03 不遇でログイン
いよいよ正式サービス開始の日、早速にもログインしてキャラデータでの作成になる。
「作成データを利用しますか?」
「ああ、してくれ」
「畏まりました」
ああ、どうにも弱々しい外見だな。
これって寝たきりになりそうだぞ。
「本当に0才からで宜しいですね」
「ああ、そうしてくれ」
「そうなりますと、両親の特徴を受け継いだ容姿になりますけど、宜しいでしょうか? 」
どのみちリアバレ対策で色々と変更が必要なんだし、それぐらいならそのほうが良いな。
それにあんな針金みたいな身体でまともに動けるとは思えない。
それぐらいなら、もしかしたら育成とかって補填があるかも知れないしな。
それを願っての0才スタートだ。
「ああ、それで構わない」
「そうなりますと、チュートリアルが最低15時間かかりますが、本当に宜しいですね? 」
あれ、チュートリアルってそんな扱いになっているのか。
このゲームのチュートリアルは、戦い方を軽く教わって終わりってなっていたのに、本当は15才までって期間があったのね。
それがたまたま15才スタートだから、ざっくりとした説明で終わってたのか。
どうにもβテスターが仕事してないような感じだけど、ちょっとした盲点になっているものばかりだな。
皆VR慣れと言うか、こんなもんだと割り切っているから、気付けないのかも知れない。
けどこれって補填だよな。
よしよしよーし、15時間でどれぐらい補填が成されるか分からないけど、あんな針金みたいな身体スタートじゃなくて幸いだ。
そんな訳でログインになったのは良いけど、チュートリアル中の時間の流れが相当に違うらしい。
まずは幼年期だけど、0才から3才までを3時間で体験し、6才までを更に3時間、んで小等部6時間、中等部3時間で15才スタートって感じか。
つまり15才までを15時間に短縮しての体験って事になるようだけど、外の時間では数分ってとこらしい。
(チュートリアルを開始しますか? y/n )
◇
長いトンネルを抜けるとそこは……
目が明かないが、まぶたを通して明るさは感じる。
何かがオレの身体を刺激し、そして全身に刺激が走る。
これは……熱か?
どうやら撫でられているような感じがするが、どういう状況になっているのか。
耳に何かの音を感じる。
どうやら会話のようだが、何を言っているのかは分からない。
なりゆきに任せるしかないと、そのまま身体は弛緩したまま。
そのうち妙に喉が……なにか喋りたいという欲求を感じ、その想いのままに……
「んぎゃ、んぎゃ、んぎゃ」
ああ、やっぱりか。
暖かい布らしきものに包まれて、オレの意識は鮮明になっていく。
そうして目を開けば目の前に美人さん。
優しく微笑んで何か喋っている。
身体は相変わらず動かないが、その言葉は少しずつ理解していく。
ああ、この美人さんはオレの母親になるんだな。
となると外見に期待が持てるが、果たしてどんな顔なんだろう。
それにしてもこの状況は面白い。
まるで記憶付き異世界転生だな。
そんな楽天的な感情がいきなり凍りつく。
まさか、そのイベントはぁぁぁ……
おいおい、いくら15才以上推奨でもそれはさすがに。
マジかぁぁ……「だぅ……だぁ……」
身動きの出来ないままに、そのイベントは否応無しに開始されようとしていた。
近づいてくる巨大な物体。
それは盛り上がっていて、中心部が更に盛り上がっている。
その部分がオレの口に近づいてくる。
待て待て待てぇぇぇ……
どうにも羞恥プレイのようだが、口を開けないとイベントは終わらないようだ。
開き直って口を開くと、突っ込まれる柔らかい物体。
ああ、変な気持ちになりそう。
それでも本能のままに吸えば、薄くて甘い牛乳のような味。
かつて味わったはずなのに初めてだと感じてしまう味。
ゴクゴクと飲んでいくと、段々と気だるい気分になっていく。
「げぷぅ」
ああ、もう飲めねぇ。
そのまままどろみの中、またぞろ全身に刺激が来る。
ああ、見られている見られている。
まさかとは思うが、これを何度も体験とか無いよな。
こんなの何度もやっていると、そのうち趣味嗜好が変わっちまうぞ、マジで。
おしめを付けられて暖かい布に包まれて、まどろのみ後、いきなり成長していた。
良かった、もう羞恥プレイは無いんだな。
目覚めると1才の誕生日の祝いの中、母親に離乳食を食べさせられようとしていた。
「キルくん、さあ」
「あうっ、あむぅ」
柔らかいおかゆのような、でも妙に薄味と言うか。
母親に抱かれて正面には父親らしき存在。
他に人は居ないようで、家族は3人なのかも知れない。
ひたすらの注目はとても気恥ずかしい。
満腹を感じると眠気が来て、まどろみの後でベッドで目覚める。
耳には両親の会話が聞こえ、虚弱児認定されているらしい。
まあそうだよな、LAC以外ALL1なのだから。
そのせいか妙に過保護っぽい扱いになっていて、少しでも動こうとしたらすぐにやって来る。
寝た振りすると離れるので、ひたすらひたすら身体を動かそうと努力するも、中々動かない己の身体。
そのうちまた戻ってきて、無理しないでと心配そう。
あーあ、こんなにステータス落とすんじゃなかったと思ったけど、そのお陰で錬金術が取れたんだし、仕方が無いよな。
何とか母親の目を掻い潜り、多少無理でも身体を動かしていく。
本来ならハイハイ出来るぐらいの年齢なのに、やっとの事で寝返りを打つオレ。
そんな弱々しい身体が本当に心配そうで、罪悪感が半端無い。
何とか体力を付けないと、本当に罪悪感で潰れてしまいそうだぞ、参ったな。
そのうち眠気が来て、目覚めたら2才になってました。
どうやらまどろみで数ヶ月、睡眠で1年って時間経過になっているようで、何かしらやってはまどろみ、そして睡眠の後に成長の実感って感じになっている。
3才になったらいよいよ幼稚園って事になるのかな。
動いて寝た恩恵か、ハイハイがやれるようになってました。
筋肉疲労が無いのが幸いと、それからもひたすら動いてはまどろみの繰り返し。
本来なら3才で幼稚園のはずが、虚弱児認定のせいかパスされたようだ。
幼稚園では団体行動とか意思の疎通、簡単な会話などがあるようだが、リアルの体験があるから無くても問題は無かった。
そんな訳で母親との対話をしつつ、隙を見ての体力作りをひたすらやっていた。




