11 不遇な調薬師は何人?
色々な指摘ありがとうございます。
アルバイトも1ヶ月近くになり、精錬した銅インゴットによるアイテムボックス貯金も少しずつ増えていく。
鉄の量も少しずつ増えるが、銅の量が余りにも多く、時々売りに行かないとアイテムボックスが満杯になってしまうのだ。
仮置き場である資材置き場だけど、今では正式に借り受けており、年払いで10万Pとなっている。
なので纏めて大量よりは時々少量のほうが良いので、ジャンク屋とも正式に契約し、溜まったら運んでもらう手筈になっている。
そしてインゴットを売りに行った時に都度清算となり、差額を受け取って帰るという訳だ。
量が増えた事で運送費用も払う事になり、それも差し引いている。
今までサービスだったものが有料になったのも、成人の証だと割り切っている。
回復薬も300回復がコンスタントに作れるようになっており、雑貨屋での買い取り価格は2500Pになっている。
それと言うのも3000Pでも購入者が多く、予約制になっているぐらいなのだとか。
なので本当は値上げしたいぐらいだけど、お得意様を大事にしたいから価格据え置きで予約制が精々だとか。
なので取引量を増やして欲しいと再三言われるが、父さんも大絶賛であらかた買ってくれるんだ。
父さんのほうは役所なので多少ぼったくりでも構わないと言われ、返済のつもりで今月はもう1000本卸している。
それが単価4000で売れるので返済は順調と言って良いだろう。
毎月400万のうち、350万を返済に充て、50万は家に入れている。
そうすると稼ぎが消えるようだけど、そこはインゴット様の恩恵がでかい。
「そんなにたくさん返さなくても良いのだがな」
「借金が無くなれば貯金もするよ」
「そうか、だが、本当に300回復はありがたいぞ。父さんもな、あれで助かった事も1度や2度じゃなくてな」
「そんな無理はしないでよ」
「ああ、ありがとうな」
その後、父さんはオレのマジカルフィンガーで健やかなる眠りに就いた。
やはり疲れているらしく、「効くなぁ」とか「おー、そこそこ」とか気持ち良さそうなので夢中でやっていたら眠っていたのである。
マッサージを毎日やっているせいか、握力がやけに強くなっており、ステータスも伸びているようだ。
レベルは相変わらず1のままだが、ステータスには関係が無いようで、かなりの数値になっている。
本当は少しはレベルを上げても良いのだが、どうにも狩りが面倒でならない。
そんな事をしなくても稼ぎにはなっているんだし、特に必要を感じないと言うかな。
あいつは今では15ぐらいになっているらしく、かなりの強さのようだ。
やはり回復薬が自由に使えるのが大きいようで、オレの失敗作はあいつが消費している。
最初は145回復とか168回復とかの失敗作を渡していたが、今では300を少し切れるぐらいの失敗作になっている。
これで滅菌がいけたら500も夢では無さそうで、先々の楽しみのひとつだ。
本当にどんだけ雑菌が邪魔してんだよと思うが、そんな設定にしたせいで調薬師が不遇職になったんだろうが、さすがに盲点だろそれは。
確かに今までのゲームでは調薬で機材を洗う事すらあんまりなくて、薬草もそのまま使うのが当たり前なゲームが殆どのはずだ。
だから盲点だろうと言うんだけど。
ガラス瓶を洗って薬草を洗って、それで作るだけでそれなりに作れるってか。
この洗うと言うのが盲点だったんだろうな、βテスターの連中は。
だから作成秘話でも薬草の量を増やしたり、ひたすらすり下ろしたり、純水を使ってみたり、煮詰めてみたりと色々やっていたらしい。
確かに純水は正解だが、肝心の機材や素材が汚れていたのでは何にもならないのがこのゲームの仕様。
普通に考えれば使用前の洗浄は当たり前のようだが、なまじゲーム慣れしていた者達のミスと言って良いだろう。
それにしても、他に誰も出ないと言うのも寂しいもんだよな。
300回復を流しているのに、運営からとか思っているようだし。
そろそろ書いても良いぐらいだけど、自力発見して欲しいと思うからあえて出さない今日この頃。
