第35話 冒険者ギルドに登録しました
「最後の挨拶の前に大事な話が、先生からあります」
シティア・セリール先生が4年3組の生徒名簿を優しく、教壇に置かれた教卓へ載せる。
「先生は今月で。この学校を退職しアスリット・ラナカトーサ高等学校へ転勤します」
教室の中が騒がしくなる。
行き成り、シティア先生が手を「パッァン」「パッァン」叩く。
「はい。静かにして」
声と物音が止まった。
「明日から冬休みですが。この組だけ特別に来年の3月までお休みです」
歓声が沸き起こる。
「帰りの挨拶前に、渡す書類がありますので。帰らないでください!」
「「『はい!』」」
数人を除いて、斉唱。
「それに関連して。レキスくん、ルックくん。レリスちゃんは今日で卒業になります」
教室の中が騒がしくなった。
同じ騒ぎが何度も起こり。3人だけ卒業証書をシティア先生から手渡され、書類の山を受け取って。
あと教科書だ。
シティア先生とのお別れの挨拶。
放課後の挨拶が終わって、やっと教室の外に出る前に壁時計を確認すると。
7時28分だった。
途中。ルック、レリスと別れ。書類の山を抱えて帰ってきた。
「ただいま帰りました! 玄関を誰か開けてくれませんか?」
大声で発し、少し後ろに下がって待つ。
「お帰りなさい。レキスくん……」
ファリルさんに元気が無かった。
「食事の後に何で私達が、この家に居るのか説明するよ……」
右足で扉を押さえ、家の中に入る。
台所から熱されて出た牛乳の香りが、流れてきた。
書類と新しく貰った教科書、卒業証書を一旦床に置き。
靴を脱ぎ。書類の山と教科書、卒業証書を掴み上げ。
部屋へ向かい荷物を片付け。
台所へ向かった。
晩ご飯のクリームシチューを食べた後にルリラスを除いて、4人で向かい合っていた。
先ほど知ったのだが、ファリルさんの次女ルリラスは3歳だ。
「え~と。家は何者かに殺意を持って仕掛けられた。魔法円が原因で屋根が無くなって。私達を攻撃してきた人との戦いで家は完全に倒壊しました」
ファリルが淡淡と語った。
「お母さん。これからどうするんですか?」
「叩き潰しますよ。アルバレス商会も賢者協議も! これか」
「ちょっと、ファリル!」
レサーナが口を挟んでファリルの言葉を遮る。
レサーナを除いて、俺が魔力制御に心血を注いでいるとは思ってさえいないだろう。
黄土色のセーターを着たファリルが、話を再開した。
「さっき言ったことは、取り敢えず。忘れてくれる」
「……解かりました、けど」
アルバレス商会は聞いたことがあるが、賢者協議?
初めて聞く名だ。
「暫く。この家で暮らすことになりました」
「やっぱり……。そうなりますね」
ミファーネは冷静そのもの。
俺は一言も口にすることなく、話が終わった。
ベッドに座って壁を見つめる。
行き成り目の前に、光を感じた。
レサーナが現れ、開口一番。
「ミファーネちゃんと戦ってみない?」
「え?」
総ての話が終わってから話に承諾し、現在。
朝ご飯を食べた後に、ミファーネと対峙。
ファリルが右側、レサーナは左側に立っていた。
ルリラスはお昼寝中でいない。
ミファーネが構え始める。
左腕を中段辺りに、拳を肩と同じ高さで静止。
右腕は肘を曲げ。拳を縦におき、構え終えた。
ラナカトーサ護身術の構えだ。
冒険者ギルドに登録する為。
その前に、実戦形式の試合をすることに決まった。
「ファリルさん。合図をお願いします」
冷たい風が、肌を嘗める。体から熱を盗んでいく。
「了解です。始め!」
中段で空手風の構え。空手だけでは無いから、空手風だ。
気づいたら、俺に迫っていた。
ラナカトーサ護身術の面白いところは、崩し。躱し、流しの総てが揃っているところだ。
ミファーネが最初っから崩しにくる。
左腕を上げ、防ごうとするが角度をつけられ打ち抜かけれた。
左上腕に被打。
ずしっとした衝撃の次に、痺れがやってくる。
効くな……だが浅い。
左回し蹴りから、左膝蹴り。
後退して躱す。
これは、レサーナに何か言われたな……。
大降り技は、余り使わないタイプだろ。ミファーネ。
手に力を込めて右フック。同時にミファーネが右手でフック。
やっぱり……。
瞬時に右手を広げて、ミファーネの右手を掴もうとするが危険と思ったのか右腕を引く。
これはどうやら、おれの武術をいや。戦い方を教えてくれたようですね。お母さん!
