第23話 強過ぎる少女達
目蓋を開くと。人が、逆さだった。
頭が1番近いからだ。
上空でミリョーラルさんとレサーナが戦っていた。
幾らなんでも可笑しい。
どちらも空中に足をつけて、戦っているのだから……。
直ぐに気づく。俺が、空中を浮遊していた事に。
「――」
喋る事が、出来ないようだ。
捜してみると俺の体が、うつ伏せで倒れていた。
戦っている2人に神経を集中させる。すると、意識がカメラワークのように寄れた。
レサーナの正拳突きを右手で弾いたミリョーラルが、後ろ回し蹴り。
合気道の半身の構えをし、入り身でミリョーラルさんの背後を取った。
「火弓」
詠唱文を無詠唱で初めて聞く、火炎の魔法術。
一瞬で、後ろを向き。
レサーナを視界に捉える。
火が独りでに、弓の形になった。
弓の本体から弓弦に火矢が形成され、火の弓弦を引いた。
左手に火で出来た弓を装備したミリョーラルさんが、左に掛けられた火矢を左手で弓弦を引き射る。
火矢が幾度となく、レサーナに対して射られる。
加速性能が火矢とは、別次元の早さだった。
数度、レサーナの姿が消える。
レサーナの体が、残像と化す。
何条、射たのか。全く解からない。
レサーナの姿が現れた。
手に持てる筈がない火矢を、両手で持っていたと思ったら。
他人の魔法術では、自分が発動した魔法術は使えない筈なのに火矢を整列させ。地面に一瞬で、総て突き刺した。
レサーナ周りを囲むように38条の火矢が、数えてみたらあった。
「今度は、もっと強く。早く行きます! こんな時になんですが、ミリルって呼んで良いですよ」
「そう。そちらからどうぞ、ミリルちゃん」
何も言わずに、レサーナに一瞬で詰め寄る。
「濃霧」
ミリルが、魔法を発動し姿を晦ます。
「……その程度!」
右手を左肩に持っていき、地面に振り下ろした。
風圧で、霧が消し飛んだ。
「巨石落とし」発動と同時に、巨大な石が現れる。
ミリルは上空にいた。
「塵旋風」
「積雲」
右手で、風属性。左手で水属性を同時に扱う。
巨大な石が、レサーナの左側に落下して砕けた。
「魔力変換し『屈折率変換』。『光学彩服』発動」
上空に浮かんでいたミリルが、掻き消えた。
「未来の魔法ですか……」
レサーナが呟く。
「魔力はちゃんと隠した方が、良いですね」
砕けた巨石にレサーナが、近づき口を開いた。
「超魔」
薄い赤色に体全体が、包まれた。
「魔力浸透突き」
巨石が砕ける。
「石操」
レサーナが両手を前に出すと、砕けた石が手の周りで浮遊。
石が、誰もいない空間に飛んでいった。
突然、石が砕ける。
「痛~い」
ミリルが、高密度の魔力を体の前で形成する。
「焦熱衝波」
発動と同時に2人が跳ぶ。
既に目の前。
水平に飛んできた火炎が、体を通過した。
近づいて戦いを観戦する。
「焦熱火矢」
「『積乱雲』発動。連結強化魔法術『稲妻』発動」
右手で如何にも熱そうな、火矢を掴んだ。
ミリルに稲妻が直撃。
雷より鳴り響く音が、大きかった。
地面に落下するミリル。
ゆっくりと降下してくる、レサーナ。
魔力変換飛行か……。
「強い……。しょうがないなこれをつかおう。『超魔神気』これで勝負を決めるよ!」
ミリルから、一切の魔力を感じなくなる。
「自己強化魔法『流速』、『堅化』最上等級強化。癸」
気づいたら。いつの間にか、限界まで近づいていた。
超魔と自己強化魔法について後で、レサーナに聞こう。
「自己強化魔法の2重掛けは、ずるいですよ!」
「お互い様でしょ?」
ミリルが頷く。
「『積乱雲』連結強化魔法術。『雷撃矢』!」
「『雷』!」
ほぼ同時に、雷属性電子加速魔法術を発動。
レサーナが、雷撃矢に射られた。
ミリルは、右に移動して躱す。
この総ての動作は、1秒も掛からず行われたのだ。
「右前腕が、駄目になりましたか……」
観える。段々と動作が、見えるようになっている。
「『重風撃』『焦熱火炎』合成魔法術」
「火炎風撃!」
レサーナの表情が、少し変わった。
意識を集中させる。
(この年齢で、ここまで極められえるものだったとわ)
レサーナの心が、流入してきた。
(魔力掌握を使いますか……)
可視化された風に。赤黄色の火炎が、巻きついている。
「隙あり!」
レサーナの前に、火炎風撃が迫る。
ミリルの姿が消えた。
レサ-ナが、左右に首を振って捜す。
(魔力掌握!)
