第34話 家族計画?
走っていたらあることを思い出した。なぜ、クリヒヤ一家が家にいるのかと言うことを。
どういうイベントだこれは……。
話し方可笑しくなっていなかったか?
おっと……。
魔力が暴れ始める。
神経を魔力に傾けて一旦押さえ込む。
数日前に俺をこの世界に転生させやがった自称悪魔とあった。
「時間止まりし具現の空間」でのことがあるから。
感謝しているが、腹立たしくもあり……。
マサドリ貸本屋の看板が目に付く。
先に貸本屋へ入った、ミファーネの後を追う。
“支払い”と書かれた木製の板が天井から吊るされた場所で、先に本の会計を済ませて待つことにした。
「この世界に美味しい料理を広めることにした~」のあれだ。
貸本屋で借りた本は、もう少し読んでから返すことにしていた。
髪が勿忘草色の少女。
足早に駆け寄ってくる。
右肩に鞄の紐を掛け、右上腕で大きい封筒と鞄を挟んだ少女は両手一杯に筆記用具を抱えていた。
「お会計で宜しいでしょうか?」
「はい」
支払いのカウンターにミファーネが商品を載せる。
カウンターとミファーネを眺めていたらある物に目を奪われた。
カウンターの右端にある。タイプライターみたいなレジ、その左に小さな箱。
中身を直ぐに察する。
その中身に対して、商品名が可笑しかった。
【日本ラムネ♡】
『なんで、こんな子供でも手が届く場所にあるんだよ!』
タイプライターにしか見えないレジを、両手で叩たく女性店員。
左胸に付けれてた名札を見る。
【ディラル・ラトン】と白い板に黒文字で書かれていた。
「合計で1850セイルになります」
ミファーネが【日本ラムネ♡】に気づかないことを祈る。
心臓の鼓動する音が、今にも聞こえそうだった。
会計が済み、紙袋に入れられた筆記用具を店員から渡される。
大きい封筒を紙袋に入れた。
小さい箱を左手で掴み一言。
「ラムネ? 美味しいかな……」
『オーマイガッ!』
ネイティブではない発音だと思うが、今はどうでもいいことだ。
堪らず、後ろを振り返る。数人の男女と目が合った。
その全員が目を伏せる。
『聴覚良すぎだろ!』
店員の方へ顔を向け思う。
なぜ店員は何も言わない!
『それ位。学校で……習ってなかった!」
ミファーネの箱を持った左手に左手で触れる。
「それ駄菓子じゃ無いから」
「えっ。ラムネで駄菓子じゃないのありましたっけ?」
どこからか、小さな笑い声が漏れてきた。
笑うな!
左手を一旦、引き戻す。
『どうする。本当のことを言うべきか、誤魔化すべきか……。いつかは知るべきだが……おもちゃで通してみるか……。余計に可笑しいか……』
ミファーネが【日本ラムネ♡】の箱を振る。
「カサカサ」
音が耳に届く。
「紙?」
箱の裏をミファーネが見ようとする。
「きゃ!」
左手でミファーネの目を覆って直ぐに取り払い、左手で箱を奪い取った。
箱の裏を見ると。
【明るくね。家族計画】
叩きつけたかったが、元の場所へそっと戻す。
「何するんですか?」
「遅刻しますよ!」
「そうですね……」
ミファーネが踵を返し、出口へと向かった。
後を追いながら思う。
疲れた……。
この世界、男は16歳。女は15歳で成人になり婚姻出来るが。
1部を除いて成人的趣向は禁止されている。
面倒なことに婚姻出来る16歳と15歳の男女の成人と、総て出来るようになる20歳の成年がある。
もし俺が本当の10歳だったらミファーネと一緒にあの箱の真実を知った筈だ。
俺には前世の記憶がある。
今はレキス・アスリット。
違う。今ではない現在。
俺は、レキス・アスリットだ。
「レキスくん。行かないんですか?」
校門の前で立ち止まった俺に気づいたミファーネが、振り返りながら言った。
校門を潜りライツ小学校の敷地へと足を踏み入れた。
「シュガーロードを王国語に直せる人。手を上げてください」
シティア先生が問いかけてきた。
いつも通り、俺とルックが挙手。
「……ルックくん。どうぞ」
「シュガーロードは直訳すれば。砂糖道ですが、砂糖の通った道を指した言葉です。砂糖の道と覚えておくと良い」
「正解です。砂糖と呼ばれているものは、サトウキビの甘蔗。てん菜。カエデ科植物から取れる樹液のメープルがあります」
授業が終わるのを、魔力を制御しながら待つのだった。




