第9話 水属性集約魔法と実戦
「おい。魔法、魔法術の授業だぞ。レキス、先にレシアーも行っちまったし早く行こうぜ」
立ち上がると、机と椅子がガタッと音を立てる。
教室の入り口を潜りながら最近何かに掛けて、レシアー、レシアー。ルッセントが発しているような。
早熟?
そんな気がしていた。
学校の裏庭で集合。
特別進学枠での授業は、そこそこ為になる。
魔力循環の法則。
この世界には魔力が巡っている。この現象において――
法則の中で1番長い論文として知られ、家の書庫にある本。
その中でひと際分厚く、20刊セットで存在していた。解かり易く言えば、辞書並みの分厚さだ。
3刊までしか読んでいない。
その魔力循環の法則を要約して教えてくれたのが、グラオ・ガイナス先生だ。
今回で48回目の特別進学枠での授業。グラオ・ガイナス先生の年が気になっていた。
見た目は、20代前半で煉瓦色の髪と筋肉隆々な体を持った、熱血かと思っていたら。やる気のない言動も取る謎の先生。
頭も良く、物事を判り易く教えてくれるところは尊敬している。
嫌いなところは、無駄口を叩くこと。
ふと思いついたように嫌味を言うグラオ・ガイナス先生の性格は嫌いだ。
「我が力を変換し『水流』発動せよ」
レシアー・カレリスの右手に輪っか状の水が出現。普通に無色透明だ。
「我が力を変換し発動せよ『水流』」
ルックの右手に輪っか状の水が出現。
数秒後、同時に魔法を消した。
「詠唱文に独自の読み方をする。暇があったら、新しい魔法、魔法術を覚えるべきだからな。良し、誰かこの発動方法を説明出来るか?」
挙手。
「レキス。言ってみろ」
「レシアーちゃんが発動した方法は、先告発動法。ルックが発動した方法は、後告発動法です。両方とも正しい発動法になります」
「相変わらず。正確に答えてくるな……早速だが、実戦を体験して貰う」
騒ぎが起こる。グラオ・ガイナス先生は気にも留めることなく説明を始めた。
「誰も居ないようです」
「レキス。先にガイナスをやろうぜ」
「……一旦。しゃがみませんか?」
全員でセイヨウタンポポを踏みつけながら、しゃがんだ。
前を見れば、葉っぱが生い茂っている薄暗い林。
ルックから聞いた話だが、この林は生徒達に魔の林と言われているようだ。
小学生が考えそうなことだな……。
右側から、草木を揺らす音が流れてきた。
『我が力を変換し発動せよ“水流”』
右手に輪っか状の水を出現させ、形を球体に変える。
最近知ったのだが、水属性の魔法は発動後に形を変形させることが出来るようだ。
木にあたり弾ける。
「うわ!」
「ラジレロワか?」
「状況が落ち着いたら。林の中へ入り、集まって移動します」
「はい」
レシアーちゃんが返事をした。
「ラジレロワか……」
「ラジレロワじゃありません。ガイナス先生です」
「嘘だろ!」
ルックが驚く。
「我が力を変換し『水弾』発動」
『中級の攻撃魔法術をお前が、使用するなと言っておきながら自分は使うのかよ』
耳元を水弾が掠め、木に当たり木片を撒き散らす。
「私の力を変換し発動せよ『水撃』」
レシアーが、ガイナス先生の足下を狙って攻撃。
「我が力を変換し『水流』発動せよ!」
ルックが詠唱。左から足音。
マリトクとラジレロワが草木の間から出現した。
ルックの右掌上で球体に変わった水が、ルックの手から放たれる。
マリトク・ラジメルに直撃する前に、弾けた。
「何だ?」
「我が力を変換し発動せよ『水流』と『水流』!」
ラジレロワが両手に魔法を発動。
レシアーと俺を狙って球体状の水がラジレロワから放たれた。
「『水流』と『水流』」
水と水が空中でぶつかり、弾ける。
一瞬、屈折率の影響を受けたのか光差し込む林の中で虹が描かれた。
ルックがラジレロワの魔法を相殺してくれたようだ。
「ありがとう。林の中へ入ろう」
2人から返事を貰い、俺達は林の中へと入っていった。
伏撃を考え、窪んだ場所で隠し待ち伏せしていたら。ガイナス先生がやってきたので集中攻撃。
現在、俺達は遊撃戦を行う為。魔の林から一旦離れ、ラジレロワとマリトクの背後に迫っていた。
俺が説明して、2人に行わせているだけだが。結構上手くことが進んでいる。
多数の足跡で形成されたと思われる、道が目の前に現れた。
「おっ、普通の道がある」
「ルック。静かに話せ!」
小声で呟く。
「了解……」
ルックが静かに返事をした。
雑草のない荒地を歩く。
草が揺れる音。
「うん?」
草が大きく揺れる音。
「右後方!」
全員で音がした方向に体を向ける。雑草を揺らしながら出てきた人物は、ガイナス先生だった。
「何だ、お前らか」
後方に気配を感じる。
「我が力を変換し『水流』発動」
ラジレロワの声。
「『水流』」
右手に水流を出現させながら、後ろへ振り返る。
意思の合図で、水を飛ばす。
ラジレロワの水と俺が飛ばした水。2つの魔法が何もない空間で激突し弾ける。
マリトクが右手を前に出し詠唱。ラジレロワも同じように詠唱。
「我が力を変換し発動せよ『水壁』!」
ルックの中級魔法で飛んできた魔法を水壁が防御。
「数日前に、先生から教えて貰った。中級の魔法をもう発動できるのかよ!」
「1回聞いて。家で練習すれば、数10回の練習で発動出来るぞ」
「それ嫌味か……」
直ぐルックに謝られた。
数回魔法を相殺する。ラジレロワとマリトクの動きが、遅くなったような気がした。これが魔力保有量の差だな。
「我が力を変換し発動せよ『水流』と『水流』」
両手にひとつずつ水属性魔法を発動。
2人に駆け寄る。
蹴りつければ足が当たる距離まで接近。
「俺達の勝ちです」
2人の前に合わせた、水属性集約魔法を消す。
水滴を撒き散らすこと無く、消失した。
ラジレロワとマリトク、ガイナス先生のチーム。
俺とルック、レシアーのチーム。
3対3のチーム対抗戦が終わった。
『バランスが悪いような……』と思いながらもガイナス先生の下へ向かう。
「優秀、優秀。この実戦は、移動しながらの魔法発動を行う訓練だ。全員素晴らしかった。明日は光属性精神力魔法、障外壁だ。以上、解散!」
全員で先生にお礼を述べ、解散。俺はルック、レシアーと一緒に教室へと向かった。




