24 不遇なる基地の実態
華麗なる空の旅。
この世界では夢物語に近い現状だが、輸送ヘリ開発基地ならではの贅沢とも言える。
特殊車両を吊り下げて、オレ達はヘリの搭乗員となり、今は地上の景色を眺めている。
あの山崩れは去年起こったらしく、盆地の出口の隘路を転げ落ちた岩やら土砂がせき止め、広範囲な冠水になったとの事。
そいつを爆破したのが今回のオレの作戦で、そりゃ所持禁止のお達しも出るはずだ。
何はともあれ、その計画での予算を流用すれば回復薬の購入がやれるとあって、核エネルギーの購入資金と合わせて1000万Pの取引となる。
回復薬はひとまず父さんのほうから出してもらい、後で補填する事で合意。
それと言うのも1500本の割り当ての内の500本を減らすのは後々困ると言われ、オレの備蓄からの放出になったからだ。
父さん達のグループの総勢が50人であり、5人で10の小隊に分けての今回の旅路。
ケンロクシティはまだ近い事もあって1小隊だが、他の町へは2~3小隊の派遣になっているとか。
一度に全員というのも無理があると思ったけど、本当なら去年の計画だったのを隊長の都合で今年にした弊害とも言える。
今回の派遣計画は北陸、中部、近畿を目的としており、今後の整備計画などのすり合わせが行われる。
それと共に持参した高性能回復薬や資材などの供給となっており、回復薬を500本供給する事になっていた。
そしてその予備と言うか道行での消耗対策に倍用意出来たのはオレの供給の恩恵らしく、その予備をそっくり基地に回す事になった訳だ。
今回の500本は売りには違いないけど見本のようなもので、500回復の性能を見せ付けての本部有利な何かの合同計画の鍵にするつもりらしい。
とは言うものの、本部からは1万本しか出せないのは変わらず、その中からの取引の計画なので割り当てが減るとして、他の班からの反対も根強いとか。
なので中立な立場の父さん達の班が引き受ける事になった今回の計画。
当分の間、父さん達の本部からの割り当てを無しにする事で他の班をなだめ、何とか波風を抑えたらしい。
実は1500本の割り当てのうち、月末での余剰分を他の班に流しているそうで、割高なその割り当てもあっての立場らしい。
まあそうだよな。
組織全体で22班もあるのに、1万の薬を均等に分ければ450本余りにしかならない。
1月に1人当たり9本の割り当てとか、まともな作戦にはならないのも道理、ならば他から購入すれば良いが、巷での購入は雑貨屋しかない。
だが、その雑貨屋は旅人が予約する程に人気があるとなると、おいそれと手に入れる事も出来ない状況。
そんな中、父さん達3班からの流用という話は、他の全ての班に好意的に受け入れられたらしい。
そんな訳で父さんに渡している分は3班のみに流れ、その余剰分を残りの班に流し、全体的な分配量を増やしているのが現状らしい。
そういう事なら在庫一掃セールをまたやっても良いかもな。
そうして最終的には3000回復のHP回復薬と1500回復のMP回復薬も売りに出したいと思っている。
ただ、あんまり国の研究所を凌駕させると、勧誘が発生しそうな予感もある。
そういうのは困るので現状維持にしてある訳だが、いくら旅人でも自宅のある存在だから親経由での勧誘になったらウザい事このうえない。
なのでそういう取引は父さんが引退した後を考えている。
だから頼むよ後進達、もっと性能の良い回復薬を拵えてくれよ……情報は渡さないけど。
◇
基地からは車での移動になるが、基地で取引を終えてひとまず父さんがお金を預かるとの事。
さすがに言えないアイテムボックスなので、用心の為にそうしてもらった。
採取機器の交換も終わり、空の機器はリュックに入れてある。
どうやらケンロクシティの宿泊施設は、お値段の割りにサービスが悪いらしく、基地で泊めてもらう事になった。
現地では朝に到着して夜に出る予定にして、またこの基地で泊めてもらうとの事。
そうしてあの場所まで翌朝運んでもらい、そのまま帰途に着く計画になっていた。
どうやら父さん達は基地の面々との酒盛りを楽しみにしているようだ。
やはり気のおけない相手との酒盛りが良いんだろうな、接待なんかより。
オレは早々に食堂から追い払われ、残った面々は騒いでいる。
まあそれならそれで良いとして、夜のハントを楽しむ事にした。
目標としては空の機器を最低1本は満タンにする事。
雑魚なら1~5ポイントだが、ブラッディウルフで50ポイントぐらいは獲得出来る。
ちなみにあのでかい蛇は600ポイントもあり、あんなのを狩っていけばすぐさま溜まりそうな感じだ。
基地を抜け出して山に入ると、妙にでかい反応を察知。
猪が怪物化して巨大になったようなのを発見する。
そのまま隠遁して近くに寄り、必殺の催涙弾をお見舞いする。
鼻面に当たったそれは、そのまま爆発するように粉砕され、目と鼻に攻撃された。
『ブモォォォォォォォ』
滅茶苦茶に暴れて自らを周囲の木にぶち当てていく。
半狂乱なそいつはひたすら暴れていたが、最後にぶつけた物体で動きが止まる。
思いっ切り出っ張った岩に頭をぶつけたらしく、そのままゆっくりと倒れていく。
