第38話 本当の自分
白く塗られた天井はいかにも、病院らしく思えた。
白色の布団を退け、起き上がろうとしたとすると体に違和感を感じる。
右前腕にギプス包帯。首コルセットみたいなものを嵌められていた。
左腕に点滴の針が刺さっていて、左手でお尻を触ってみると紙オムツの感触。
溜め息が漏れた。
俺は取り敢えず眠ることにした。
病院で目を覚ましてから2ヶ月が経過した。リシャナス院長から、4日間眠っていたと知らされた。
2ヶ月の間にレリス、ルック。ガイナス先生、シティア先生がお見舞いに来てくれた。
お見舞いでリンゴやミカンをいただいた。
そんなことを思いながら、ミファーネがいる病室を目指した。
スライド式の扉に手を掛けようとした瞬間、お母さんの声が耳に届く。
「そうね……本当にごめんなさい」
扉越しに聴く声は新鮮だった。
「謝らないでください。私にも落ち度がありましたから……」
数10秒、会話が止まる。
「今回は、色々とありがとうございました。痛っ……」
「左脇腹の骨にひびが入っているから、余り動かないほうが良いですね」
「はい……。私がもっと強ければ……」
「ミファーネちゃん。あなたに戦闘技術を教えたのは、死に急がせる為ではありません」
少し強い口調で声を発した。
「……でも。私が弱かったから」
「深く考えない。ミファーネちゃんは今、幾つですか?」
「4月生まれだから、10歳と8ヶ月です」
「女の子ね」
「はい?」
「頼りがいのある女子を演じていませんか。ミファーネちゃん」
「……それは……」
「原因はベルフさんですね」
「お父さん……」
「気を使わせたくない。迷惑を掛けたくない、成長したところを見せたかった。私も同じようなことをしていましたから解かります」
「レサーナさんも……」
「レサーナ・アスリットは、レサーナ・アスリットを演じているのかもしれません。
レキス・アスリットはレキス・アスリットを、演じているのかもしれない。
演じることが悪いとは思わない。でもね、成長すると言うことは大人の真似をするのではなく。
心と体を伸ばしていく……。人を傷つけ、人に傷つけられ。覚えていくんです。
やって良いこと、やってはいけないこと。これからは、真似ではなく、学んでいきましょう。
ミファーネちゃんの人生はミファーネちゃんのものですから。
本当の自分を出して、人生を楽しみましょう。ミファーネちゃん」
視界が歪む。
本当の自分……。
ミファーネちゃんがすすり泣く音が聞こえる。
徐々に泣き声が大きくなり、泣きじゃくり始めた。
貰い泣きしそう……、既に泣いてたんだった。




