煌めく謎と預言者の遺言その2
薬草ヶ丘から拠点のある裏山までは灌木と所々の膝までの雑草の生える草原と荒れ地の中間のような平地の上を歩く。草むらや灌木は避けて通るのだが、何となく荒野を歩く道程は安定してきた。
裏山に入ってから、裏山の中腹にある拠点への道程も慣れてきた。はじめは銀杏黄葉の絨毯ではあった、そこを抜けて奥地に行けば行く程麒麟蔓の生い茂る魔素のある山となり、そこを抜けると足元を草や木の根の支配されている普通の山となる。
朝晩2回以上2組のパーティに踏み固められて、その行き帰りは獣道と言う道になってきた。
ギド達のレベルアップはラミアエキドナとテイムテイムのアドバイスによるものではあったが、その急速な進化と獲た力の秘密はここにあった。
まず、ここ数日間のギドは足場の悪い山道を皆の先頭に立って行進していた。それは、後ろのパーティメンバーを気遣いつつ、索敵を怠らず、また麒麟蔓等の生い茂る蔦や木の枝等の障害物を切り開きながらの…ながらながら行動だった。
更にギドはクランのリーダーであり、パーティのリーダーなのだ。普段から気を擦りきれるほど使っている。
その気遣いの気を周囲に展開し、冷静に敵の動静を把握し、適切に行動した結果が今回のレベルアップに繋がったのだ。そして、その冷静で周囲に気を配る戦闘方法はギドを通じてパーティメンバー全員に伝わった。ギド程ではないにしろ、こと戦闘に対しては同じ様な戦闘数回分以上の能力向上となった。
◇ ◇ ◇
一行はまだ陽の残ってる内に拠点に辿り着いた。入り口ではポチACが出迎えた。ポチBDは反対側の裏口の衛兵をして貰っている。
残念な事に…と言って良いのか、ポチ達はまだ獲物は捕まえてないらしい。侵入しようとする者が居ないのは良い事かもしれない。今のところお留守番と、干した椎茸の見張り、雑用のみを押し付けている。
時々ラミアエキドナやテイムテイムが鹿の骨や内臓、鳥の使わない部位等を食べさせたりしていたので、空腹で動けないと言う事はないらしい。
ギド「さて、今日を振り替えると、何だか沢山の事があった気がするな」
ミリアム「本当だよもー」
ギド「とりあえず、午前中の採集公開すると…蝸牛の殻が200個は取れた。あと亀の甲羅も5個ある。何かに使えるか?」
ミリアム「蝸牛の殻と亀の甲羅は結界とか防御力強化に使えるよ!ありがとう!」
ギド「しかし、そろそろ触媒が増えてきて保管場所に困ってきたな。野晒しにする訳もいかないので、1度整理する必要があるかもしれん」
アルス「じゃあ棚を作るか。椎茸もほぼ野晒し干しだし、とりあえず拠点の行き止まりの方に棚を作ろう」
ギド「じゃあ夕飯までは皆でその作業をしようか」
竹細工に精通するアルスはギドに指示を出しつつ細かい調整を担当する。まず、2mくらいに切り分けた太い竹を真っ二つに裂き、切り口を上にして洞窟の壁面に固定して行く。蓋に当たる部分は節毎に切り分けて、小分けに開けられるように工夫する。
ミリアムとラミザリアは松明を持って洞窟内のギドとアルスをサポートした。
右の壁面の上中下、突き当たりの上中下、左の側面の上中下、合わせて9つ、あっという間に壁一面の竹の壁掛け棚が完成した。
アルス「しかし、触媒を大量に保存するのには向いてないよなぁ」
ギド「木箱とか壺とか…ガラス瓶とか欲しいよな」
テイムテイム「はーい、ごはん出来たわよぉ」
出来上がった食事はいつものように豪華だった。
◇鴨肉のステーキ(塩胡椒)
◇偽麦と青菜と卵の雑炊
◇ウサギ肉と玉葱のスープ(塩胡椒)
◇チーズ
◇コールスロー(塩と胡麻油)
ギド「塩とゴ…ゴマ油…こんなにうまい食べ物があったなんて…!」
ミリアム「胡麻油は高級品だよー」
テイムテイム「10cc750Gするのよん」
ギド「高い…!これ20ccは使ってるんじゃない⁉」
