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メタリアトラス!~冒険者達~  作者: 林集一
ギド達の旅立ち
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バッカスの洞窟への再来


 ギド達は裏山の拠点で準備をしつつバッカスの洞窟へ向かうべく準備をしていた。


 ミリアムは『魔術大全』から「自然回復(ソロス)+1」の魔法を確認して4個変換した。銀杏の黄葉の殺菌成分とスライムゼリーの再生成分を魔術キノコで融合確定させ、ミリアムの魔術的な領域に効果のみストックさせる。+1とは、平常時より10%程免疫力や白血球数が増えると言う所であり、効果としては微々たるものではあった。

 

 この辺で採れるもので言えば、蜂蜜やプロポリス、蓬や水笹アロエ、その他色々な薬効成分のある素材を使う事によって+20程度迄には高める事が出来る。+20は200%アップ程度なのでそこそこの効果は得られるのだ。

 

 さらに回復魔法効果の即効性を高める素材の鳥類の羽根や四足歩行獣の蹄や爪を配合し、治癒速度を5倍近く迄引き上げる事により、目に見える効果を出す事が出来る。

 

 更に更に芥子の花や実や愚鈍亀のエキス、トゥルシー草、レモングラス、生姜やペパーミントを加えての鎮痛効果を付与してやっとやっと戦闘中に使って意味のあるような…多少の怪我を治す魔法となるのだ。所謂「水癒(ヒール)」と言う魔法だ。

 

 しかし、そこまで来ても、中級冒険者の冒険に使う回復魔法には程足りなかった。中級冒険者の主な敵となるのは人里離れた荒野に住む巨人鬼(オーガ)、森に暮らす武装した豚鬼(オーク)の群れ、山で獲物を待ち構える鳥女(ハーピィ)、どれも戦闘訓練の無い者や優れた防具で防御していない者に一撃で致命傷を与える事が出来る魔物で、中級者の戦士ですら防具の覆われていないところへの攻撃は重傷を負う危険性もあるのだ。


 この異世界(メタリアトラス)で戦闘をこなすと言うのは命がかかっており、半端な事ではない。

 

 昼食は拾った椎茸を竹籤(たけひご)でつついて炙り、食べた。塩があるわけでもないので、町の人が食べる普段の食事よりは多少味気のないものだった。しかし、香りはあり、尚且つジューシーな旨味があるので何とか食べられた。


 カロリーはほぼ無いのだが、1人6個ちょいを食べれば多少の腹を膨らませると言う効果はあった。食べ盛りのパーティにしては残念な結果だった。が、教訓として今後は町での準備に食料の項目が追加される事となるだろう。

 

 女の子は様々な話題のお喋り中心、男の子は作業と実務の話題中心の傾向がわかる午前中の作業だった。

 

 午前中は男女別れての行動だったが午後は荷物を拠点に置いて、バッカスの洞窟へと向かう。昨日の失敗は灯りが少なすぎた事だった。その改善として、いざと言う時の灯りの魔法ストックを集めて、松明を持つ事にして灯りを確保した。更に工夫として、使わない荷物を拠点に置いて、多少身軽になった上での挑戦だった。


 更に昨日より楽になった点として、1度制覇したダンジョンと言う精神的な負担の軽減がある。逆に暗闇の中での活動に対する恐怖も生まれては居るのだが、それは冒険者にとっては慎重さや判断能力の増強に繋がるものであり、有益なものでもあった。 

 

 さて一向は朝市で買った油を松明に染み込ませて燃やし、昨日より少し早いスピードで最新部へと向かう。浮遊蝋燭(トーチライト)等の魔法は物理的な灯りに比べて潰しがきくので、温存しつつ進む。


 本来バッカスの洞窟へのお使いは「酒の精霊への貢ぎ物1人300G」「灯り代1人200G」程度を消耗して「酒代1300G」を獲得する依頼であるのだが、ギド達は油代や貢物代をケチっていた為、小金を稼ぐ事が出来ていた。


 バッカスの洞窟へのお使いは、町からの距離と洞窟内の移動でどうしても往復半日近くは掛かると言う事と、樽を背負っての行動が大変と言う事がデメリットとなって中級冒険者以降からは敬遠される。

 

 しかし、中級冒険者ともなれば、この駆け出しの時代に受けた依頼が非常に有益だったと気付く。道の往復が体力を作り、洞窟への対処を学び、また収入を確保出来る点から栄養状態もさほど悪くならず、死ぬ確率が減るのだ。

 

 そこで冒険者達は学び育っていく。


 ギド達はそんな事を露知らず、ずんずんと先へ進んで行く。 

  

 速度を優先して進みたいと言う皆の思惑があるので、道は昨日と同じ道を通るようにしようと決めて進んで行った。その思考は良い方向に働き、ギドの盗賊的センスにより暗闇での誘導は思いの外安定して昨日よりは早く安全に進む事が出来た。


 歩きながら話すのは今日の昼の話題……その反芻だった。酒の精霊への道程は昨日より大分楽になっていた。


「~という訳で竹籤(たけひご)を大量に作ったのよ、帰ったらそれを編もう。竹のラグを作って寝床にしないと多分相当寒くなると思う」

 

 アルスは少し饒舌となる。

 

「考えてみたらもう秋だしー洞窟で野宿って相当寒いよねー!」


ミリアムの声は洞窟内に反響する。

 

「この酒樽の酒を売ったら、毛布でも買おうか」

 

 パーティリーダーギドの懸命な判断である。 

 

 そんな事を話しつつの洞窟はギド達にとって昨日よりも大分ましな道中だった。初めは暗く長い道程に思えた洞窟。徐々に暖かくなる壁面。大部屋の手前からある灯火。ついには酒の精霊のいる最新部へと到着した。   




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