薬草ヶ丘ダンジョン攻略その1
仕事の都合で絶食5日ありまして、ぐったりしておりました。長い間開きましたがまた宜しくお願いします。
ギド「今日は薬草ヶ丘に行こう」
ミリアム「うっす」
ラミザリア「くぅ」
世界はまだ闇に近い色に包まれている早朝、ギド達は早起きをして居た。連日朝から晩まで働き詰めと言うか動きっぱなしのパーティの中でも、女性陣は少し疲れが出てきているようだ。しかし男性陣は体力があるので、アルスは竹の籠作り、ギドは逆Z斬りの自主練習を行っていた。
ギド「昨日少しアルスと話したんだが、朝に椎茸取りに行って、籠一杯とソリに乗るくらいに椎茸を採ってだな、町に売りに行くってのはどうだろうか?今30,000Gと言う大金を持っているので、それに幾ばくかの追加を行えば多分安い魔導具なら手が出るかもしれん。ここいらで装備の補強を行っておきたい。欲しい物や展望があったら今発表して欲しい」
アルス「私は複合弓が欲しい。複合弓はそれだけで威力が上がるからな。多分50,000Gくらいで買えた筈。でも雨の日であったり、力が足りないうちは使いづらいし、もう少し後でも良いかな」
ミリアム「触媒は拾った物で…大丈夫!『知識の書』の作成を急ぎたいかな。確か東の山はインプが居るらしいので、チャッチャと狩って早く魔道具を使いたい」
ラミザリア「前回手に入れた大天使の羽根で反魂のアイテムが作りたいので、必要な上位素材を手に入れるために皆さんの戦闘能力を重視して上げて欲しいです。私の強化としては軽量化の魔法回路のある魔道具の鉄槌が欲しいです」
ギド「分かった。今の意見は買い物の際に参考にする。ミリアムの意見については、次の冒険の行き先を東の山に設定しておくと言う事で大丈夫か?」
ミリアム「嬉しいっす」
アルス「じゃあ椎茸畑に出発だな」
ギド達は竹の籠を載せたソリを曳いて椎茸畑に向かって歩き始めた。椎茸畑の椎茸も残り半分近くになっている。次に生えてくるのは1週間は先だろう。まずは取り尽くして次に生えるための面積を増やそうと言う作戦だ。
今回はソリがあるため、ポチ達は文字通りお留守番となる。ポチ達には雨が降ったら洞窟の中に椎茸を運んだり、拠点の警護等のお仕事が与えられていた。
さて、椎茸畑での事だか、今回も無事に荷物1杯になる程の量を手に入れて、山を下る。その際にミリアムの触媒のキノコも多少見つかるのが利点でもある。そろそろ相当な数のキノコストックがある。
前回オークを引き摺って町まで行った時は約2時間程かかったが、基礎体力の上がっている上に、ソリを引く仲間…ラミザリアを足したパーティーになっているので、1時間と幾らかの時間で辿り着いた。
そして問題なく卸売屋にて椎茸を販売する。あれだけの量なのだが、越冬の保存食として需要が沢山あり、あっという間に売り切れてしまうらしい。パーティーは椎茸畑の全部の椎茸を使って、今回は切り良く10,000Gを獲得した。数日したら椎茸も生えてくるのでまた収入があるだろう。
ギド達は間髪入れずにソリを引きつつ薬草ヶ丘に向かう。今日はキラービーを全滅させるくらいの勢いで狩り尽くす予定なのだ。蜂蜜は保存食にも蜂蜜酒の原料にも薬の原料ともなり、なにより甘さが決め手となり需要が高くいくらあっても足りない物ではあった。
余談ではあるが、ミナトの町では薬草ヶ丘が有るために比較的安く流通している。これをアメリア首都の卸売りに持ち込むと倍以上の値段で売れるが、道中はかなり厳しい。
話がそれた。ギド達は昨日と同じくアルスの弓による先制から、前衛のギドが「集中陣」と名付けた空間把握能力と素早い斬撃を組み合わせた技を用いて殲滅して行く。もしアルスの側に回り込んだ個体は、ミリアムとラミザリアの竹の杖で叩き落として行く。
今回の蜂の巣の襲撃では、数の多い巣を攻撃する事もあり、ミリアムとラミザリアの出番もあった。アルスはキラービーが接近しても余所見や目配せすら行わず、ひたすらに弓を射続ける。右から接近したキラービーはラミザリアのフルスイングで地面へと落とされ、首の辺りを強く突かれ絶命する。左から接近したキラービーはミリアムが魔法効果の付与された竹の杖で殴る。マナグルと名付けられたこの付与効果は前述の衝撃の魔法とほぼ同じ効果だった。衝撃の魔法はビンタ程度の衝撃を与えるものではあるが、女性とはいえ、人間が竹の杖を使って叩く衝撃にさらに付与されるので、キラービーの様に軽いモンスターなら十分に吹っ飛ばし絶命させる事が出来た。しかし、このマナグルですらもMP不足で連続使用が出来ないのだった。
