薬草ヶ丘ダンジョン攻略その3
洞窟より出たギド達は…適当な敵と戦った記憶と、ストレイアントの甲殻、ぴかぴか石、鉱石モドキ、宝箱よりドロップしたと言うていの金のどくろを手に持っていた。
ギド「金のどくろだなんて…偶然にも程がある…よな。フツー欲しいものが調子よく宝箱に入ってるか?」
ミリアム「あとは「血墨」と「羊皮紙」か「獣皮紙」…と「蝙蝠の羽ペン」か。どちらかと言えば簡単な物しか残ってないよ…!」
ギド達は町へ向かい、程なく酒場へと着く。挨拶をしつつ商店街に向けてソリを走らせる。その後は10,000Gかけて保存用の大瓶を10個、小瓶を20個買い上げてソリに載せる。そのソリを曳いて裏の山へと帰っていった。
町を出る際にカラスの魔物がテーブルマウンテンに飛んでいるとの噂が耳に入った。カラスの魔物…。さて何だったのだろうか?一行は一向に答えがでない。全ての答え合わせは明日の昼に行われる。
ヴァーテブラル「グブブブブブブ…。今回は正も負も『召喚術』が文明の中心になりますか…面白い。完全に次元を超越した召喚術は…初めてじゃないでしょうか…。サンプルは是非とも収集したいですね…グブブブブブブ…ブァブァハハハハハハ‼」
薬草ヶ丘の地下洞窟の闇の奥深く、不思議な笑い声が鳴り響く。
◇ ◇ ◇ ◇
夕暮れ時、ギドパーティーの拠点にて
ギド「ただいまー、おかえり」
アルス「おかえり、ただいまー」
ミリアム「おかたー」
ラミザリア「おかただ」
ミリアム「拠点もそろそろ慣れて来たねー、家具もあるから結構家らしくなったよー!」
アルス「そろそろちゃんとしたトイレも必要かな」
ラミザリア「では!狩りに行きましょうか!」
アルス「狩り…?」
ラミザリア「まだ時間もあるし…トイレを作りましょう!狩りです!」
ギド「狩り…?」
ラミザリア「はい!狩りです!魔物か最悪生き物で構いません!あとスライムの核ですね!」
ミリアム「ああ…」
アルス「やっぱり…」
ギド「アンデッド・フレッシュゴーレム・トイレ…か…」
…その日の狩りは、皆のやる気がなかったからか、そもそも元々の山にスライムや動物の獲物が少なかったからかはわからないが、動物も魔物も狩る事は出来なかった。本来は秋は恵みの季節なのだが…ある意味での不自然さを感じた事も確かだった。
ミリアム「蜂蜜を瓶に移したからポチにキラービーの甲殻食べさせちゃうよー」
ラミザリア「お願いしますー」
ギド「手伝うか?」
アルス「ああ、頼む。そろそろラグ無しだと洞窟の中が寒くなるからな。床に直接寝るとか10月以降は地獄になるぞ…」
ギド「しかし、なんか良いパーティーになったなぁ、と言うかラミザリアが慣れて来たね」
アルス「そうだな。あいつが一番変わったな」
ギド「はじめは…控えめに言っても肥溜めに落ちたゾンビだったもんな」
アルス「だいぶ綺麗になった」
ギド「」
アルスがラグを織る手を休めて顔を上げると、ニヤニヤした顔をしたギドを確認する。一瞬の逡巡の後、対抗してアルスもニヤニヤした顔をしながらにらみ合う格好となる。
ミリアム「何か最近あいつら仲良いよね」
ラミザリア「最近知り合ったばかりではありますけど、仲良いですよね」
ミリアム「私達も仲良いよね!?」
ラミザリア「は…はい!」
ラミザリアとミリアムも精一杯の笑顔でにらみ合う。
……
テイムテイム「あれぇ……!」
ラミアエキドナ「何かしら……」
テイムテイム「声かけて頂戴ぃな」
ラミアエキドナ「最初はグー」
テイムテイム「ジャンケンチョキ」
ラミアエキドナ「ジャンケンチョキ」
テイムテイム「あいこでしょ!あいこでしょ、あいこでしょ、あいこでしょ!」
ラミアエキドナ「あいこでしょ!あいこでしょ!あいこでしょ!ええい!抜け!勝負だ!」
テイムテイム「ファイアボール!」
ラミアエキドナ「魔法は反則!」
テイムテイム「ラミィに武器で勝てるわけないでしょお!」
ラミアエキドナ「出でよフォーシスターズ!!!遊んでやれッ!」
テイムテイム「三銃士ッ!蝋人形共奏楽団十二姉妹ッ!数の暴力でやっちまぃなさぁい!」
…………
ギド「お前の姉ちゃんとテイムテイムって仲良いね」
アルス「そうだな」
ミリアム「なんだなんだ」
ラミザリア「喧嘩するほど仲が良い……でしょうか?」
ミリアム「そこだっ!やっちまぇー!」
午後の怪獣大決戦には多少及ばないなりに中級冒険者同士の戦いを間近に見られたギド達であった。
◇ ◇ ◇ ◇
夕食の場にて
◇鹿のバターステーキ
◇牛干肉と玉葱と唐辛子のスープ
◇ライス
◇塩キャベツ
◇白菜の漬物
◇偽麦のぜんざい
ミリアム「エキゾチックなメニューですねー!」
テイムテイム「さっきまでは温かったんだけど、ごめんねぇ」
ラミアエキドナ「お見苦しい所を…」
アルス「いつもだな」
テイムテイム「よくわかってるわぁ…」
ラミアエキドナ「ほぅ……」
アルス「いやその……」
ギド「本日はお日柄もよくー、えー、あー」
ラミザリア「いただきまーす!」
