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メタリアトラス!~冒険者達~  作者: 林集一
漆黒の勇者の旅立ち
32/61

麦畑と踏み荒らす農家


ミリアム「これは…これは…なんじゃこりゃああ!」


テイムテイム「凄いでしょ、鹿を仕留めたのよん」

 

アルス「それ以外も凄いってか…酒場で散財した時でもこんなに豪華じゃなかったぞ…!」

 

ラミアエキドナ「もし、フレッシュゴーレムに使えそうなものがあったら好きに使ってね。と言うか朝御飯とか昼御飯に必要なら好きに持っていって良いよ。どうせ食べきれないし…」

 

ラミザリア「基本的には魔物の方が都合が良いのですが…神経類は少し貰っておきましょうね。要らない部位や内臓はポチ達のご飯にして良いですか?」


テイムテイム「勿論よぉ」   

 

ラミアエキドナ「さぁ、いただきましょうか」 

 

 

◇ライス

◇鹿ヒレ肉のステーキワインソース和え

◇玉葱と人参と馬鈴薯とマッシュルームと鹿肉の特製シチュー

◇コールスローとチーズソース

 

 

ギド達「すげぇ…うめぇ…」

 

 

ミリアム「鹿肉なのに柔らかい…」 

 

 

テイムテイム「鹿肉はあまり火を通さないのがポイントよぉ、ステーキの中は赤いでしょお?シチューもあまり煮立ててないから柔らかいはずよぉ」

 

 

アルス「これ、野菜は買ってきたんですか?」

 

 

テイムテイム「500Gだったわぁ、基本自炊さえすればそんなにお金はかからないわよぉ」

 

 

ギド「これは…栄養がありそうだな」

 

ミリアム「ごはん久々に食べた気がする…。炊き加減も完璧…!」

 

テイムテイム「あらぁ、ミリアムちゃんはシーカヤックの人かしらぁ?」

 

ミリアム「シーカヤックです!」  

 

テイムテイム「シーカヤック人にごはん美味しいって言って貰うと嬉しいわねぇ」 


ラミアエキドナ「じゃあ食べながら…質問タイムにいきましょうか」

 

ミリアム「はいはい!ラミアエキドナさんとテイムテイムさんは同期の冒険者の知り合いとかいますか?私達も同期の冒険者が居たら良いなと思って…ライバルって奴ですよ!」

 

テイムテイム「ライバルねぇ…そもそもラミィと一緒に冒険者を名乗ったのはあなた達と大して変わらないから、分からないわぁ。まだ1週間くらいよぉ。ただ、昔から魔法が使えたから、冒険者の酒場で仕事はしてたのぉ、あなた達と同じくらいの年からねぇ。」

 

ラミアエキドナ「私もアルスの監視で忙しかったので、なかなか外に出る事は無かったのですが、自宅の裏庭での狩りが少々行き過ぎまして…、解体屋にはよく出入りしていました。

 

テイムテイムと組んでからは一応冒険者を名乗ってはいましたが…、冒険の目的はもう達成したも同然なので、今はおまけです。


中級と言うのは、私とテイムテイムとアルスの故郷…ミナミ島の冒険者の酒場で御墨付きの紹介状を貰ったからなのです。私は狩りの技術と戦闘能力を、テイムテイムは魔法能力と酒場の依頼の遂行履歴を買われて、身分保証してもらったんです。

 

これがあると首都へタダで入場できたり、貴族への謁見とか色々便宜を図ってもらえるので、非常に便利なんです。まぁ、使えない場合も多々あるんだですけどね。

 

さて、同期ですが、気にした事もないので、見ていませんし、居たとしても微塵も気になりません。以上です」

 

ミリアム「あ…ありがとうございます…!」

 

ギド「逆に言えば冒険者歴は私達と同期…位になるんですね」

 

ラミザリア「では私からも…、テイムテイムさん」

 

テイムテイム「はぁい」

 

