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スワローテールになりたいの  作者: 佐伯瑠璃
第2章 ファイターパイロット
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ドックファイト

あくまでも作者の妄想でのドッグファイトです。

事実とは異なります。

無線の会話は本来英語です。

しかし、この作品では日本語で記します。


思ったより訓練は順調で、このまま行けば4月末には築城基地に異動してもついていけるだろうと思う。

天衣は3月末付で、松島基地を離れ既に小牧基地に配属になったと聞く。

新しい環境できっと緊張して、ガッチガチに力んでいるに違いない。そんな、天衣の姿を思い浮かべ今日も訓練に出る。



「本日は4機にて実践訓練(ドッグファイト)を行う!リーダーとウイングマンの組合せを発表する!」



ウイングマンとは操縦する人間で、リーダーとはそのウイングマンに指示を出す人間の事だ。リーダーは敵の位置を確認し、動きを読みウイングマンを誘導する。相手の後ろを捉えロックオンした方が勝利となる。

先を読む能力と瞬時の判断力が必要となる。



「申し訳ありませんが、リーダーは必要ありません」


俺がそう言うと、周りはザワついた。それでも俺は気にしない。

スクランブル時は2機で発進するが、乗務は一人の事もある。それを思えば、リーダーからの指示を待つより自分の判断で動きたい。


「沖田、リーダーが要らないって。一人でやるつもりか!」

「はい」

「……」

「教育期間中のリーダーなら不要です。よりリアルな形で訓練をしたいと思います!」

「いいだろう。リーダーなしで後悔するなよ」

「はい!」



使用機材はF−2戦闘機。小型で高性能なこれは俺の操縦のしかたに合っていた。敵機を躱す時のブレイクもループもT−4ブルーインパルスと変わらない、否、それ以上に反応がいい。

耐Gスーツを着用後、メットを抱えてゼロワンに乗り込んだ。


チームAがゼロワン(01)、ゼロツー(02)

チームBがゼロスリー(03)、ゼロフォー(04)



ー ゼロワン、コンタクトチェック

ー こちらゼロワン、コンタクトクリアー


各機体、無線状況の確認が終わり離陸準備に入る。


ー チェック、オッケー。


全ての離陸準備が整った。


ー 離陸を許可する

ー 離陸許可、確認



ゴゴゴーと振動が体に伝わり、滑走開始。機体は直ぐに浮上、車輪を収納しテイクオフ完了。

ドッグファイトは2機でワンペアとなる。

互いが上空で交差し、旋回した瞬間がゲームスタートとなる。

天衣はこの空を飛びたかったと言う。命懸けの空での戦闘(ファイト)に本気で挑もうとしていたんだよな。医師から止められたパイロットへの道、どれほど悔しかっただろう。俺はここに来るまで大した壁に当たらなかった。家族以外では。


「見てろよ天衣。2機ともケツから撃ち抜いてやるさ」


4機全てが離陸した。二組が背を向け飛び立ち大きく旋回する。


ー 間もなくクロス

ー 了解



ギューンッと両組交差し、旋回開始、ゲームスタート!

敵機の後ろを狙うべく激しい攻防が始まった。


天気は晴れ、風はほとんどない。所々に雲はあるが、視界に影響するほどでもない。

ほぼ、有視飛行で行けるはず。相手は一機が訓練生、もう一機は三沢基地に配属予定と聞く。俺は敢えてリーダーを断った。リーダーなんて不要な事を証明してやる。



― こちらゼロワン、ゼロツー状況はどうだ

― こちらゼロツー、ゼロフォーの後尾を狙っている。2時の方向に目視確認

― 了解。


「ゼロフォーの後尾か.....ゼロスリーは何処に行った。俺の周辺にはいないぞ」


レーダーを確認するとゼロスリーはまだ目視確認できない距離、ゼロツーの後方にいた。見ればジリジリと距離を詰めてくる。


「なるほどな、こっちが挟み撃ちか。そうはさせるか」


俺は上昇し、ゼロスリーの後方を狙うべく雲の中に隠れた。ゼロスリーが味方の機体をロックする前に俺が下降して揺さぶってやる。それまでにゼロフォーの後尾を追い続けることが出来ればだが。


― ゼロワン、こちらゼロツー。今何処だ!