魔力を隠したミリルが、レサーナの背後から迫る。
火炎風撃に、レサーナが飲み込まれた。
「貰い!」
火炎風撃に包まれたレサーナに近づいたミリルが、右足で前蹴り。
「痺れるー!」
火炎が一瞬で消える。
「氷塊監禁」
痺れで怯んだミリルを、氷の中に閉じ込めた。
「密度が高すぎて壊せない……」
レサーナが右拳を振り下ろしたら、氷が砕けた。
(もう少し。遠距離から攻撃すれば良いって。言うべきかしら……)
(レキスと一緒で、莫大な魔力を使いきれていませんね)
体に近づくと、吸い込まれるように元に戻った。
この空間に入ってから感じる。魔力が、溢れそうな感覚を体に覚える。
「そろそろ。俺も修行して良いですか?」
「あら、起きてたの。レキス」
「お母さんが、雷を発動した時から。戦いを見ていました」
心の中が見えた事は、黙っておくか……。
「もし、戦う相手を想像して戦うなら。私、ミリョーラルちゃん。レキス以外にしてね」
「解かりました……」
詳しく聞くのは、この戦いが終わった後にしよう。
戦う相手は誰にしようかな。
ここは、想像力だ。
『この世界で俺より弱くなくて。徒手で戦うことが出来、同じぐらいの年齢で。後、全力でこい』
目蓋を閉じて待つ。
次の瞬間。魔力を感じて目蓋を開くとそこに、ミファーネ・クリヒヤが直立していた。
ミファーネちゃんが、来ますか……。
「戦うようなぜか命令されていますので。戦わせて貰います」
冒険者が着るような、レザーが両腕と両肩それに胴体の場所に縫い付けられていた。
防御力が、高そうな服装だった。
「行かせて貰います」
本人の性格はそのまま、引き継ぐのかな……。
風を感じる。
ミファーネが一瞬で、俺の目先に現れた。
直感で左前腕を鳩尾へ。右前腕で首を守る。
左前腕に、衝撃を感じた次の瞬間。
右前腕に、蹴りを入れられた。
耐えれると思っていたのに、吹き飛ばされる。
「ここでは、負傷級の攻撃を軽い痺れで表されます。気絶級や重症級の攻撃は、強い痺れで、殺人級なら数分間。体が動かなくなります」
それ、早く言ってくよ!
ミファーネが追撃に入る。
俺にも攻撃させろよ!
両前腕をあげて構えようとしたら、ミファーネが前蹴り。
両前腕を交差させる。
とてつもなく重い蹴りで腕が、あげられない程の痺れが走った。
体を吹き飛ばされながら、覚った。
俺にはまだ、戦うには早すぎる相手だと言うことを。
地面にぶつかって、仰向けになった。
両腕が動かない、たぶん現実だったら。複雑骨折だな。
「動けねえ……」
右側にきた、ミファーネが地面に座って一言。
「ごめんなさい」
気がついた時には、鳩尾に右手の拳がめり込んでいた。
「がふぁ!」
この空間でも、痺れ状態。
その時に、めり込む系の攻撃を受けると痛みがあることに初めて気づく。
その声を発した瞬間に、意識が吹き飛んだ。




