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枕元

「いや、だから〜」


「もう私の枕元に立つのはやめてくださいよ、奥様」


「一使用人の私にこのお屋敷の跡継ぎのフィルウェム様の結婚を止めることなんてできませんよ」


お願いです、ルモーネ、我が家の宿敵であるブラン家の影の手下でありながら、それを隠して娘を嫁がせて入り込み我が家の持つ城の堀の水利権を奪おうとしているカクシェ男爵の悪巧みを暴けるのはあなたしかいないのです


「どーして私なんです?」


「ご当主のサシュ様やご子息のフィルウェム様の枕元にた立って忠告すればいいじゃないですかぁ〜」


毎晩立っているのですが気づいてくれないのですっ

あの二人はっ

鈍いとこあるからっ


他の人のところも回っているのになぜかあなたしか私の存在に気づいてくれないの


「しかし奥様、よくいけしゃあしゃあと私の枕元に立てますね」


「フィルウェム様かどうしても私と結婚したいと言った時、一番反対したのは奥様ですよ」


「ご当主さまは渋々認めて下さろうとしたのに…」


「あの時結婚を認めてくださればそんな変な妄想にとりつかれなくてすんだんじゃないですか?」


「だいたい奥様が何が何でも私とフィルウェム様の結婚を阻止しようとカクシェ様のご息女とのお見合いを推し進めた張本人じゃないですか」


「その結果フィルウェム様はカクシェ男爵のご息女に心奪われ、私は捨てられた…」


「あ〜自分の思った通りになったわ〜、めでたしめでたし、でいいじゃないですか」


「うっかり階段から落ちてお亡くなりになったのはお気の毒だと思いますけど」


「まあ、カクシェ男爵のご息女にとってはそれは好都合だったかもしれませんね?」


「この世で一番いらない存在ですからね、姑って」


もうっ

意地悪っ


私が階段から落ちたのだって、カクシェ男爵の娘の仕業に違いありません

すごくツルって、まるで氷の上みたいに滑ったものっ

絶対なにかあそこに塗ってあったのよ


このままでは夫も息子も私と同じように殺されてしまう!


「いや、私あの後階段を確かめましたけどいつもとなにも変わりありませんでしたよ?」


「木が少しささくれていて、なんならあの場所が一番滑りにくいくらいでした」


「ただ奥様がドジしただけじゃないですか」


「結局女親って息子の嫁になる人間はどんな女でも気に入らないものなんですよね〜」


「あー、やだやだ」


失礼ねっそんなことないわよっ


「…そうだ、奥様、私一つ疑問があるんですよ」


「聞いてもいいですか?」


なあに?ルモーネ


「奥様が亡くなった後の執事のフィルークの嘆き方が尋常じゃなかったけど、奥様とフィルークの間柄って…いわゆる世間一般に言う不適切な…」


「あっ、消えた」


もう…

都合が悪くなると消えちゃうんだから

奥様の自分勝手な性格は幽霊になっても変わらないんだな


ほんとに堪忍してほしいよ

毎晩毎晩肉体労働者の貴重な睡眠時間を奪って


ふ…愚かな奥様


ブラン家の手下であるのはこの私なのに…

階段にロウを塗ったのも…


オーホッホッホッって意地悪く高笑いして脅してやれば良かったかな


あ、もちろん嘘だけど


だいたい奥様はわかってない

もしカクシェ男爵父娘が本当に悪者だったとしても私がそれを忠告できると思う?


フィルウェム様の元恋人の私が…

そんなことしたら新しい恋人との仲を引き裂こうとしてると思われるに決まってんじゃん


あーもう寝よ

明日も早い


布団に入ってうとうとした時私はあの日の光景を思い出した


自分の豪華なドレスを見せびらかそうと階段をジグザグに降りるクセのあった奥様…

何か観察するような目でいつも奥様を見つめていたカクシェ男爵のご息女…


奥様が階段から落ちた時もいた


で、奥様が階段から落ちた後、奥様の許に階段の上から駆け寄る途中あっと声を上げた後に気を失って倒れた


ちょうど奥様が…足を滑らせた付近で…


あの時みんな動かなくなった奥様の救護に必死で彼女のところに駆けつける者はいなかった


もしかしてあのとき倒れるふりして階段に塗ったロウを拭きとっていたとか?




あれ?

これは、怪しい…







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