ギド達は3つ目の巣のキラービーを倒し終わった時点で、一旦町に戻る事を決意した。ソリも籠も山盛のキラービーの素材で1杯だった。
70匹
◇虫の羽根×112枚
◇昆虫の顎×60
◇毒針×70
◇蜂蜜×50cc×71
ミリアム「あれ?」
ギド「どうしたミリアム」
ミリアム「これ、ダンジョンじゃない?」
薬草ヶ丘の植生はどこに行ってもほぼ同じ草がまばらに生えているので、奥の方は、キラービーを狩る目的でもない限り入る機会のない場所となる。それで発達したのだろうか、真面目なダンジョンと言えるようなものが出来上がっていた。
ギド「ここは、探検してみたいよな…!多分、カラスの魔物も居ないし、例の骨の件も関与してないと思う」
アルス「そう言えばカラスは何だったんだろうな」
ミリアム「とりあえず町に行って荷物を置いてこようか!何か楽しみだねぇ」
ギド達は町に向かってソリを引いた。予想通りの戦果と手応えにかなりの満足感をもっての凱旋であった。町に入ると住人が手を振ってくる。蜂蜜が出回るのは町にとっても良い事なのだ。
◇ ◇ ◇
~冒険者の酒場にて
酒場のマスター「ほう、キラービーを無傷で狩れるようになったのか。あの2人の指導が効いてるみたいだな」
ギド「まだまだです。でも、ラミアエキドナさんとテイムテイムさんの指導はかなり的確で、励みになります。もっと強くなって、いつかは町にとっても役に立つようになりたいですね」
アルス「そうだな。最終的には人の役に立てるくらいの自分ってのになりたいな」
マスター「まずは自分達のおしめがとれてからだな。今日はこれからどうするんだ?」
ギド「今日はもう一度薬草が丘に行って地下ダンジョンに挑戦してきます」
アルス「もしよかったらここにソリの荷物を置かせてください」
ギド「あとこの蜂蜜は買取限界まで売ります!」
マスター「まず、蜂蜜は50ccの20個を80Gだから、1,600Gだな。そして、荷物を置いてくんならせめて食事くらいしてもらおうか」
ギド「ありがとうございます!では1,600Gで見繕ってください!」
マスター「じゃあ柔らかい方のパンと酒場特製シチューとピクルスと…あとオークの干し肉だな。たまにはオーク食べてみろ、これ多分お前達が狩ったオークだぞ」
ギド「そう言えばグリントさんがオークの干し肉がどうとか言ってたな…」
ミリアム「魔素中毒に気を付けて1人1枚までですよー」
アルス「俺達そんなに弱くはないと思うぞ」
ラミザリア「いただきましょう…」
◇柔らかい方のパン×4
◇酒場特製シチュー×4
◇オークの干し肉×4
◇キュウリのピクルス×4
◇ ◇ ◇ ◇
ギド「まぁ何となくグリントさんの言った事は分かる気がする。自分で狩った獲物を他の人が食べるかもしれないってのは…誰かの役に立っている感じはするな」
アルス「そうだな。蜂蜜も…いや、ここに売った物は薬屋に卸されるんだったか。家庭で食べられる用にはあの卸し屋に売らないといかんか」
ギド「まぁ、ここの買取り以外は触媒や薬の素材、自分達の食料優先で使っていこう。冬に向けて今のうちに溜めておかないとな。さて、時間もないので、ダンジョンへ急ごう。ミリアム、今変換されている魔法を教えてくれ」
ミリアム「取り敢えず手持ち魔法の整理と追加した魔法の説明。数日魔法使う機会が無かったから貯まってるよ」
◇ヒートボディ×10 get‼
赤唐辛子-50
火炎草-10
◇結界+3 get‼
蝸牛の殻-10
魔術キノコ-10
亀の甲羅-1
◇ヒートボディ…冷えた身体を温めて動きやすくする魔法。特に末端に作用する。寒さによる悴みを無くし、運動能力も数%程上がる。効果は5分ほど続き、以降効果は自然に下がっていく。
◇結界+3
…新聞紙3枚合わせた程度の結界を張る。侮るなかれ、3枚でもまとまって1枚になっているため、かなりの効果。小さめのモモンガが滑空してくるのを跳ね返す力はある。
・攻撃魔法
ファイアアロー×5
ファングボルト×4
ビーストバイト×8
・回復魔法
消毒×1
自動回復+4×2
・冒険補助
ダンジョンライト×1
・戦闘補助
ヒートボディ×10
結界+2×1
結界+3×1
ミリアム「ヒートボディは10月以降かなり役に立つし、結界+3あたりはちょっとまともな感じの防御魔法だし、そろそろ良い感じに素材をゲットし始めてきたんじゃない?」
ギド「その調子だと知識の書の作成を急いでも良いな。まぁ、今日はまずダンジョン攻略だな」
