外いけるもんだな…」

 

ギドは竹の水筒から水を飲みつつ言い放つ。

 

「確かに!もぐもぐこれならもぐもぐ2日あればもぐもぐ着きそうね…!ごくん」

 

ミリアムは蜂蜜で味付けされた偽麦のクッキーをもぐつきながら答える。 

 

「2日じゃあ遅いんだがな…。クチャクチャ…明日の朝が精霊祭だから…。クチャクチャ…やっぱ馬車で行くべきだった…バリッ」


アルスは鹿の燻製をかじりつきながら言うべき事を呟く。

 

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ…ごくん。うまし」

 

ラミザリアはミナトの町特産品の塩と、輸入品の米と海苔を使った塩おにぎりを食べる。うまし。

 

 

ギド「まぁまぁ、多少遅れても町長に話を聞きに行くだけだし、召喚された勇者も当日にハジメの町から出たりはしないだろ」

 


ミリアム「だからと言ってマラソン?まぁ、救護院で寝てたギド達よりは体力あるつもりだけど…、難儀は難儀よねぇ。もぐもぐ」

 

アルス「確かに身体がなまってる感じはするな。クチャクチャ…」

 

 

ギド「戦闘に関してはトレーニングしていたつもりだったが、走るにおいてはここまでなまってるとは…ラミザリアとミリアムと互角とか、男子のメリットは何処に行ったんだ…もぐもぐ」

   

 

ラミザリア「もぐもぐ…うまし」

 

 

ギドのパーティは各々の話をしながら各々の食事を摂る。ギドはミナトの町名物雑穀おにぎりを3つ平らげた。

 

雑穀おにぎりとは…大麦、偽麦、黒豆、米、粟、黒胡麻、塩を混ぜ混んで炊いた雑穀のおにぎりで、単体で食べるとまずい偽麦も高級品の米と黒胡麻で下地の補強と風味付けをすると高級品のように味わえると言うアイディアから作られた。 

 

 

そんな中、ラミザリアの背嚢から白い塊が飛び出す。

  

エチケット君「もきゅ!」

 

ラミザリア「おはようエチケット君!」

 

おもむろに脱ぎ出したラミザリアは、辺りを見回すと、目が合ったギドとアルスに遠慮して、ギド達より1m程後ずさり、エチケット君に接して排尿する。

 

ラミザリアはぼへーっと口を開けてギド達を見ている。

 

 

ギドは思った。ラミザリアは羞恥心が無いと言うべきか、そもそも幾つか人間として育っているべきものが足りない。これ迄、人と接すると言う事が全く無かったのだろうなと。

 

 

アルスは思った。ラミザリア可愛い。アホ面下げて口開けて放尿とか可愛い。何故か申し訳なさそうに3名と交互に目を合わせてるのが可愛い。エチケット君もラミザリア用はリボンのワンポイントが付いていて可愛い。ほんのり茉莉花の香りがして可愛い。むしろエチケット君になりた…いやいや、考えるまい。ゴロツキと同じレベルだ。世の中には心を読む連中だって居るんだ。なんどきも恥ずかしい事は考え(グブブブブブブ…)るまい。ほら、また幻聴が聞こえる…。

 

 

 

ミリアムは口を開けてラミザリアを見ては居たが、何も考えていなかった。

 

   


 

 

そうこうしているうちに各自の背嚢からもエチケット君が飛び出す。

 

エチケット君達「もきゅもきゅもきゅ!」

 

    

ギド「エチケット君か…まぁ夜間に使うならまだしも、昼間背嚢から出てくるのは慣れないな…」

 

 

アルス「ちょっと町中で使うのは禁じた方がいいかもしれんな」

 

 

 

ミリアム「ふいーっ、お、赤銅色」

 

 

 

アルス「走ったからね…ってはしたないよ君」

 

 

何だかんだで用を足す3人であった。 

 

 

ラミザリア「水分は沢山補給した方が良さそうですね。この先100kmくらいに湖がありますので、それまでに飲みきる勢いで飲んでください」

 

 

ギド「物知り情報だね」

 

 

アルス「物知りだ…」

 

 

ミリアム「エチケット君、水分はろ過してくれないの?」

 

 

ラミザリア「!?」

 

 

アルス「!?」

 

 

ギド「……!?」

 

 

衝撃が走る。 

 

 

 

ラミザリア「検討してみます…!」 

     

 

アルス「水分だと……?」

 (グブブブブブブ…!)

 (い…いかん、また幻聴が…!)

