巨乳テイムテイムその1《出会い》
「おはよー」
「ぉ……はよ"う」
「おはよう、……あれ?アルスは?」
ギド達が洞窟のY字路付近で目を覚ますと、洞窟の入り口よりうっすらとした光が射し込んでいた。そのまま辺りを見渡して見るもアルスの姿がない。
「外に探じてきます」
「みんなでいこう」
「眠いー……」
チュンチュン……。
入り口の方から鳥の鳴き声が聞こえる気がする。誘われて穴蔵より出ると太陽はすでに陸を離れており、真横から強い陽が射していた。洞窟は竹藪の中にある為にさほど陽は入ってこないのだが、近頃竹を伐採し過ぎた感があって多少明るい。ふと白い風が竹林を通り抜ける。
死骸人形達に挨拶をする。一応反応は返してくれるようだ。見た目はちょっとアレではあるが、慣れてしまえば可愛い奴等かも知れない。
ギド達が外に出ると、竹林の出口付近で一条の煙が上がっており、そこにアルスがいた。
「おはよう。朝の狩りに行って鳥を4匹仕留めておいたぞ。今焼くから待ってろ」
「ありがてぇー」
「あ、ありがとう」
「ありがとうございま"す。解体手伝いま"す」
「頼む」
「あ、水浄化切れてるから浄化は出来ないけど、煮沸したら飲めるはずだから朝露集めてくるね! ギド行くよー!」
「え、私……? ぁあ、行くよ」
ミリアムはギドの手を引っ張って竹林側へ引きずっていく。
◇ ◇ ◇ ◇
「鳥も解体上手だな」
「好ぎですので、触っているうちに慣れました。この子たぢは食べで肉を失っても傍に居てくれるんです」
「ラミザリアは変な奴だな」
「よく言われまず」
「でも好きだぞ」
「ァダヂも好ぎでず」
「……。その濁点どうにかならないか?」
「むー、たふん。練習します。私これまてあんまり話さなかったし、はなすのは得意しゃないから……」
「これからは沢山話せばいいよ。ミリアムあたりと居たら話す機会沢山あるだろ。よかったら俺とも話そう」
「はい、出来ました。羽根は矢に使います?後の部分はポチ達に食べさせておきます」
「ありがとう。ラミザリアは気が利くな……ポチ?」
「死骸人形に名前つけました。4匹ともポチですけと……」
「ポチか、いいな」
◇ ◇ ◇ ◇
鳥の焼ける匂いにひかれてギドとミリアムも戻ってくる。手元の竹の水筒に2つ分満タンの朝露が集められていた。ギドは家から持ち出した鍋に移し替えて、アルスの起こした火にかけて温める。程なくふつふつと沸騰してきたので、結局軟膏に使わなくって痛みそうなツルムラサキを2束茹でて食べた。
◇ ◇ ◇ ◇
朝食
◇素焼き鳥
◇ツルムラサキの素煮×4
「鳥でよかったらいくらでも獲れるから、毎日朝御飯はこれで間に合わせる事が出来るよ。まぁ4匹を4人でってのは物足りないが……」
「椎茸だけ焼いて食べる昨日の食事よりは断然良いけどな!」
ギドは笑顔を見せる。
「お腹すいたー」
今食べたばかりである。
「なら早く町へ行こうか」
ギドは皿を拭い、背嚢に詰める。
「今食っただろ……」
アルスも皿を片付ける。
「こちそうさまてした」
◇ ◇ ◇ ◇
ギド達は予定通り酒場へと向かった。
竹林から犬鬼の居た岩場へ、それを抜けると麒麟蔓の繁みへ、麒麟蔓は毎日生え変わるので、刈りつつ進む。コツを掴むと少しだけ早く進める。そこを抜けると銀杏林が100m程ある。所々で銀杏を拾ったりしつつ抜ける。
町まではそんなに距離がない。慣れてしまえば30分程の移動。灌木の点在する草原を突っ切るだけの作業。特に問題はなく町へと到着する。
ミナトの町……。ギドの育った町で人口7,000人程。交易と漁業を主な産業として発展してきた。
整備された港湾は西湾と東湾に別れており、西側は漁業組合所属の漁船40隻が停泊している。東側には貿易組合所属のキャラック船5隻のドッグが控えていた。また、東側港湾ドッグよりさらに東側に行くと造船所があり、1年に1隻程のペースで交易用のキャラック船を製造している。造船業を支える為の鉄工業と林業が発展しており、鉄製品は比較的安く手に入る。
交易は陸路はハジメの町とトナリの村を経由するミナト交易道があり、アメリア首都への馬車便が出ている。海外からの珍しい調度品や宝石、魚の干物等の海産物を運んで、帰りは首都アメリアから希少な魔物の素材と金属で作った魔道具や工業製品を積んでくる。
それを海路でシーカヤックやハイヒール等の外国に運ぶ事によって利益を上げている。
冒険者用の酒場に集まる冒険者は少なく、魔物の解体屋も1軒しかない。余談であるが、馬車便は冒険者で言えば中級以上の護衛が付くため、輸送費用がかなり高い。時期にもよるが人間1人20,000Gは下らない。
その解体屋と冒険者用の酒場は町の中心側にあり、ギド達がここ数日間お世話になっている場所となる。
裏山の拠点からだと町の西側から入り、酒場迄の距離は凡そ1時間ちょいとなる。
「この冒険者の酒場、実は早い時間は若い女の子がみていて、食事だけ出してるんだ」
ギドの談である。
「へー、よく知ってるんだねー」
ミリアムの返答である。
「確かに昼はマスター居なかったな。酒樽の買い取りもしてくれてるのか?」
「多分大丈夫じゃないかな、話は通ってると思う」
一行は酒場のスウィングドアをぬるやかに通り抜けて次々とカウンターに酒樽を並べる。
「ギド君かな?これ預かってるよ」
若い女の子は、カウンターの下からジャラジャラと銅貨の入った袋を出してギド達に差し出す。
「ありがとうございます」
「はい、依頼完遂です。ありがとうございましたー」
若い女の子は素っ気ない。
「昼間の酒場は相変わらず人がいないな……」
アルスは酒場を見渡すと2~3人、昨日から寝てるんじゃないかと言うゴロツキみたいなのが倒れている以外は誰もいない。
今後も予定はつまっている。さて行こうかと出口に向かうと……。
「あらあらあらあら、」
明らかに怪しい人が出口のスウィングドアを両手で開いて入ってきた。
その怪しい人は女性。髪は黒髪でウェーブがかかっており、顔は蒼白い。手にはギラギラごてごてした指輪を30個程つけており、右手には薄汚れたウサギの人形が握られていた。
――――しかし胸は巨乳。
改めて言おう。
――――しかし、胸は巨乳。