テイムテイム「1,500Gよん。仕事が上手くいってて多少はお金があるからお裾分けよぉ」
ラミザリア「おいしい…!」
ギド「偽麦もこんな食べ方があったんだ…」
アルス「偽麦?」
ギド「麦の偽物でほぼ年中穂がなってたりするものなんだけど、秋以外はとにかくボソボソして美味しくない。よっぽど貧乏でない限り食べる事もない…ってもんだが、今は秋だし工夫しだいで食べられるようになるらしいな…うん」
ラミアエキドナ「さて、食べながら悪いですが、今日の質問はなんですか?ゆっくり話していきましょう」
ギド「じゃあ…1つ。ラミアエキドナさんの知ってる短剣技を教えて欲しい」
ラミアエキドナ「質問に答えます。ダメです。以上」
ギド「ダメですか」
ラミアエキドナ「ダメです。あとは自分で編み出してください」
ギド「わかりました」
ラミアエキドナ「質問ならオッケーですが、実技は基本的に教えません」
アルス「じゃあ、薬草ヶ丘あたりから暫くカラスのモンスターみたいなものが飛んでたが…あれはなんてモンスター何だ?こんなのはいいんだろ?」
……………
顔を見合わせるラミアエキドナとテイムテイム。
テイムテイム「カラスの鳴き声よりちょっと凶悪な感じで…カラスっぽいやつ?」
アルス「そうそう、沢山居たんですが…」
テイムテイム「それは…告死鳥か…闇カラス…かな?」
ラミアエキドナ「告死鳥だった場合は大変な事になるわね」
ラミザリア「告死鳥はカラスではありませんよ、ハーピィの亜種です。だから違います。あれは大きなカラスでした」
テイムテイム「じゃあ闇カラスじゃなぁい?」
アルス「それはどんなモンスターなんだ?」
テイムテイム「闇カラスは山奥で暮らす強めのカラスよぉ。ただ、滅多に人里には出てこないのよねぇ…」
アルス「うーん」
ラミアエキドナ「新種のモンスターって可能性もあるかもですね」
アルス「じゃあ明日…も薬草ヶ丘に行ってみるかなぁ…」
ギド「まぁ、冬に向けて蜂蜜貯めておきたいし、行こうじゃないか」
ラミアエキドナ「…らちが明かないので、ここまでにしておきましょうか。では次…」
ミリアム「ラミアエキドナさんとテイムテイムさんは昨日と今日何処で何をして居たのか聞いても良いですか?」
ラミアエキドナ「私たちの事?変な事を聞くのね」
テイムテイム「言って良いのぉ?」
ラミアエキドナ「どうぞ、おませさん」
テイムテイム「私達は昨日も今日もバッカスの洞窟の真上、テーブルマウンテンで狩りをしてるのよぉ。鹿やウサギや鴨もあの近くに居るのぉ。もう少ししたらあなた達もハーピィ狩りやマンティコア狩りやってみたらぁ?」
ギド「いや、ハーピィだのマンティコアだの、今の状態で行ったら瞬殺されます」
アルス「しかしミリアムは何でこんな事を聞くんだ?」
ミリアム「いゃあ、中級冒険者ってどんな感じかなぁって…」
ラミアエキドナ「まぁ、人並みの生活が出来てはじめて中級ですから。皆さんはまだもう少しですね」
ラミザリア「私からは…。テイムテイムさんの指輪について聞きたいですが…」
テイムテイム「これの殆んどは使役の指輪と霊宿の指輪でぇ、使役の指輪は人形を使役する補佐を行うのよぉ。霊宿の指輪は道具を精霊体にして保管する指輪でぇ、合奏団の楽器なんかを保管してるわぁ」
ラミザリア「私が使役しているアンデッドをコンパクトに持ち運びできそうな魔導具はありますか?」
テイムテイム「それは二回目の質問になるんじゃないかなぁ?まぁ、一回目の質問も同じ目的で聞いたなら追加で認めても良いかなぁ。ギド君の分も含めてぇ」
ラミザリア「じゃあ…お願いします」
テイムテイム「結論…私は知らないわぁ。霊宿の指輪は道具を入れる時にその道具は粉々に破壊する事になるから、生き物は宿せないし、無理よぉ。霊宿の指輪みたいに物や生き物を軽量化して持ち歩く魔導具は…時空魔法クラスだから、そもそも販売はしてないんじゃなぁい?
