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花吐き、花咲く

作者: くじら

この前書きを読んでくださってありがとうございます。二作品目の短編です。今回はかなり短めの作品となっています。


題名どうり花を吐く

描写があります。

ぬるいですが恋愛表現もあります。


相変わらずの拙い文章ですがぜひ読んでください。


誤字脱字の指摘、感想など待ってます。






 少年は花を吐く

病にかかっていた。


その病を治す方法を彼は知らない。


彼はその病で

損をしたことも得をしたこともない。


彼はその病で

不幸を感じたことも、



幸福を感じたことも

なかった。



「私もね…

同じ病気なの…。」



ある日、道端でたまたま少年を介抱した通りすがりの少女は言った。


彼女も少年と同じで

花を吐くらしい。



「私はこの病気が

すごく嫌なの…。」



少年の目の前、黒い髪が揺れて少女が

伏し目がちに話す。


この病で、

どうやら彼女は不幸を感じているようだ。



「貴方が吐く花はとても綺麗なのね。貴方の髪と一緒で、白くて

凛としている…。」



少年は年齢にそぐわないこの雪色の髪を褒められたことがなかったので、

なんと反応していいかわからない。


同時に自分の吐き出す花を綺麗などと言われたこともなく、ましてやそう言われたあとのかすかな胸の高鳴りなど

少年は今まで味わったことがなかった。


だがその高鳴りはどこかあたたかく、少年は不思議とそれが嫌いでは

なかったのだ。


不意に、少女も肩を震わせて咳き込み始める。 口元を押さえる手の中から紫の花弁がはらりと

落ちた。



「あ…。」



少年は思わず声を上げる。


息苦しさに

目を潤ませる少女、


はらり、ひらり、

白、紫、黄、青、


少女は色彩豊かな花を

吐いていく。


その淡い色があまりに美しくて、刹那、少年は息をするのも忘れていた。


「やだ…汚い…。」


「汚くなんかない。あんたの花だって綺麗だ。」


これは少年の

紛れもない本心。


少年にとって自分の吐く花は色の無いものであり、だから少女の吐く色とりどりの花が

美しく見えるのだ。



「私の花が…綺麗…?

そんなわけないわ…。」


「すごく綺麗だよ。

嘘じゃない。」



「どうして…!」と、泣き出しそうな少女の手を少年はぐっと握り、

少女の目を真っ直ぐに

見つめた。






「あんたが…

あんたが綺麗だからだ!」






少年の言葉が少女の耳に届き、彼女の翡翠のような瞳がぱっと明るく

なった。


「…私…が…?」


「ああ、そうだ。」


「…嘘…じゃない…?」


「嘘じゃない。」



頬をやや朱に染めて、恥じらうように目を逸らした少女がどうしようもなく愛おしくなって、


少年は少女の華奢な身体を抱きしめる。


離したくないから、

強く。


壊したくないから、

優しく。



「ありがとう…!

私ね…今ね…

すごく幸せ…!」




少年の胸に再び、あたたかな高鳴りが訪れた。





花を吐く病にかかる

ひとりの少年と、

ひとりの少女。


この病を治す方法を

彼らは知らない。


彼らはこの病で

損をしたことも得をしたこともない。





この病で少年は幸福を

感じたことはなく、

少女は不幸を感じていた。



しかし今、自分たちが生み出した美しい花に

囲まれながら、


少年は少女を抱きしめ、

少女は少年の腕の中で、



彼らにしか共有できない

幸福を感じている。







ここまで読んでくださった方へ、本当にありがとうございます。


改行や段落など読みにくい点もあったことと思いますが、最後まで読んでくださってありがとうございました。


感謝の気持ちで

いっぱいです。


誤字脱字の指摘、

感想など遠慮なく

送ってください。


ありがとうございました。



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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは(*^_^*) かなり遅くなってしまいましたが、お邪魔させていただきました<m(__)m> 花を吐くというのは、美しいような気もしますが、本人たちにしてみれば、苦痛を伴うことな…
2015/05/10 15:00 退会済み
管理
[良い点] 花を吐くという病が、綺麗さと残酷さの両面を持っていて、物語に引き込まれました。 [一言] 二人が不幸ではなくなったわけではないけれど、誰よりも強い理解者を得られたラストが、少しだけ救いがあ…
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