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メタリアトラス!~冒険者達~  作者: 林集一
ギド達の旅立ち
12/61

朝イチは闇市

 

「そうだよ! アタシ達はもうパーティなんだから遠慮しないでー!」


「4人パーティか……良いな。取り敢えずラミザリアの意思は確認できたから、私達パーティの目的や計画、あと正式に拠点作成について進めようか」


「そうだな」


「賛成ー!」


「はい、ありがとうございま"す」


「まず、とりあえずの目標として、グリントさんを見付ける事。その為にはなるべく早めにアメリアの首都につく事。その為にはアメリアの首都に迄辿り着けるような装備と能力をつけること。これでいいかな?」


「ああ、問題ない」

「うん、そうだねー!」

「ぁい、ぁりがどうございます」


「辿り着くには……巨人鬼(オーガ)との戦闘に勝てる装備と魔法、若しくは回避する力、あとは野営とかの能力が必要かな。戦闘の目標は巨人鬼(オーガ)においておこう」


 ギドのコップにマスターが水を注ぐ。


「なるべく巨人鬼(オーガ)とか危険な相手との戦闘は回避するとしても、いざ戦闘になった時を想定しての準備だな。用意としてはしておいて損はないと思う。特にミリアムの魔法は大量にストックが欲しい」


 アルスのコップにも水を注ぐ。


「魔法のストックは、私が認識出来る程度しか溜めておけないから、もし沢山必要なら魔導具とか用意しないといけないかも……」


「魔導具? 何の魔導具だ?」


 アルスがクイッとグラスを傾ける。


「『魔術大全』に作り方が載ってる知識の書って魔導具だよー。魔法を50頁分ストックして自由に出し入れ出来るんだけど、素材だけで120,000Gくらいするから……あまり現実的ではないかも知れないけど……」


「素材はな"んでずか?」


「羊皮紙×27、蝙蝠の羽根ペン×27、血墨×27、金の髑髏とかかな」


「蝙蝠の羽根ペンなら"その辺の小悪魔(インプ)や蝙蝠を狩れば作れます。死霊魔術でもよぐ使うので、母が作ってました。死霊魔術では1文字につき1本使う時もあ"るので、大変なのばわかります。


 あと、血墨も魔物の"血を集めて作れ"ます。羊皮紙も、獣皮紙"や亜人皮紙なら作れまず。金の髑髏はともがく、ある程度はその辺の魔物でも用意できます……」


「すげぇ……」


 アルスの目線はラミザリアの顔より下を見ている。


「じゃあ、例のY字路洞窟の青コケが生えてた所側をミリアムとラミザリアの作業場兼倉庫にして、水包(スライム)がいた場所に休憩所を作る。そしてミリアムとラミザリアは知識の書を作る。私とアルスは武器防具をランクアップさせる。こんなのはどうだ?」


「賛成! 今は役に立ってないけど、魔法がバンバン使えるようになったらもっと活躍できるわよー!」 


「大丈夫でず」


「わかった。それでいこう」


 何故かアルスが仕切る。 


「眠たくなってきたよ。そろそろ帰ろう」


 ミリアムが机に突っ伏す。


「じゃあ今夜も宿に泊まるか。明日の準備はどうする?」


 アルスと目が合う。


「とりあえずランタンを返しに行くから、約束の油を持っていかなきゃな。あと、マスターからまた新しい酒樽貸して貰わなきゃ」


 振り返るとそこにはマスターが居た。


「また行くのかお前ら?まぁ、酒は売るほど必要だが……。普通あんな陰気臭い場所に連続で潜る奴はいねぇぞ?」


浮遊蝋燭(トーチライト)だけでは灯りが足りなくて、酒の精霊からランタン借りちゃってですね、明日返しに行くことになったんですよー!」


「そういう場合は洞窟に入って5秒で一旦出てこい。暗いって分かるだろうに、その判断力だといつか大怪我するぞ?」


「気を付けます」


 アルスは目を伏せた。


「樽は忘れずに持ってけ。カウンターの下に置いておくから」 


「ありがとうございます」


 ギドは水も飲み干す。 


「さて、女性陣は疲れたみたいだな」


 ミリアムとラミザリアはうとうとしている。


「アルス、明日は早市だよな?。早市で買うのは、ランタンの油を3瓶、ミリアムとラミザリアの革靴かな。朝市の装備品は中古しかないから、サイズか無かったら諦めて、店が開く時間まで待つか?」