透かさず左拳が俺を襲う。
右腕を右から左に体の前で振り下ろし、弾く。
左上腕に衝撃。
くーー! 隠し球があったか……。
不意を突かれた一撃は、体感した痛みより重い痛みを俺に加える。
ミファーネの五連打を足で躱して、左足でローキック。
後ろに跳んで躱された。
「これならどうです」
両掌を広げて構える。
ミファーネの動きが止まった。
「柔方ですか……」
体の力を抜く。
待つ。
俺が入り身で、ミファーネの背後を取っても良い。
だが、待つ。
ミファーネが地面を蹴った。
突きを腕で流す。
蹴りを腕で払いのける。
腕を使って軌道を変え、威力を殺す。
無謀にも真っ直ぐの突きを出した。
ミファーネの左手首を掴んで、捻ようとする前に、手首を内側に返され逃げられた。
堪らず、ミファーネが地面を3度蹴って後退。
深呼吸後、地面を強く蹴って接近してくる。
人体能力に頼った接近方法。
俺は知っていた。
体の力を抜きそれを攻撃に利用する技術。
それをミファーネが、修得していることは解かっている。
右に軽く跳ぶ。地に足をつけて静止。
右足を前に出し、脱力。
瞬時に力を込め、地面を蹴る。
数メートルの距離を一瞬で移動。ミファーネの背中が左にあった。
左足で踏ん張り、左に体を向けながら左手で拳をつくる。
ミファーネが自分の背後に砂埃を巻き上げながら。
左側から体ごと振り返る。
反応が早い!
目が合う。
ローシェンナ色の瞳。レサーナより少し茶色が入っていた。
透かさず右正拳突き。間髪を容れず左ボディーブロー。
どちらも、綺麗にブロックされた。
本命は左回し蹴りだ。
蹴りが空気を裂くだけで終わった。
突如、鳩尾に衝撃が走る。
痛みが、不意に消えた。
体を両足で支え、一息つく。
「大体、把握出来ました。ミファーネちゃんに足りてないのは、意表をつくような攻撃への対処法です」
「確かに……それは、レサーナさんからも指摘されました」
「そんな話が……。では試合の続きを行いましょうか」
「行きます!」
行き成りですか……。
構えを解く。
こちらへ向かってきた、ミファーネが右ストレートモドキを繰り出す。
瞬時に軌道が下がり、鳩尾を強襲した。さらに抉りながら打ち抜かれた。
「ぐっ……」
後ろに跳ぶか力を抜く、力を込めるか。その判断を迷ったせいで会心の一撃となった。
以外にも、強烈だった痛みは直ぐに掻き消える。
――なんだこれ……。
痛みが消える謎。
ありがたいね。
ミファーネから、三連打ほど加えられていたことに後で気づく。
警戒を強めたミファーネが、後ろに跳んで後退。
様子を探っているようだ。
来ないなら。俺から行く!
入り身でミファーネの左に入る。それと同時にミファーネの左ストレート。
左手首を左手で掴む。
攻撃の力を利用し、引き寄せるように引っ張った。
ミファーネがつんのめる。
手を内に返され、掴んでいた手を外された。
左手でミファーネの肩を掴んで倒れないようにしようとしたら、驚異のバランス感覚で体勢を整えた。
ミファーネの顔を観ると涙が出そう、そんな表情だった。
ミファーネが動いたと思ったら、右上腕に衝撃。ミファーネの左足が地面に下ろされる。蹴りか。
神速の攻撃が、何度も当たるが痛みを感じなくなる。
うっかり、左腕を無防備に伸ばしてしまった。
行き成り、左前肘。
医学的に言えば、肘窩に新しくきた回し蹴りを当てられる。
痛みを一切、感じなかった。
右正拳突きを7割ほどの本気で打ち込む。
左掌に打ち付けて静止。
体の力を抜き、瞬時に力を込め。
抉るように左拳を密着した状態で打ち抜いた。
常人では、耐えることが出来ないはずだが……。
ミファーネの体どころか、左掌さえ動いていなかった。
「そんなことが……」
「痛くない……」
「人体防御装甲の魔力流気状態です。2人とも、修得。おめでとう」
「えっ、お母さん。どういうことですか?」
体を風で、冷やされながら訊ねた。
「魔力流気を修得するには、強い意志と中級魔法術師以上の魔力が必要。大体、900Mぐらいですかね。負けたくない、勝ちたい、生きたい! それらの強い意志の力が魔力に反応して発現するわ」
レサーナの話が終わり、冒険者ギルドに俺達はいた。
「この書類に保護者の署名。本人の署名をおねがいします」
書類に2人で署名し、冒険者ギルドの窓口へ提出。
ファリルとミファーネも同じように、右側で提出。
冒険者ギルドに登録できるのは、男女とも15歳からだが。
特別に両親のどちらかが中級冒険者以上。
上級冒険者からその子供が10歳を1日でも過ぎれば、登録できる。
親の承諾が必要になると本に、書かれていたので無理だと思っていた。
「総ての書類を提出されましたので、認定証代金500セイル。お支払いください」
右側で同じように、ファリルさんとミファーネが認定証の代金を支払う。
数分後に生成り色の横8cm×5cm。
鉄製のプレートを窓口で手渡された。
【冒険者ギルド認定証】
【レキス・アスリット】
【初級冒険者】
【初級魔法術師】
【精暦1698/4/10】
黒文字で書かれていた。
「早速だけど、依頼の要請良いかしら?」
「はい。お受け出来ます」
魔法発動鞄から、書類の束を取り出し女性職員に手渡す。
「これは……。ホワイトゴブリン広域調査依頼と。認識して宜しいでしょうか?」
「ええ」
ホワイトゴブリン広域調査依頼?