ラミザリア「テイムテイムさんはその魔導具…こんなに沢山の魔導具をどうやって使っているんですか?」

 

テイムテイム「これはぁ、小さい頃からヒトに見られるのが好きでぇ、でも、人があまり好きじゃなかったからぁ、私を見てもらうように沢山人形を集めたところから始まってぇ…。

 

毎日魔力を使って人形を操ってたら魔力がどんどん増えてきてぇ、段々エスカレートして今に至りまぁす。MPの節約とか人形や人形の道具の収納のために指輪してまぁす」       

 

指に嵌めた30以上の指輪をジャラジャラと鳴らす。

 

ラミアエキドナ「多分、内蔵MPは私達のミナミ島で5本の指には入るんじゃないでしょうか?」

 

テイムテイム「でも人形使い以外の事が殆んど出来ない特化タイプなのが残念なのよねぇ。一応護身用にファイアボールの出せる指輪を嵌めてまぁすけどぉ…」  


ミリアム「テイムテイムさんにも弱点はあったんですね!」

 

テイムテイム「そうよぉ」

 

アルス「俺達の弱点は何がありますか?」

 

ラミアエキドナ「ストレートね」

 

テイムテイム「でも良い質問よぉ」

 

ラミアエキドナ「じゃあまず、ギド君から。判断力が甘い。人を頼りすぎてる。弱い。装備品に頼ってる。」


ギド「ありがとうございます」


ラミアエキドナ「次はミリアム。MPが少ない上にストックしてある魔法が少ない。迂闊。弱い魔法しか使えない。本にのみ頼りすぎている。本に頼ってるから実際の触媒に疎い。弱い」

 

ミリアム「うぐぅ、ちょっと傷つきます。事実なのが悔しいです」

 

ラミアエキドナ「次はラミザリア、戦闘能力がない。守られて当たり前みたいな顔して腹立つ。見た目がムカつく。向上心がない。自分の意思がない。態度が気に入らない。アルスの側に居るのがムカつく。アルスの(」

 

テイムテイム「はいカットぉ!大半は私怨だから私がフォローしておくわぁ。ラミザリアちゃんは戦闘能力がないのが問題よぉ、いざとなったらラミザリアちゃんを庇うために味方が攻撃を受けるはめになるのよぉ、防御力のないアルスやギドがダメージをおったらパーティはどうなるかしらぁ?」

 

ラミザリア「強くなります…」

 

テイムテイム「これは追加のフォローだけど、ギドは経少ない経験からどんどん成長して判断力も上がってきてるらしいし、ミリアムも沢山の魔法を使えるってメリットはあるし、ラミザリアちゃんに至っては世界に何十人もいないネクロマンサーって職業についているんだから、駆け出しの冒険者としてはかなりの期待株なのよぉ」

 

アルス「俺は…」

 

テイムテイム「アルス君も私が身内びいきなしで評価するとぉ…悪い点は弓の攻撃力が低すぎて使い物にならない。弩も、コボルトすら倒せない物を持ち歩いて何に使うんだって感じよぉ。アルス君は敵にダメージを与える手段がないのぉ。多分またあのオークちゃんと戦う事になったとして…ミリアムちゃんのベノムがなければ2回に1回は全滅するわよぉ。良いところはぁ、サブリーダーとしてパーティの均整をとってる所とクラフトでパーティに貢献している所かなぁ。冒険者としては攻撃手段がないのは致命的よぉ」

 

アルス「ありがとう…ございました」



ギド「私からは…今後の展開について考えている事があるので、それについてアドバイスを貰えたらと思います」

 

ラミアエキドナ「どうぞ」

 

    

ギド「まず、長期目標としてグレーターグリントの手伝いが出来るくらい強くなりたい、その達成の基準をオーガの単体での撃破に置きたいと思ってます。

 

中期目標はオーガの単体撃破。その理由はここから首都に向かう際にオーガの徘徊する魔王城の荒野を越えるか深い森を越えなければならないからです。恐らくオーガの撃破が出来ないようだと足手まといになるだけだと思っています。コンスタントに狩るためには個人個人がそれだけの戦闘能力がないといけないと思っています。