「……そうしよう」 


 その後ギド達は昨日の宿に転がり込んだ。久しぶりの満腹に、暗闇での活動に疲れていたギド達は泥のように眠った。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 朝――、朝となった。朝市は夜が明けないうちに準備されて日の出から1時間半だけと言う変なルールの市場だった。そこは店を持てない貧乏商人の生活の糧であり、店が開くまでの小遣い稼ぎの場であり、庶民の所謂フリーマーケットごっこの場所であった。税金のかからない合法闇市とも言う。


 ギド達は筋肉痛の身体をおして朝市へと来ていた。


 そこには麻で編まれた布や藁の上に靴や洋服等の生活用品が所狭しと並べられている。


 ここを利用する客は多い。


「あったぞ、革靴。これはラミザリアとミリアムにぴったりじゃないか?俺のより頑丈そうだ」


「あい、200Gでいいよ」


 胡散臭い露店商が話し掛けてくる。


「安いな」


 ギドが慣れた様子で返す。


「2つで400Gですぜ、兄ちゃん」


 露店商は靴を右足左足に分けて2つにする。


「だよな。まぁそれでも安い、買うよ。2セットくれ」


 露店商は笑顔で靴を差し出した。


「ありがとうー!」


「あ"りがとうございばす……」


「気にすんなって、みんなで稼いだお金なんだから」


 と言いつつ半分くらいはギドとアルスが樽や本人を背負って居たのである。


「あ、このローブと背曩、ラミザリアにどうかな?」


「いやあ、お目が高い。このローブは新品同様でここに流れてきたもんで、2,000Gでどうですかねぇ」


 露店商の目が本気になる。


(なるほど、先程のやり取りは前哨戦か……!)


「この服の持ち主、こことここ、刺されて死んでまずね」


 ラミザリアの指摘する箇所をみると確かに不自然なレースの飾りがあった。裏返してみると血痕が染み抜きされたような跡があった。


「あんた商人の娘かい?鼻が利くねぇ。確かにそうだ。この服はよく行き倒れの奴が着てる奴だ、ほれ、死体剥ぎ品だよ」


「ラミザリアはこんなの平気そうだな」


 ギドは小声で呟くとラミザリアはそれに返す。


「平気でず」


「これいくらまで値切られる?」


「1,000Gでごさいますね」


「500Gなら買うが、売らなきゃ今の話を大声で喚き散らすぞ」


 アルスがチンピラみたいな事を言っている。


「どうぞ、ただ怖いお兄さんに気を付けて下せいね、800Gならいいですぜ」


 さすが露店商。


「わかった750Gで買おう」


 ギドはスッと割り込む。


「値切りが上手ですねぇ、いいですよ、1,550G頂きやす」


 露店商が観念したかのように振る舞う。


「背曩は450Gに出来ないか?2,000Gピッタリ」


 ギドは最後の交渉をこころむ。


「それなら全部で2,500Gなんてキリがいいんじゃないでしやうか?」


 露店商会心の笑み。


「分かった。これ以上は無理そうだな」


 ギド痛恨の笑み。


「毎度あり」


 ◇背曩を手に入れた!

 ◇絹のローブを手に入れた!

 ◇革の靴を手に入れた!

 ◇革の靴を手に入れた!

 ◇2,500G支払った!


   

「あり"がとうございまず……凄い! 人間みたい"!」


「人間だよっ!」


 革靴を履きながらミリアムが突っ込む。


「しかし、水虫とか病気とか大丈夫かね? 中古の靴ってのは」


 アルス心配の一言。


「大丈夫だよー、むしろこの革靴の元の持ち主が私から飛び火して水虫に呪われないか心配なくらいだよー!」


「それは心配だな(元の持ち主が)」


 アルス心配の一言。


 ◇ ◇ ◇ ◇    


「このランタンの油はいくらだ?」


 早くもギドが隣の露店商と次の交渉に入る。


「これなら1瓶140Gだよ。5時間くらい燃えるよ。臭いやつだったらもっと安いのがあるよ。逆に高いのもあるが……」


「それでいいよな?」


 アルスが割り込んでくる。


「これで良い。3つ下さい」


 ギドが妥当と判断した。


「420Gになるよ」


「はい、ありがとうございます」


 ギド満面の笑みにて交渉終了。


 ◇ランタン油×3を手に入れた! 

 ◇420G支払った!


「さてそろそろ行くか」


 ギド達は裏山に向かって歩き始めた。 



革靴は普通靴屋で買うオーダーメイド品。中古はほぼ行き倒れから剥ぎ取ったもの等の訳有り品。冒険者や歩く仕事でもなければ革紐の草履かミリアムの様に植物性の草履が多く使われている。冬にはブーツ等が多い。

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