16 不遇なるは時代の流れ
お茶していると戦闘職の面々が戻ってくる。
「お帰り、収穫は? 」
「まあ、それなりだな。それより、あれは倒したのか」
「忍法カマイタチ」
「あはははっ」
「実に良い刀でした」
「やっぱそうかよ。うんうん、大事にしてくれよ」
「愛刀になりました」
「おうっ、んでよ、あれをソロで倒せるなら第一線もいけるからよ、今度狩りに行こうぜ」
「そうだねぇ。意外と狩れそうだし、やれるかもね」
「スキルはどうなってんだ」
「戦闘スキルは無いよ」
「それでやれるのかよ」
「まあ、生産職だし? 」
「リアルチートらしいよ」
「ああ、それでかよ」
「錆びてますが」
「くすくす」
不遇なるは時代の流れにして流派にあらずってか。
そう言いつつも廃れた流派を習う者は無し。
挙句の果てに孫にそれを強要した結果、爺さんの死と共に味わった解放感。
もう忘れたと思っていたのにな。
オレの学生時代は爺さんの犠牲になったと思っていたが、意外なところで役に立ったな。
オレの親は爺さんの仕打ちを止めるでもなく黙認というか、普通に流していたっけな。
だからこそ学校を卒業して、逃げるように都会に出て、それっきり無しのつぶてか。
もう顔もあんまり覚えてないけど、親は親か、そうだよな。
いくらこっちがもうひとつのリアルと思っても、あっちの親を忘れるのも拙いか。
そうだな、そのうち里帰りでもしてみるか。
◇
それからも観光のように皆でワイワイと歩き、夕刻になって街に戻ってくる。
清算は特にやらないようで、またの参加を言われてひとまず家に戻った。
戦闘スキルか。
狩りをするなら剣術ぐらいはあったほうが良さそうだけど、リアルの経験でもやれるもんだな。
ステータスが100で100パーセントなように、リアルスキルもそれなりに適用されているのかも知れない。
だからこそ昔に覚えた流派の技も使えたんだろう。
それにしても。
思うままに動く身体での剣の舞は気持ち良かったな。
折角、業物も手に入った事だし、区切りが付いたらレベリングも良いかも知れない。
なにより気分転換に良さそうだし。
レベルは12になっているけどスキルはまだ覚えられない。
なんせ20ポイント必要って事は、レベル20まで覚えられないって事だ。
それでも先に洗浄か何かのサブスキルを先に取らないとな。
あくまでも戦闘は気分転換にしないと、折角の生産スキルが無駄になっちまう。
気分転換になりはしたものの、ずっと歩いていたから疲れたのか、シャワーの後でメシ食ってベッドに横たわっていたらそのまま寝ちまってた。
◇
目覚めると早朝の時間帯。
そろそろ身体を鍛える時期かと思い、今日から少し鍛錬をしようと思っている。
幼年の筋力造りは体格に影響を及ぼすから控えていたが、もうそろそろ良いだろう。
工房での運動で汗を掻き、シャワーを浴びて朝食を摂る。
「お前、回復薬はまだあるのか? 」
おっかしいな、今月分はもう納品したはずなのに。
「もう少し在庫はあるけどどうしたの? 」
「実はな、あの回復薬が人気でな、品薄になっているからもう少し増やせないかと言われていてな」
毎月1000本で足りないとか、個人工房にはきついノルマなのにな。
「来年ぐらいからならありがたいけど」
「うーん、そうか。まあ、無理は言えんが、今月分に追加で少し無理か」
確かに在庫は800本ぐらいはありはするが、あいつも100本増やせと言うし、こっちも増やしたら在庫切れになりそうな話だ。
それでも仕方が無いので今月追加で200本とし、隔月1200本の契約に更改する事となる。
「いや、悪いな。ここのところ、どうにも消費が多くてな」
「頑張って作るよ」
「いやいや、無理だけはするなよ。確かに今は元気になってはいるが、お前は元々身体が弱かったからな」
「うん、無理はしないよ」
「そうか、それならいいが。ともかく、200本の追加はありがたい。これで出張での不安が消えたぞ」
どうやら他の街への出張があるらしく、300回復の在庫が少なくて不安に思っていたらしい。
これはもうしばらくは忙しそうだな。
そして早く生産ラインを確立しないと、どうしようもなくなりそうだ。
「それでな、お前が毎月大量に返してくれるからな、借金ももうじき消えるぞ」
「え? もうそんなに返したっけ? 」
単価4000の回復薬を毎月1000で4ヶ月だよな。
返済が350万の4ヶ月で……ああ、もう1400万返しているのか。
それに追加で雑貨屋の単価2500で500本の分が1000万だし、良質な金属のインゴットの代金も納めているから、もうじき終わるのか。
いやはや、何とも早いもんだな。
「ああ、3200万だからかなりかと思ったが、お前は本当に大したものだな。まさか4ヶ月で返済するとは思わなかったぞ」
「じゃあこれからは貯金だね」
「使い道は決まっているのか? 」
「うん、もっと楽に大量に作れる機械を買いたくてね」
「ほお、ならばもっと増やせるのか」
「多分だけど、2000本ぐらい出せるかも」
「ほおお、それはありがたいぞ。それで、本当に辛くないんだな」
「うん、自動で大量に作ってくれるから、今より楽になるはずだよ」
「先に機械を据えないか? また貸してやるから」
「うーん、どうしようかなぁ」
「毎月2000ならばうちも余裕が出来る。今は割り当てにしているが、少し足りないぐらいでな、出張優先になっているのが現状なんだ」
「国の研究所からは出ないの? 」
「それなんだがな、1本1万Pとか言うんだよ。さすがに高くてな、お前はその半額だからありがたいんだ」
「それならメーカーと相談してみるよ」
「そうか、やってくれるか」
「うん、任せて」
国営の研究所なのにぼったくり過ぎだろ。