 

そして、短期目標としてまず、オーガの4人パーティでの撃破。オークの単体撃破。があります。そのために課題を用意してみました」

 

テイムテイム「やるじゃぁん」

 

ギド「まず、私は短剣クリティカルの強化。こないだキラービーに囲まれた時にクリティカルが出来なかった場面が沢山あった。数が増えると、敵の動きが把握できなくなり、頭で処理できないので結果クリティカルでなくただの斬撃での攻撃になった。ただ、冷静に判断して1体1体仕留めればもっと怪我は少なかったと思う。だから戦闘中の集中力を増して行動していきたい。それから、技を開発したい。短剣技。剣筋が1つしかないので、見切られたら終わりと言う弱点もある。だから新しい技を得たい」

 

ラミアエキドナ「短剣貸して」

 

ラミアエキドナは短剣を構える。その構えはギドと同じく左手で腰に差した短剣を握りしめて居合いのように構える。下半身は左足を後ろに、右足を前に出して斜に構える。

 

ラミアエキドナ「見ておきなさい」

 

ラミアエキドナは抜剣し、地面ギリギリの低空の脚払いを行う。返す剣で右斜めに切り上げ、更に左に薙ぎ払う。

 

ラミアエキドナ「逆Z斬りよ、武器を持ってる人間や人形のモンスターを相手にする際に有効な場合があります。まず、脚払いをしたら敵は十中八九後ろに跳んで逃げます。脚を切断されるかもしれませんからね。上段の攻撃は武器で弾けば良いのですが、脚払いはなかなか武器が足元まで届きません。そこを突いての脚払いです。そのあとの斬り上げですが、これは敵の懐に入るための一撃です。ここで、敵の武器が長物の場合は指か腕を斬りつけると良いでしょう。短剣等の取り回しが早い武器の場合は武器を狙うのも有効です。勿論武器を狙うのは反撃が怖いからです。そして、最後の薙ぎ払い。これは首をはねるために行います。首をはねたら大抵の敵は動かなくなりますから、反撃を受ける前に首をはねる。そう言う技です。見ててください」

 

 ラミアエキドナは短剣を構えて姿勢を低く低くしていく…一閃。半歩踏み込んでの一撃は風を切り裂く音と共に逆さまに天井からぶら下がっている鹿の首が切断された。その首が床に落ちるまでに、返す剣で鹿の足首手前まで斜めに斬り裂かれる。直後、薙ぎ払いにより、揃えて縛られている足首までもが両断され、バラバラの肉塊がボトボトと床に落ちる。

 

ラミアエキドナ「これが恐らく一番ギド君に必要な技です」

 

ラミアエキドナは盗賊の短剣を布巾で拭ってギドに差し出す。

 

ギド「あ…ありがとうございます」

 

テイムテイム「私が片付けしておくからギド君は続き言いなぁ」

 

ギド「あ…ああ、ラミザリアにはまともな武器を支給しようと思う。もし出来るなら魔導具、出来なければ…と言うか当面はアルスの作った弩の手甲何てのがいいと思っている。理由は、さっきの指摘にあった通り、戦闘能力が全く無いからです。トーチストーンの件があったから、もしかしたらテイムテイムさんのように魔導具を使って戦闘補助が出来ないかと思っての選択肢です。しかし、金銭的に余裕がないので、多分弩の手甲の流用が現実的かと思いました」

 

ラミアエキドナ「接近戦は考えなかったの?」

 

ギド「接近戦は…女性には危険ですから」

 

ラミアエキドナ「彼女のお母さんは凶戦士の斧と死神の鎌を二刀流で使います。私も接近戦がメインで戦っています。

 

もう一度聞きます。接近戦は危険ですか?」        

 

ギド「…」

 

テイムテイム「ラミィちゃん、あんまりいじめないでよぉ。

 