「ホワイトゴブリン討伐依頼をお受けになると言うことですね?」
「はい、最高位の保険もお願い」
ホワイトゴブリンだと……。
勝算はあるのか……。
暫くして冒険者ギルドが、喧騒に包まれた。
「依頼要請料が65万セイル。冒険者ギルド保険料は、3ヶ月分で42万5千セイル。
依頼受諾料、15万セイル。合計122万5千セイルお支払いください」
122万5千セイル!
1セイルが大体、日本での通貨で換算したら2円ぐらいだから。
日本で小型のエコカーが買える金額じゃないか!
札束をドンとカウンターに載せる。
「総て受諾しました。お疲れさまでした」
「よし。ファリル、ミファーネちゃん。レキス、買い物してから帰りましょう」
「えっ、え!」
冒険者達からじろじろ見られながらも、外へと出られる扉を目指す。
「最初は、武器店へ行きます。その次、防具仕立て屋です」
質問する暇さえなく、あわただしく冒険者ギルドの外へ出た。
「コンポジットボウ2挺矢を300条オリハルコン製のバックラー3枚。
クロスボウ3挺、専用の矢50条。
ヒヒイロカネ合金のサーベル曲刀タイプ、名称エルベルトを2本。ハルバート1本。
魔力浸透打刀。両月3本。
爆裂巻物4等級の『丁』を80巻。アルフレッドリングを32個。
魔力補給巻物5等級の『戊』を80巻。エリクサーを2瓶。
爆裂希石60個。以上で合計1130万セイルになります」
この世界で、かなり豪華な家が建つ金額に呆れる。
言葉が出ない。
札束がカウンターにドン、ドン。ドン、と詰まれるのをただ眺める。
「ご自宅へお送りして宜しいでしょうか?」
「送らなくて良いわ」
「『転送魔法円』刻印」
大きいテーブルの上に魔法円が出現。
「そこに総て載せて貰える」
「承知しました」
「『転送魔法』発動!」
淡い光と一緒に商品が、一瞬で消えた。
「次は、防具仕立て屋ウォールナットへ向かうわ」
「お買い上げいただき。ありがとうございました」
「「『ありがとうございました!』」」
無駄に多い女性店員が、同時に声を発した。
俺達は、見た感じ高級武器屋。
アクラム武器店の赤いカーペットを踏みつけながら外に出た。
女性と買い物するのは、時間が掛かって骨が折れる。
初めての体験だったけどな。
晩ご飯を食べ、家の前でレサーナと対峙していた。
「アルフレッドリングは1日に1度だけ使用出来る。浸透防壁を発動します」
説明通り、人差し指に指輪を嵌める。
レサーナが左前腰辺りに帯剣した。サーベルを抜剣。
永続灯火の明かりを刀身が煌めかせる。
剣の先端、切先が独特の尖りを持っていた。
突如、左肩から右腰にかけて、撫で斬られる。
体全体が、空色より薄いべビーブルー色に発光していた。
色が、一瞬で消えその直後。人差し指に嵌めていた指輪が千切れて、地面に落下する。
「これが、使いきりの魔法発動具」
「傷がない……」
「1日に1度だけと言うことは、24時間おきに使用することが出来るんですね」
「その通りです。ミファーネちゃん」
「本当にホワイトゴブリンと戦うんですか?」
レサーナに訊ねた。
「当たり前です。私が槍術、弓術あと剣術を教えます。あなた達に」
「あなた達って。俺とミファーネも、ホワイトゴブリンと戦うんですか?」
レサーナが左右に首を振る。
「正確には、後方支援をお願いしたいわ」
「そうですか、一応理解しました……」
「あと、レキスが武術を教えるんです」
その練習メニュー、かなりきついだろうと思う。
「ぼけっとしない。レキス」
生き残ろう。そう心の中で強く思った。
家から馬車広場まで走り、そのままロロックス区へ向かい。家まで走って帰るを3週間。
雨の日には、フード付き外套を着込み。
晴れの日は、フード無し外套を着て走った。
修行内容は以外に変装的な組み方。
朝は剣術か槍術、弓術。稀に俺の武術から始まり。朝ご飯を食べて1時間半後にロロックス区までのランニング、家に帰り着いたら、10分休憩後の早い昼ご飯。その1時間後、即席ラダー往復4セットと武術指導かレサーナとの試合。
他にミファーネと練習用刃無し剣を使用した手合わせ。
手合わせは、決められた有効打を双方のどちらかが先に相手に当てた方が勝ちという剣道の試合みたいなシステムだ。
晩ご飯を食べた後。俺を抜いた3人で魔法、魔法術の発動をしているようだ。
その時、俺は部屋で1人。魔力の制御をした。
レサーナの指導の下修行をしていった。