ラミアエキドナ「……まぁもっと冷めたら困りますからね。いただきます!」
その掛け声の後、皆で一斉に食べ始める。何故夕食が遅れたのかは定かではないが、飢えた獣が食卓にいるのは確かな事だった。
ラミアエキドナ「じゃあ今日の質問は…」
アルス「俺も魔法が使いたいんだが…俺に魔法の素質はあるか?」
ラミアエキドナ「どんな魔法が使いたいの?」
アルス「弓の威力を上げたい。どんな形でもいいんだが」
ラミアエキドナ「もう既に魔法による補正してるって知ってる?」
アルス「へ?」
ラミアエキドナ「近距離・中距離・遠距離のどれが一番命中率が高い?」
アルス「遠いほど命中してる…気がする」
ラミアエキドナ「それは風のフォローで命中させてます。近ければ近いほどその補正がかからないか微妙にしかかからないので、本来の命中率で命中させてます。だからアルスは弓自体の腕はあんまり良くないのよ」
テイムテイム「うーん、多分風魔法のフォローで矢を調整してるのかな?それは無意識でやってるのかな?無意識に魔法使ってるのはよく有る事だよぉ。これから追加で威力を上げるなら矢に何かしら付与するか、アルス君の力を増幅させるしかなぃわねぇ」
ミリアム「触媒無しで魔法…なんて私の立場ないじゃない!」
テイムテイム「あなたは元々あんまり向いてないよよぉ。それであれだけ使えてる事が凄いのよぉ」
ミリアム「MP増やすのにはどうしたら良いんですか!?」
ラミアエキドナ「まぁ、1,000,000Gくらい払って神官様みたいな人にチャクラを解放してもらうか、自分で解放してみたら?」
テイムテイム「もしくは消費しまくって徐々に高めていくしかないわねぇ。私はそうやって上げたわよぉ」
ミリアム「多分、テイムテイムさんは私の100倍以上あります!」
テイムテイム「残念、多分500倍は差が開いてるわよぉ」
ミリアム「え"」
テイムテイム「まだアルス君の方が断然多いもの」
ラミザリア「お2人は何専門のパーティーだったんですか?特化したところは?」
テイムテイム「説明宜しいかしらぁ?おませさん」
ラミアエキドナ「狩り専門ですね。動物を狩ったり魔物を討伐したりの夜営なんかが得意ですよ」
テイムテイム「こんな程度でいいかしら?」
ギド「はい、助かります。あと、明日は魔物の血から血墨を作りたいので、テーブルマウンテンに行ってみたいなーなんて思ってますが…良いですかね?」
テーブルマウンテンの話を聞いた途端にラミアエキドナとテイムテイムの顔に嫌がるそぶりが見られる。
ラミアエキドナ「まだ早いですよ」
テイムテイム「私達ですら危ないと思う事があるのよぉ?まだ暫くは」
ミリアム「大丈夫ですよ!いざとなったらベノムも…あれ、使っちゃったっけ?」
テイムテイム「ベノム使っちゃったのぉ?」
ミリアム「そう言えば今日使ったな…。あれ、ファイアアローも5つ無くなってる!結界も…!使ってたぁぁぁぁ!」
ギド「あ、そういえば撒き菱と閃光玉も使ってるな」
テイムテイム「結界にファイアアローにベノム…ねぇ…。撒き菱と閃光玉…これを忘れるか」
ラミアエキドナ「明日は昼までにテーブルマウンテンに行きましょう。但し、絶対に離れない事。そして、明日は朝御飯こっちで食べる事。そこで、明日の狩りのプランを話します。いいですか?よければ質問タイムに関しては終わりで」
ギド「いいの?閃光玉無しで…」
テイムテイム「今日は疲れたわぁ…」
ラミアエキドナ「詳しくは明日話しますよ」
◇ ◇ ◇ ◇
ギド達は満足に食べきった夕食を片付ける。6人分の夕食を作ったラミアエキドナの拠点は相当に暖かかったが、外はもうそろそろ10月になる頃で肌寒い季節となった。
ギド達は就寝の挨拶をした後にラミアエキドナ達の拠点を出てギド達のに帰る。やはり、寒い。ラグもそろそろ必要だ。凍死しないための設備とその稼働準備も必要になるだろう。とりあえずラミザリアはトーチストーンを1つ作成して、拠点のY字路の中心点に設置する。洞窟内は暗い。出入り口はポチ達が2体体制で見張っているので安心ではあるがもう少し体制の強化が必要だと感じられる季節が来る。それは遠い事ではなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
ラミザリア「ミリアム、気付いた?」
ミリアム「気付いた。ラミアエキドナさんとテイムテイムさんは嘘をついてる」
ラミザリア「アルスやギドは気付いてるかしら」
ミリアム「多分…気付いてると思う。でも、何でだろう」
ラミザリア「これまでも親切にしてくれているし、直接危害もなさそうだから……明日の夜にでも思いきって質問してみましょう。おませさんって言葉の意味を」
ミリアム「おっぱいの大きい人の事じゃないかな……精神的おっぱい」
ラミザリア「ミリアム、今日はなんだか疲れているわ。休みましょう」
ミリアム「ふへへへへ……」
壊れぎみな一日は終わり、謎の尻尾は更なる謎を釣り上げた。