― こちらゼロワン、あんたの上だよ

― は?

― 俺のことは気にするな、ほら振り切られるぞ。ゼロフォーのケツちゃんと追えよ

― ちっ


雲は途切れ途切れで時々機体が見え隠れする。相手は三沢に配属されるだけあって、逃げるのが上手い。

ブレイクの仕方も、高度の上げ下げも並じゃない。このままではゼロツーは振り切られる。それだけじゃない、タイムオーバーになる可能性だってある。俺は時計を見た。時間は限られている。ここの空は民間機の航路とも重なる。急がないと。


「あと5分か.....待てないな」


俺は高度を上げ、エンジンを焚いた。ゼロツーが後尾を取られる前に、俺がゼロフォーを捕らえればいい。

雲の上を飛ばし、ゼロフォーの機体を目下に確認。まだ気づいていない。


「リーダー、何処見てるんだよ。くくっ」


あまり様子見ばかりしていては味方のゼロツーが後尾を取られる。ゼロスリーは今何処だ。

計器で確認すると、ゼロスリーはもう後ろに迫って捕らえようとしていた。


「早いな。あいつ素質がある」


― こちらゼロワン、ゼロツー9時の方向にブレイクしろ!ケツ狙われてるぞ

― っ……ゼロツー、了解!


ブレイクした瞬間、俺は高度を下げた。目の前から機体が消えれば必然的にゼロスリーもブレイクし、ゼロツーを追うだろう。その隙を狙って、前方にいるゼロフォーを俺が撃つ。

ひとつの事ばかりを追い続ければ、背後を取られる。分かっている!でもっ、追い続けなければ何も始まらないって!


雲の中から一気に下降した。スピードが勝負だ。そしてバーナー全開でケツを突く。


ピピピピピッ 


警告音が鳴り響く。Gが過度にかかったという証拠だ。

これに耐えなければ敵は撃てないっ。


ピピッ、ツー


「見つけた!」


― ゼロワン、敵機を発見(ターゲットインサイト)。 ロックオン!

― くそっ


ピーピーピーピーピー と模擬撃墜音がなる。

成功だ。



― こちら浜松管制塔。民間機ヘリ、5時の方向より接近中。4機とも基地に帰還せよ

― 了解!


タイムオーバーだ。1機しか落とせなかったのが悔やまれた。



     *



2機仕留められなかった事を悔やみながら帰還。これからデブリーフィングと言って反省会をする。反省……ね。


「今回はチームAが勝ったわけだが、沖田。あれは何だ!」

「あれとは何でしょうか」

「雲の中に隠れるなど誰が教えた!隠れんぼじゃないんだ。僅かな操作ミスは自分だけでない、下にいる仲間も巻き込むんだぞ!」


はいはい。僅かな操作ミスなんてしてたまるか。伊達にT‐4ブルーインパルスで展示飛行して来てないんだ。本当は背面でピッタリくっついてやっても良かったんだけど。



「はい!すみません」

「お前の腕は分かった。確かにリーダーはいらないな。無駄に死人を増やさななくて済む。それから他っ!沖田一人に踊らされてるんじゃないぞ。特にゼロツーのリーダー!」

「はいっ」

「お前が先に後方確認してブレイクの指示だろうがっ」

「はい!」



はぁ……早く築城基地に行きてえ。結局、俺は一匹狼なんだろう。

誰かに指示される事、誰かに押し付けられる事がダメだ。

なのに、その誰かが天衣なら構わないって思ってしまう。教官のガミガミ声が遠くに聞こえる。



『千斗星っ、ちょっとやめて!』

『千斗星、千斗星』


くくっ、天衣の声が聞こえてきそうだ。築城に行く前に、小松に寄るか。生の天衣に会いたい。触れておきたい。

俺はデブリーフィングの間、そんな事ばかり考えていた。


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