自業自得な打撃だが、脳震盪っぽいので今のうちに核エネルギーを抜かせてもらうぞ。
実は殺さなくてもそれは抜く事が可能であり、完全に抜いてしまえば怪物から動物に戻ると言われている。
つまり、核エネルギー自体が宇宙からの侵略者とも言えるが、普通は宿主ごと殺してしまって素材にするものだ。
だけどこいつは生かしておいてやろう。
完全に核エネルギーを抜いた後、口の中に試作品の回復薬を流し込む。
ビクンと動いたのでまだ死んでなかったようで、しばらく養生すれば回復するだろう。
いや別に、某映画のアレを連想した訳じゃないけどさ、いかにも山のヌシっぽい感じがしてさ、生態系の乱れを危惧したに過ぎない。
どんな組織でもトップがいきなり消えれば下はまとまりが失せる訳で、それがこの一帯のトップなら尚更の事だ。
そんなのが基地に押し寄せたりしたら、はた迷惑にも程がある。
とりあえず確保した核エネルギーは450ポイントもあった。
それからも見つけたら気絶を狙ってのエネルギー確保で、1本満タンにして基地に戻って就寝となる。
翌日、何か言われたので寝る前のトレーニングと言っておいたが、完全に間違いって訳じゃない。
基地での朝食の後、車中の人となってケンロクシティへと移動する。
リアルとは大きく異なった地図には、あの有名な半島の形が大きく異なっている。
漆塗りの産地は海に沈み、温泉で有名な場所も海の底だ。
UFOの町も海の底になっており、どんな天変地異が起こったものか。
そんな訳で金沢の平野がそっくり浅瀬になっており、その山手が今のケンロクシティになっている感じだ。
それとなく聞いてみると、隕石の破片が半島に衝突したらしく、温泉地帯をえぐって海中に墜落した後、火山活動で半島の形が変わったらしい。
そんな訳でUFOの町の原発も水没したらしい。
確かリアルだと、当時の原発でもあそこは加圧水型軽水炉だったはず。
だから水没しても炉心融解の危険もそこまで無かったろうと思われる。
もっとも、隕石の接近が告知され、その墜落予想地点になっていれば、運用停止ぐらいはしていたかも知れない。
24世紀の今となっては原子力も過去の遺物だけど、国内の過去の状況は学校で色々と習ったものだ。
今の主流は国の周囲にある、ほぼ無尽蔵と言われるメタンハイドレートでの発電になっている。
なんせ放置していたらメタンが空気中に混ざり、それが温室効果を促進させるとして、使ったほうが環境に優しいとか。
当時は利権の関係もあり、中々話が進まなかったらしいが、天災からの事故で少しずつ変わっていったらしい。
それはともかく、ケンロクシティでは自家発電クラスの核エネルギー発電装置を急遽備え付けたものの、発電量の関係から町を大きく出来ないらしい。
今回の使節でも発電関連の部品の輸送もやっており、これで修理がはかどるとか言っている。
どうやら技術レベルもお粗末なようで、精密部品の作成がやれず、おいそれと修理もやれなかったらしい。
基地に頼めば良いのに、変な意地を張っているものだ。
あそこは敷地だけは広いんだから、余剰人員の受け皿にして余った敷地を農地にすれば良いのにさ。
まあそんな他所の事情は気付かない振りで、やるべき事を終えた面々。
そのまま接待の宴会を断り、予定が押しているからと夕刻に出発になる。
どうやら慇懃無礼なトップの下の哀れな部下達からの陳情書を受け取ってあるらしく、シティの暗部の詳細な事情がそれで分かるらしい。
ゆくゆくは更迭になるのかも知れないが、それこそオレには関係の無い事と、軽く聞き流しておいた。
基地ではまたしても宴会になるらしく、いそいそと準備している面々を尻目に、オレは2本目の取得機器満タンを目指してハントを開始する。
この辺りは雑魚でも100ポイントクラスの怪物が多いようで、隠遁からの各個撃破で順調に溜まっていく。
素材も欲しいけど、今回は殺さずに核エネルギー確保が目標なので、止めは無しで放置した。
もっとも、流派の技もたまに出たので、そのままお亡くなりになったかも知れないけど。
そんな中、採集場を見つけて採取しようと思ったんだけど、見慣れない草を発見した。
《萌草》《愛草》《朽草》《崩草》
もえそう?
めでそう?
くちそう?
くずれそう?
後は《根草》……寝そう?
抜いてみると根っ子が素材のようで、上物は雑草らしかった。
《露利根》《初多根》
ああ、そういう流れか。
意図するところは何となく分かるが、どんな薬の原料なのかがイマイチ分からない。
それでもおいそれとは来れない場所の素材なので、核エネルギー確保はひとまず置いといて、採取をひたすらやる事にした。
アイテムボックスの中の大量のプランターを活用すべしと、ひたすらひたすら確保する。
その途中で見かけた雑魚は気絶させての核エネルギー確保をやりはしたが、血肉で他の雑魚を呼び付けるので殺しはしなかった。
かなりの量が確保され、時間も遅いので基地に戻る。
お土産にはなったものの、肝心のレシピが無いとどうにもならない。
これは今後の課題だな。
ちなみに食堂は死屍累々だった。