 

 

ギド「水分の補給…か」

 

  

 


各自、設計図を組み立てながら…煩悩を振りほどくように…また思考を深めるために…各々の思いで走り出す。

 

 

ゴールまではまだまだあるのだ。

 

 しかし、


この行軍は「あの電柱まで走ろう」が使えない。電柱がないのだ。

 

この行軍は給水ポイントはない。水は持って歩くのだ。

 

この行軍はトイレがない。各員の出した赤銅色の体液が詰まった白いウサギ、エチケット君を背負って歩くのだ。

 

この行軍は若さがもたらしたものだった。

 

 

ギド「あれ…が…湖か…?」

 

ラミザリア「あ"い!…、…」

 

ギド達はそれから9時間走り続けて、ラミザリアの言う湖まで辿り着いた。

 

ミリアム「自然回復+20…死ぬ…」

 

ラミザリア「私も…お願い…」

 

ミリアム「1人1回ね…」

 

ギド「自然回復+20は筋肉痛と言うか…痛みとか熱はあまり取れないんだな。組織の回復と炎症を押さえる程度か…」

 

アルス「水…冷てぇ…暗い…。飲めるのかこれ?」

 

ミリアム「トーチライト!×4」

 

ラミザリア「見えました、濁ってないし、特ににおいもないので大丈夫でしょう。念のために水浄化(プリフィン)を使って飲みましょう」       


ミリアム「水浄化(プリフィン)!」

 

ギド「魚も居るんじゃないか?」

 

アルス「流石にそこまでは見えねぇ…」

 

ギド「飯…」

 

ギドはラミアエキドナ特製の鹿の燻製をかじりつつ噛む顎に力はなかった。

 

アルス「もっちゅもっちゅもっちゅ…もっちゅ…」

 

ミリアム「旨い…」


ラミザリア「うむうむ…うまし」 


◇ ◇ ◇ ◇

アルス「これはヤバい。揺れている…意識が…振り子のように…揺れている…ほら…ほら……」

 

アルスはあまりの眠気から意味不明な実況中継を始める。   

 

ギド「眠い…」

 

ラミザリア「水場はかなり危険です…。寝るならば一応焚き火して見張りを置いた方が良いと思います…」

 

ギド「じゃあアルス…頼んだぞ…1人1時間…3時間後に起こせ…」

 

ギドは力尽きた。

 

アルス「ええ…俺も…無理…ミリアム…頼んだぞ…」

 

アルスは力尽きた。

 

ミリアム「じゃあ見える範囲で薪を集めてくるから、ラミザリアちゃんは寝てていいよ!」

 

 

ラミザリア「きゅう」

 

ラミザリアは力尽きた!

 

 

ミリアム「足が…痛い」

 

ミリアムは湖の周りにある乾いてそうな木を4~5本拾い集め、慣れた手つきで火をつけていく。

 

ミリアム「少し横になろう…ダメだ、いや……3分だけ……呼吸5回分だけ目を閉じよう……、、、、ふぅ。5回呼吸する間はセーフだったからもう5回……、……、……、……、……、出来たから次は6回………………………………………………」

 

パチッ、

 

ミリアム「あぶねぇ……!」

 

どれだけ時間が経ったのか分からなかったが、焚き火のはぜる音でミリアムは目を覚ました。あたりを見渡すとパーティーメンバーがハイドレザーコートとマントにくるまりながら寝ている。誰も獣には襲われていない。


 

ミリアム「こ…こりゃいかん。ラミザリアちゃん起きてー、」

 

ラミザリア「うみゅう」

 

ミリアム「見張って~~……」

 

ラミザリア「はぁい……」

 

 

ラミザリア「これは……眠い。裏技を使おう」

 

 

ラミザリアはカバンからエチケット君を取り出してギド達の四方に置く。

 

ラミザリア「モードチェンジ!見張り!体力がなくなったら私を起こしに来てね!」

 

ラミザリアの使った裏技とは、本来は持ち主の尿意と便意に視点を絞っているエチケット君の視点を広範囲に展開し、見張りに使うと言うものだった。しかし、そもそも体力に不安が残るエチケット君だったため、稼働時間は3時間ほどが限界であった。

 

エチケット君「もきゅーぅ(ご主人たまおきてぇー、お腹すいたよぅ)」

 

ラミザリア「うーん、眠もひ……アルス……アルス起きて……」

 

ラミザリアはアルスの身体を揺さぶっていたが、途中力尽きて上に倒れ込んだ。

 

一方アルスは起きていた。いや、起きた。ギンギンに起きていた故に起きられなかった。

 

アルスはラミザリアが寝息を立てた頃、そっと抱き返して寝かせた。

 

アルスが周囲を見渡すと方々に力尽きたエチケット君が転がっていた。恐らくエチケット君を見張りに酷使させたんだろう。恐らく6時間は寝ている位の感覚があるから推論は事実なのだろうと思った。

 

俺はエチケット君を回収して各自の鞄に放り込む。ギドのは無臭。ミリアムは何か臭い。俺のは分からないが……ラミザリアのは良い匂いがする。茉莉花の香水を使ってるのか……柔らかくふわふわした匂い……(グブブブブブブ……)イカンイカン、また幻聴が聞こえる……!そもそも匂いを嗅ぐのは片付ける際に仕方ない事で…いやその…

