15 不遇じゃなかったのかよ
会話だらけですみません。
あと、厨二全開なのはスルーしてね(汗
散々採取して大満足。
誰も採らないせいか、大量にありました。
少し歩けば草、また歩けば草って感じに、採取ポイントでは草のオンパレード。
手持ちのプランターが尽きる程に採れたので、これで当分は大丈夫だろうと思えるぐらいだ。
皆はゆっくりと周囲の景色を楽しんでくれているので、採取しても構わないみたいだ。
「大満足」
「おお、もう良いのか」
「うん、バッチリ」
「そうか、よし、次に行くぞ」
岬に登ると散歩道みたいなのが先まで続いている。
その先には建物があるが、廃屋だろう。
「あれがな、岬観測所跡地と言うか、まあ、廃屋だな。だけどその中から地下に降りれるようになっていてな、ちょっとしたダンジョンになっているらしいんだが、希望者は居るか」
戦闘職は軒並み希望するも、生産職はパスとなる。
「あー、そうなると護衛が要るな」
「お前、戦えるんだろ、なら兼用で良いだろ」
「ああ、それがあったな。どのみち怪物は滅多に出ないからよ、兼用で頼むわ」
「あいよ」
「2時間で戻るからな」
「それぐらいの役得は良いだろ」
「そうね、仕方ないわ」
「うん、まあ良いよ。僕も全然戦えない訳じゃないしね」
「武器無い? オレ、木刀しかない」
「木刀でウルフドックを倒したのかよ」
「ラッキーでした」
「それぐらい腕があるなら安心だろ。ほれ、貸してやる」
「刀か、良い武器を持っているな」
「お、気に入ったのなら買ってくれるか」
「いくらだ」
「そうだなぁ、まあ、50万で良いぞ」
「うえっ、高くないかよ」
「何言ってんだ。そいつは業物だぞ。100万で買った品なのにあんまり使ってねぇんだからな」
参ったな、まさかそんなに高いとは思わなかったな。
まあ、無い事も無いが。
「それならよ、こいつでどうだ」
「何本ある」
「50本」
「うーん、そうだなぁ、もう一声」
「75本」
「まあいいか、それで良いぜ」
「ありがと~」
「これから潜るにはありがたい品だぜって、おいおい、こりゃどうなってんだ」
「ちゃんと300以上回復だろ」
「数値がバラバラじゃねぇかよ」
「ああそれな、調整が面倒でな、適当に作ったやつなんだわ」
「お前、調理師かと思ったら調薬師なのかよ」
「医食同源」
「やれやれ、すっかり騙されたな。まあ、そういう事ならまた頼むぞ」
「割高で良いならな」
「ああ、構わないぜ」
「おいおい、オレにも売ってくれよ」
「何か安く売ってくれる? 」
「何だよそれ。作ってるんなら売れよな」
「基本的に一般売りはしてないんだ。今回は武器の代金で払ったんた。そして馴染みだから割高で売る話だ」
「ならよ、この鎧はどうだ」
「重くなるから要らない」
「防具無しで戦いになるかよ」
「なのに兼用とか言うんだな」
「うっ、それは」
「今はまだ大量には作れないんだ。だから一般売りはしない」
「そうなのかよ」
「今でも毎日ひたすら作ってるよ。皆が戦いとかイベントとかやってる時にもな」
「それであの数か。予約になっているが、毎月500本は1人でやっているんだな」
「不遇じゃなかったのかよ」
「創意工夫だよ」
「オレもやるぞ、調薬。んでたくさん作って大儲けだ」
「はいはい、頑張ってね」
「ふん、そのうちシェア奪ってやるからな。売れないと泣くなよ」
「うん、泣かないよ」
「舐めてんじゃねぇぞ。覚悟しやがれ」
「おらおら、行くぞ」
まあ、作れると思うなら作るといい。
βテスター全滅の事を忘れているようなら好きにさせるさ。
どうせ仕様変更になったとか思っているんだろうが、そんなに運営も甘くはないさ。
もちろんちゃんと洗浄して作るならそれも自由だし、調薬が採算立たなくても問題無い。
オレは本当は錬金術師なのだから。
戦闘職が全員中に入った後、テーブルと椅子を出して並べる。
さて、景色を見ながらお茶でも飲みますかね。
「君、用意がいいね」
「あら、ありがとね」
「お菓子もあるよ」
「あはっ、ありがと」
景色は良いが、船が一艘も走ってない海と言うのも物悲しい。
人の存在が無くなった場所でも、木は茂るし花も咲く。
こんなに怪物が出ない場所なら、住めそうなものだけどね。
それでも人は安全を求め、都市の中に閉じ篭っているんだな。
雑談とお茶の最中、招かれざる客がやって来る。
ああ、全然来ない訳でもないのか。
食器を片付けてテーブルを倒してガードにする。
左右に椅子を置いて簡易砦の出来上がりだ。
「本当に用意がいいね」
「オレが飛び込むから彼女を頼む」
「あいよ、任せて。彼女は僕がガードするよ」
さーて、買った武器のお披露目だな。
スラリと抜けば実に斬れそうな刃だ。
ふむ、久しぶりだが、やってみますかね、剣の舞を。
学生時代以来だが、まだ覚えているといいが。
正眼に構え、近づく敵を回避して斬る。
囲まれたら終わりなので、複数の場合は回避が必須になる。
避けて斬り、また避けて斬る。
やっているうちに当時のカンを取り戻し、次第に剣の舞になる。
ああ、思い出して来たな。
『峰下ろし』
峰打ちなのに急所を叩くので、結局死んでしまう外道技。
『天変』
柄で相手の急所をえぐる外道技。
『狭霧』
刃先を小刻みに動かし、気を散らして奇襲する外道技。
足癖が悪いと言われる技であり、気を散らして蹴りとかも良く使う。
◇
「お見事」
「凄いわね」
「いやぁ、昔取った杵柄ってやつかな。まだ覚えてて良かったよ」
「そうなんだ」
「いわゆるリアルチートってやつかい? 」
「かなり錆びてるけどね」
「充分だと思うよ」
それからまたお茶の時間となったのでした。