やっぱりね、発見したら嬉しいものだし、その体験のチャンスは奪いたくないんだ。
モチベーションにも関わると思うしね。
実は300回復ピッタリに合わせる方法も発見したんだ。
それは実は簡単な話で、加水の量で調整出来るんだ。
なので今は原液で500が近く、薄めて300ピッタリになるようにしている。
さすがに原液は飲めないから無理だけど、それでも良いと言うなら原液で出しても構わない。
だけど滅菌をすれば原液の数値も更に上がるはずだし、適量での500も夢じゃないと思うのさ。
借金が消えたら貯金を増やし、いつかは揃えるぞ滅菌ライン生産。
◇
-情報掲示板・調剤板-
「今、何人居るんだよ、調剤師は。手を挙げろ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「おいおい、誰も居ないのかよ。だったら雑貨屋の300回復はどうなっているんだよ」
「運営からじゃねぇの」
「そういや、国の機関で研究とか出てたな」
「ああ、それが実装になったって事か」
「何だよ、てっきり調剤師がやったのかと思っただろ」
「無理言うなよ。確かに調剤師らしき奴が80回復を売ったらしいけどよ、いきなり300は無理があるだろ」
「まあそうだよなぁ」
「しっかし予約制は痛いよな。大量生産じゃねぇのかよ」
「そこはほら、大量に使えばゲームが楽になっちまうだろ」
「運営もそれぐらいは考えるよな」
「ならよ、そのうち精神回復薬も出るのかな」
「出て欲しいぜ。スキルが使えなくなったらヤバいもんな」
「それにしても、薬局では売ってないのな」
「薬局にあるのは頭痛薬だの風邪薬ぐらいだろ」
「せめて湿布薬も欲しかったぜ。打ち身が治らなくてよ」
「そうだよな。回復薬で治ると思ったのに、飲んでも治らないのな」
「あれはHPを回復するだけの効果だろ」
「薬草を揉んで塗ると良いんじゃねぇのか……by ドラ○エ」
「おお、成程な」
◇
「えへへぇ、役得役得」
「人には言うなよ」
「分かってるって。でも、あんまり失敗しなくなったね」
「まあな、300以上をキープするのにもかなり慣れたしな」
「でもこれ、294回復って惜しいよね」
「ちょいと薄め過ぎてな。300が最低ラインだから、そいつは売り物にならんのさ」
「本当にタダで良いのね」
「陶芸なら叩いて割るところだが、使えるからには譲ってやるさ、極秘でな」
「ありがたいわ。ホントに回復薬も100じゃもうどうにもならない時もあるしね」
「あんまり無理するなよ。デスペナも重いんだしさ」
「入院になったらお見舞いに来てくれる? 」
「縁起でも無い事を言うな」
「ごめんごめん、でもさ、そういうのも励みになるのよ」
「ならよ、試作料理持参で見舞いに行ってやる」
「うわぁぁぁ、絶対に死ねないわ」
「くっくっくっ」
◇
デスペナルティ
リアルな世界を実感させる為、デスペナルティは非常に重い。
まずはリハビリと称する期間、病院入りとなり、内部時間で48時間は退院出来ない。
入院費もかなり必要になり、払えない場合はハンター資格が停止となり、強制労働の必要がある。
強制労働
都市地下の銅鉱脈の採掘。
環境が劣悪なので犯罪者向けの強制労働となっている。
1日働けばいくばくかの金になるものの、返済満了まで出られない牢獄と言っても良い。
核エネルギー
原子力とは全く違うエネルギーなのに同じ名称になっている訳は原子力発電所で使える燃料だからであるが、放射性廃棄物を出さない理想的な燃料となっている。
もちろん通常の原子力発電所を改造して使えるようにした為であるが、従来クラスの発電量が確保出来るのに燃料棒は必要が無く、クリーンなエネルギーな上に放射性核廃棄物も出ないとあって、この世界の主流なエネルギーとなっている。
怪物の核から得られるとあって、専用の採取機器で怪物の心臓部分から採取される。
強力な怪物程、持っている核エネルギーは多いとされ、金に目が眩んだ無謀なハンターの死亡率は年々上昇傾向にある。