触媒に人の骨を持ち歩いて、ちょくちょくスケルトンを召喚したりするしかないんじゃない?人に見付かったら後ろ指差されるだろうけどぉ」
ラミザリア「わかりました、ありがとうございます」
ラミアエキドナ「あなた達は今日はどうしてました?」
ミリアム「薬草ヶ丘に蜂蜜取りに行ってました!」
ギド「」
ラミザリア「そこでカラスの魔物みたいなものを見たんです」
ラミアエキドナ「そう、怪我しないようにね」
ミリアム「はい!」
アルス「…じゃあ、食事も終わりましたので皿洗いしてきます。井戸の水借りますね」
ギド「借ります」
テイムテイム「はぁい、お利口さんねぇ」
◇ ◇ ◇
―その後倉庫にて
ミリアムとラミザリア
ミリアム「今日は色んな事があったな…」
ラミザリア「本当、何だか旅に出る前の私が…もう嘘みたいに他人になってる気がします」
ミリアム「そうだねー、50G握り締めて動物の生皮巻いてただけだったもんね…」
ラミザリア「あうー」
ミリアム「私も、ほんの2週間前はお父さんとお母さんと畑の面倒見たり、油を絞ってたんだよ」
ラミザリア「私は…おばあちゃんと暮らしてました。何不自由なく、面倒を見て貰っていました」
ミリアム「今日の事だけど…」
ラミザリア「その話はまたいつかしましょ」
ミリアム「そうだね、おやすみ…」
ミリアムはラミザリアと共に今日作ったばかりの竹棚の下部、岩の窪みに預言者の骨を埋めた。隠しきれる量ではないが、残りは竹細工の竹籤や竹の下に紛れ込ませた。もしかしたらポチ達の胃袋の中辺りが隠すに良い場所かと思ったりもしたが、他のモンスターに倒された場合を考えて実行しなかった。
◇ ◇ ◇
ギド「明日は薬草ヶ丘に竹のソリを持って行こう。巣だけ残してキラービーを狩り尽くすぞ」
アルス「えらい急だな」
ギド「あの感覚を鍛えたいんだ。キラービーやコボルトを無傷で倒せるなら、それを使って稼ぎたいし…この感覚を忘れずに身体に染み込ませたいんだ」
アルス「そうだな。出来るうちにやっておこう」
ギド「じゃあ明日は朝御飯に…昨日貰った鹿の薫製を食べたら、全員で椎茸取りして町へ売りに行く。その次は薬草ヶ丘に行ってキラービー狩り、そしてまた町に行って蜂蜜を売る。その際に容器を買って帰ろう。こっちで保存する分の蜂蜜も必要だからな。薬にも使うし、触媒にも使うし、キラービーのお尻もポチ達のおやつに使うからな…」
アルス「干し椎茸が出来たら瓶に積めて冬の間の保存食にするか」
ギド「そうだよな。冬も考えないと…ここじゃあギリギリ雪降る可能性あるぞ」
アルス「冬はここで過ごすか?姉さんのところは井戸があるから、姉の拠点と俺達の拠点を囲むように小屋を作っておいて、薪や食料を大量に持ち込んでおけば出来なくはないと思うぞ」
ギド「そうだなぁ、拠点と言うからにはそれ位するべきなのか…」
アルス「そういえばギドはギドの家には行かないのか?」
ギド「うーん、なんと言うか、あそこに行くと多分…気持ちが甘えてしまうから行きたくないんだ」
アルス「その気持ちわかる気がする」
ギド「お察しだよな」
アルス「ところで質問だが…バッカスの洞窟のテーブルマウンテンって所にマンティコアなんて出るのか?」
ギド「いや、それは聞いた事はないが…危ないところとは聞いてる。しかし、マンティコアか…あんなの狩れるものなのか?」
アルス「いくら中級とはいえ…うーん
」
ギド「考えても仕方ない、ところでクランの名前だが…こんなのはどうかな?」
アルス「なるほど、じゃあこんなこんなをこんなに変えて、こんなはどうかな?」
ギド「それはちょっと…」
アルス「まぁ、先輩のグレーターグリントもリーダーがグリントと言うくらいだから、リーダーが誰かわかる方が良いんじゃないか?」
ギド「まぁ、わかった。しかし眠いな…」
アルス「おう、細かい事は明日ミリアムやラミザリアも居るときに考えるか」
ギド「そうだな」
アルス「おやすみ」
ギド「おやすみ…」
急展開な出来事の多い1日は終わり、夜は更けて行く。翌朝に謎のしっぽを垂らして。