アルス「良かったな、ミリアム。ダンジョンライトが役に立つぞ」
ミリアム「もぅ、ダンジョンライトだけじゃあちょっと暗いんだからね!」
ラミザリア「トーチストーン1個だけ作りましょうか…!」
ミリアム「うーん、なんか足りない気がするけど…まぁ良いか」
ギド「良くないよ、とりあえず今回は5,000Gでランタンを2つ買ってから行こう。雑貨屋で売ってた筈だ」
ギド達はその後直ぐに雑貨屋でランタンを2つ買い、その足で薬草ヶ丘に向かった。トーチストーンは結局作らなかった。
ランタンは木の枠に透明なガラスを嵌めて作られており、ちょっと落とした程度では割れなさそうな頑丈さは感じた。油は3時間分くらいはサービスしてもらった。底に予備の芯が収納されており、半年近くの普通使用に耐えそうな物だった。
◇ ◇ ◇ ◇
薬草ヶ丘に着くと、天気が崩れ始めており、雨こそ降ってはいないが、空を分厚い雲が覆い始めていた。
ギド「ランタンはラミザリアとミリアムが持って右と左をそれぞれ照らすようにしていてくれ。あと、ミリアムはダンジョンライトを先に使っておいてくれ、隊列はいつものまま、私が先頭で右左にミリアムとラミザリア。背後にはアルスで頼む。もし宝箱があったらこのパーティーが出来てから初の宝箱だ。盗賊らしく開けてみたい」
ギド達はギドを先頭としてダンジョンへと入っていく。ダンジョンはまず1本の大きな道が続いていた。道すがらにぽつぽつと別れ道があるようだ。
ギド達はダンジョンライトで仄かに発光しているダンジョンの壁にランタンの光を当てながら進んで行く、初めの曲がり角に差し掛かる。曲がり角は3m程の通路で先は行き止まり…だったが、鉄の塊らしき物が落ちていた。
ギド「これ、ドロップアイテムだな。地中に埋ってた何かが錆びた塊」
アルス「とりあえず拾ってどんどん進もう」
ギド「次の曲がり角が来るまで大きな道をひたすら進んでみようか、あの曲がり角は先がありそうだ。道がちょっとでかい気がする…」
ギドの言う曲がり角に着くと、確かに長そうな通路になったいた。曲がり角へと入ると、先が湾曲して左に左にと曲がらされていった。10m程歩くと行き止まりには…特に宝石でもなんでもない石が置かれていた。
ギド「まぁ、持っていくか。万が一って事もあるから鑑定はしてもらおう」
ギド達はその場で隊列を入れ換えて元の大きな道へと進む…。そして、大通りに出た瞬間、足元にストレイアントが飛び出してきた。
ギド達は急な不意討ちと足元の視線外からの攻撃に一瞬躊躇した。その隙をストレイアントは逃さない。ストレイアントはミリアムの足にかじりつく…!しかし、中古ではあるが、革靴の上からなのでミリアムまでダメージは通ってないようだ。
ギド「逆Z斬り…と言う名の足払い!」
ギドはミリアムの足にかじりついているストレイアントの硬殻に向かって反復練習したZ斬りの動きを試す…。まずは足払い…っとストレイアントを横に薙ぐと、盗賊の短剣は硬殻に弾かれて危うくミリアムの足を斬りそうになったので咄嗟に身を引いた。そこにラミザリアとミリアムの竹の杖の一撃が襲いかかる。ラミザリアは竹の杖をミリアムの靴に食らい付いているストレイアントの顎目掛けて強烈に突きつける。勢いでストレイアントの方顎が割れ、ミリアムの靴が脱げる。
ミリアムは、片足こそ素足ではあるが、踏ん張って攻撃体勢をとる。ストレイアントの頭にマナグルを発動した竹の杖を叩きつける。するとストレイアントの頭が割れて、ひとまずの戦闘継続能力は奪えたようだ。
ギド「すまん、ミリアム。危うく斬るところだった」
ミリアム「もー、ビックリしたよー。いつものようにスパスパ斬っちゃうかと思ったら、弾かれちゃうんだもの!でも靴があって助かった。なかったらこれかなりの怪我してたよ…!」
ラミザリア「大丈夫ですか?」
ミリアム「うん、ちょっとビックリしたのと靴に穴が開いたのと、まぁ…血は出てないくらいに擦りむいたくらいかな。うん、運が良かった!」
アルス「でも、ギドの短剣を弾くってのは結構不味いな。矢なら貫けるかも知らんが…、打撃武器も一応持ってて良かったな」
ギド「そうだな、次に遭遇したら防御に回るから、アルスの弓かミリアム、ラミザリアに突いて貰おう」
ラミザリア「了解、確かに棒の方が対応しやすそうですね。身長低いですし…」
ギド「じゃあ素材はあとで回収するとして先に進もうか」
ギド達は更に前へと進む…すると道が二股に別れており、右側の道からは何かが動く音がしており、魔物がいる事を暗に示しているようだった。