まぁ、彼女の言いたい事を代弁すると今コボルトやスライム、キラービーだかなんだかの人間より弱いモンスターと武器を使って戦う事に慣れなかったら、いつ慣れるのぉ?オークを相手にするようになってからぁ?オーガ相手にするようになってからぁ?多分、そんなの死んじゃうでしょお?そう言う事ぉ。オーガクラスを相手にするなら、一撃受けても大丈夫な保険はかけてないと、人生はそこで終わっちゃうからねぇ」

 

ギド「ラミザリアはどんな武器がいいか?」

 

ラミザリア「…!…!ラミアエキドナさんの使っている鎚がいいです…!…!」

 

ラミザリアは涙を流しながら震えて答える。    

 

ラミアエキドナ「じゃあ鍛えてから持ちなさい以上」

 

ギド「次はミリアム…はコストのかからない攻撃手段を確立してほしい。例えば、魔法でエンチャントされた杖とか…ぶっちゃけ魔導具なんだけど、それを至急作る事を目標にしてほしい。あと…さっきの話を聞いてみると、やっぱ物理武器も…必要かもしれないな」

 

ミリアム「考えておきます…」

 

ラミザリア「ミリアムに提案があります」

 

ミリアム「へ?」

 

ラミザリア「ミリアムの魔力操作能力はかなりの器用さなので、もしかしたら多重発動が出来るかもしれません」

 

ミリアム「多重発動?」

 

ラミザリア「死霊魔術は主に死神の召喚、死神の使役、死神の回収、召喚の処理の4工程をほぼ同時に行います。これは、これだけの工程を素早く的確に行わないと死ぬ危険もあるから、遅れないようにその処理を同時に始めるのです。だから死霊魔術は複雑で使い手を選ぶのですが…ミリアムを見てると多分ファイアアローの多重発動とか可能なんじゃないかと思います。ファイアアロー×5なんか使えたら範囲攻撃になりますし、収束させたらファイアボールを越える威力になるかもしれません。コストパフォーマンスは恐らく小魔法の多重発動の方が断然安くつくと思います」

 

ミリアム「あ…多分出来るよ!何となく出来る気がする!」

 

ギド「確か…発火キノコ沢山あったな…あれで試してみたら良いかもな」

 

ミリアム「頑張ってみる!」

 

テイムテイム「じゃあ次ぃ、アルス君は私が答えるわぁ」

 

ギド「アルスは…もっと強い弓を引いて欲しい。短剣もそこそこ使えたし、弓の腕も良いし、正直、武器の性能を除けば私より強い筈なんだが…誰かのサポートじゃなくて、1人の戦士として止めを刺して欲しい。だから、攻撃力を高めて欲しい。以上だ」

 

テイムテイム「それは当たり前よぉ、これまでお姉さんっていう存在がいたからかどうか知らないけど、知らず知らずのままサポート役に徹するようになってたんじゃないかしら?」

 

アルス「…」

 

ギド「アルスはそれを知って行動したんだ。だから家出したんだと思います。だから本当はここで言う事じゃ無いかもしれない。でも、言葉に出した方がより強く認識するから行動になって出てくると思います。だから、だから、伝えないといけないと思いました」           


テイムテイム「青春ねぇ、と言うかそこまでわかってるなら私達のアドバイスなんていらなかったんじゃなぁい?」

 

ラミザリア「多分…ラミアエキドナさんの判断力や認識力がギドの才能に火をつけたのだと思います。これはおふたりが居たからこその成長なんだと思います。本当にためになるお話ありがとうございます」

 

テイムテイム「なんか適当にアドバイスをするつもりが変なことになっちゃったわねぇ」

 

ラミアエキドナ「そうね、ちょっと酷い言い方になってごめんなさいね」

 

ギド「いえ、ありがとうございます。では失礼します。ごちそうさまでした」

 

ミリアム「あ、食器は洗いまーす」

             

  

その日は、明日大天使の羽根の依頼を遂行しに酒場に行く事だけを告げて解散となった。

 

  


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