 

 

アルス「心頭滅却さらば煩悩!」

 

アルスはよく分からない幻聴に囚われていた。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

アルス「少し明るくなってきたか……よし」

 

アルスは、周囲の様子を確認して、ギドを起こす。

 

ギド「う……ぉ、朝か?もしかして10時間くらい寝てる?」

 

アルス「そうだ、ラミザリアが長い時間見張ってくれたらしい。俺は狩りに行ってくる。少しの間見張っててくれ」

 

ギド「わかった……」

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

アルスは1時間と経たないうちに旅行鳩を20匹と偽麦の束を抱えて帰って来た。

 

筋肉記憶(マッスルメモリー)虚しく2週間の入院はギドとアルスの筋力を低下させ、ミリアムとラミザリアに抜かれる迄となった。見張りもろくに出来ないほど疲れて、女性陣に仕事を押し付けて先に力尽きた情けない男達に出来る事は朝御飯を作る事だけだった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

偽麦粥(塩)

焼き鳥(塩胡椒)

 

偽麦の殻を1つ1つ丁寧に剥き、100g程の量を確保する。そしてギドの家から持ってきた小さな鍋で鳩の骨と湖の水を煮た出汁に入れて半時間程火を通す。それだけだと、ボソボソして食べられない程美味しくはない…のだが、ここは出先。しかたがない事だった。

 

焼き鳥は塩胡椒のみの味付けだが、察する通り偽麦よりはかなり美味い。

 

ミリアム「いただきまーす!」

 

ラミザリア「いただきますー」

 

ミリアム「焼き鳥ウメェ」

 

ラミザリア「うまうま」

 

ギド「量を食べてないからな……何と言うか、美味い。偽麦ですら食べられる……なんだこれ……」

 

アルス「やっぱり足りないか……鳩20匹もあれば普段なら足りるのだろうけど……今日は無理だな」

 

ミリアム「偽麦のお粥は飲み物だと思えば何か栄養ありそうな感じな……温かい。うん、飲める」

 

ラミザリア「もくもぐ」

 

ギドとアルスは締めた鳩の肉を次々と串に刺して焚き火にくべていく。今日は女性優先。

 

 

ギド「さて、今日は……どうする?走るか?」

 

ミリアム「疲れたー」

 

ラミザリア「じゃあ歩きますか…?」

 

ミリアム「昨日は一杯寝たし、少しなら走れるよ」

 

ラミザリア「じゃあ少しだけ走りますか……?」

 

アルス「じゃあ少しだけ……(チラッ)いや、走るか」

 

ギド「え?今日も走るの?この足で?」

 

ラミザリア「このままのペースで走り続けると今日の晩遅くか明日の朝までには町に着くと思います。歩けばもう一晩かかるかも知れません。道なりにいけば拠点からハジメの町までは大体の距離として385km位です。そして今回は直線距離で進んでますから…走る距離は330km位ですね。昨日150km近く走ってますから…あと半分とちょっとですね」

 

ギド「半分とちょっとと言われてもな…。まぁでも精霊祭今日だから、行けるなら今日中には行かないといけない…所もあるよなぁ」

 

ミリアム「馬車代ケチらなきゃ今日の昼には着いてたんだよなー」

 

アルス「行くか。行けるところまでは走ってみよう」

 

 

ギド「うう……塩が美味い。じゃりじゃり……」

 

一向は必要な栄養には足りない食事を終えて、水筒に水を補給して走り出す。そこに言葉はない。

 

 

ペンペン草のエッセンスを含む荒野をただひたすらに走り抜ける。

 

一向は目すらも開けていない。30秒に1度、転ばぬように前を確認する程度。互いの気配を便りに進むだけなのだ。40km以上の距離を走る所謂ウルトラマラソンでは、脳にとって視界情報はほぼ不要なのだ。足を前に出す事だけをただひたすらに……行うのだ。

 

 

己との戦い。

 

漢の塾に通う猛者を彷彿とさせる延々の行軍は昼頃、湖から60km地点にて休憩を迎える。

 

自身の書いた小説ですが、改めて読み直すと酷い文章ですね。


先輩方の意見を入れつつ少し修正しました。修正箇所には★か☆をつけてあります。★は僅かに話が変わってくる程の修正(13m→14m等、読み飛ばしても問題ないが、気になる人は気になるかもしれない程度の修正)。☆は語尾や誤字、多少の表現の修正のみの修正。


が、しかし、あとで文章の大幅な訂正を行わなければならない感じが致します。書いているときは分からない文章の繋がりが怪しい部分や、間を開けた方がいい場面や、分かりずらい表現や、情報を詰め込みすぎな部分が沢山ありました。


しかし、訂正ばかりでは話が前に進まないので、まずは完結目指して進めていきます。


こんな小説ではありますが、今後とも宜しくお願いします。

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