第39話 退院祝い
首に装着されたコルセットみたいなものと、ギプス包帯が取れミファーネと同じ日に退院。
カレリス総合病院を出た瞬間、驚愕した。
煉瓦道の真ん中に巨石が減り込んでいた。「嘘だろ……」と小声で呟く。
直ぐにレサーナが口を開いく。
「土属性集約攻撃魔法術は、発動後も消えないことが難点ですね」
帰り道。冒険者ギルドがあるライツ2丁目は、殆ど更地になっていた。
レヴァン曾お爺ちゃんとルリラスが出迎えてくれた。本当の意味で生き残れたと感じたのは、家に足を踏み入れた瞬間だった。
右手にお箸を持ち、それを口に運び噛む。ただ黙々と、5人で鯛の塩焼きと白ご飯を食べる。
ギプス包帯と包帯が巻かれている、ファリルには汁物は作らないよう。派遣家政婦に伝えていた。
ルリラスを除いて咀嚼音を立てないようにし、食べる。
ファリルがルリラスの鯛の切り身。それをお箸でほぐす。
ルリラスが慣れないお箸を使って鯛の身を食べた。
精暦1709年2月23日。ファリル・クリヒヤのかなり早い退院祝いを兼ねた晩ご飯だ。
回復力の高さに驚く。
レヴァン曾お爺ちゃんは、王国調査の仕事で数ヶ月ほど帰れないらしいがホワイトゴブリンとの戦い。
その時、ルリラスのお世話をしていたようだ。
眠ったルリラスを除いて、4人で雑談していた。
「そうだ。全員揃いましたので、ホワイトゴブリン討伐に関する報告を」
レサーナの話に集中する。
「今回の戦い。私達は犠牲を払いましたが負傷者、死亡者共にゼロです」
冒険者ギルドの避難命令が良く機能したからな。
「依頼達成報酬で、3億セイルをいただきました。今回の戦いで倒壊した種物1万5487棟。
半壊した建物1560棟、建物の損壊832棟。冒険者ギルドフォスターマウント本部の完全倒壊。
王国魔力灯、魔法刻印銅版。王国煉瓦、王国道路標識。
その他、諸。請求額64億5784万6271セイル。
冒険者ギルドの保険から2億セイル出ます」
「……嘘だろ……。全然足りていないじゃないか!」
「話を最後まで聞いて。冒険者は全王国認定冒険者ギルド全法によって、保険を含めて3億セイル。
3億セイルまでが補償上限です」
明らかに冒険者が優遇され過ぎな、法律だ。
「一体、誰が残りの補償をするんですか?」
ミファーネが訊ねた。
「アスリック王国ね、では報酬の確認をしましょう」
「転送魔法」
テーブルの上に札束と装備品が出現した。
「へっへ、札束の山だぜ」
ファリルが悪役みたいな話し方で言った。
「ファリルが1億セイル。私は5千万セイル」
札束がファリルの前に積まれていく。
「レキスとミファーネちゃんには2千5百万セイルずつ。更にブロードソードを1本ずつ、あと。アルフレッドリングを2つずつです」
札束が目の前に積まれ、ブロードソードを渡された。
ミファーネが貰った女性的な色使いのブロードソードとは違い、全体的に勝色で、一部に煉瓦色を使用したブロードソードだった。
子供の渡して良い金額ではないな……。
「……。このブルードソード、マサドリ会社さんの商品ですよね……」
「まだまだ、勉強不足ね。モンスターが人から奪った武器や財産をモンスターから奪ったら、戦利品扱いなんです」
ある意味で理不尽。
「豪遊しないでね」
間髪を容れず、声を発する。
「するわけないでしょ!」
「ほら、あるじゃない。お菓子の大人買いとか……」
「子供は、大人買いなんかしませんよ!」
笑い声が耳に届く。
右を見るとミファーネちゃんが笑っていた。
「レキスくん。掛け合いが巧かったよ。あー、可笑し」
隠された才能か?
『異世界には異世界のルールがある』
突如、頭に浮かんだ。
深夜アニメ化もされたあの有名な小説……。
小説の名前が思い出せない。アニメのOPもED思い出せないのに、小説の中身だけは少し思い出せた。
「レキス、大丈夫?」
確か、主人公に精神掌握魔法を使用された親友が発した一言。
親友に容赦なく、精神破壊を起こしかねない魔法を使える。
主人公の気持ちが俺には、今ひとつ解かったんだよな。
「『大丈夫だ。ことは計画通りに進行している』」こんな感じで……。
何を言っているんだ、俺は!
「レキスくん?」
「せ、戦記小説に書いてあったやつで……」
恥ずかしい、これは恥ずかしいぞ。
「ふーん、レキスくんは敵役の方が好きなんだね。私とミファもそうなんだ、レサーナさんは主人公一筋だったね」
机に掌を打ち付ける。
「私はクラスさん一筋です」
「言ってくれるね~。レサーナちゃん」
ファリルがしょんぼりした。
「そんな顔しない。もう少しでベルフさんが帰ってきますから、はい。笑顔」
『俺は主人公一筋なんだぜ。勘違いするなよ』
それにしても、ホワイトゴブリンよりもっと強いやつがいるんだろうな……。
全然、ワクワクしない!
数分後に訪れた感動の再会に癒された後。俺は色々してベッドへと向かった。
レサーナ、既に人じゃないだろ……。
布団の中で思うのだった。




