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第13話 ルッセント・ワークの父親

 多種多様な、店が城壁の中にあった。

 すぐ近くに、仕立屋。その右隣に、防具仕立て屋。

 金、銀細工屋や宝石店。

 人も(あふ)れかえっていた。

 鍛冶屋の看板もあれば、農具屋に書店。

 靴屋もある。

 それに、武器屋。

 歩きながら、俺は目を輝かせた。

「レキス。後で行って、良いから。まずは、道場に向かいましょう」


「まだ着きませんか?」

「もう少しだと思うけど……」

 足は既に、限界だ。何とか気力でだけでここまで来た。

「着いたわ」

 レサーナの前に出て、見る。

「クレアス正流道場」と縦字の看板が掛けられていた。

 木造建築の道場。

 前世で、4歳から11歳まで通った空手道場を思い出す。

 右手を動かしたら、練習用剣の柄に手をぶつけた。

『やっぱり。直ぐには、慣れないかな……』

 道場の中に入ろうとして、扉を開こうとするが、押しても。引いても、開かなかった。

「ここは、横に引いて開けるのよ」

 だが、開かない。

 俺は、レサーナに開けてと頼む。

 開いた、扉の厚さに俺は驚愕した。

 片手じゃ、扉を掴めないほどに分厚かったのだ。

 19cm以上の厚みがあると思う。

 俺は、扉に負けた。

 敗戦気分のまま、道場の中に入った。



 剣を無言で振る。剣同士が交差する。

 突きに対して、体を入れて躱す。

 い草の畳の上で数10人が、木剣を振っていた。

 右に小屋。

 そこの看板に「受付」と書かれていた。

「夏期限定修行を2人。8月14日まで、お願いします」

「先払いですので、合計4万セイルお支払いください」

 茶色髪の女性が、営業スマイルで言った。

 レサーナがお金を払った。

『それにしても。家族の合計資産は、どの程度あるのだろうか?』

「あと8分で10分間の休憩時間になりますので。次の開始時に入られて、大丈夫です」

「ロッカーを貸して貰えるかしら?」

「はい、どうぞ」

「ありがとう」レサーナが、微笑んで返す。美人は何しても華があるな。

 受付の女性から、2つの鍵を受け取った。

 レサーナについて行こうとした、その時。聞きなれた声が、耳に届く。

「おーい。レキス!」

 開いたままになっていた。分厚い、スライド式の扉から鳶色の髪をした、少年が現れた。

「ルック」

 いつの間にか、右隣にレサーナが居た。

「ルッセント君。レキスがいつもお世話になっています」

「僕の方こそ。じゃなくて、俺の方こそ世話になっています」

「知り合いの方か。ルック」

 髪が燃え上がったような、赤色の髪で筋肉質の厳つい親父がルックの後ろから、現れた。

「俺は、センクレイド・ワーク。32歳だ」

「レキスの母親で。レサーナ・アスリット、28歳です」

 2人が握手をした。

「お噂は、()()ね。お会い出来て、光栄です」

「行きましょう。道場へ」

「そうですね」



 ロッカーに、練習用刃無し剣を置いてきた。

 ルックと、い草で出来た畳に座り。始まるまで、話しあった。


「突きの後はこのように、剣を水平にして相手に押し込むか。右からの薙ぎ払いに持って行く。他に、剣を引いて体勢を整える。などがあります」

「対人戦で使う時は、相手に大怪我を負わせても良いか、殺す時だけにしてください。突きは、殺傷性の高い攻撃です。その事を忘れないように!」

「「『心得ました!』」」

 一部を除いてほぼ全員で同時に、言った。

『五月蝿過ぎだろ!』


「それでは、手合わせの時間ですので。手合わせを披露したい人は、手を上げてください」

 俺とルックが同時に手を上げた。

「それでは、そこの2人に手合わせして貰いましょう。どうぞ」

「よっしゃー! 俺の強さを見せてやる」

「所でルック。お前いつから、自分の事を『俺』って言うようになったっけ?」

 少し、ルックが首を傾けて考える。

「去年の夏からだ。ワーク家たる者、男は『俺』と言えとさ……。家訓なんでね」

「そうか。俺は、手の痛みが強さの証だ!」

 俺は、肉刺(まめ)が潰れた場所に絆創膏(ばんそうこう)を貼りまくった両手をルックに見せた。

「同じだな」

 ルックも、両手を前に出した。

 同じように、絆創膏だらけの手だった。

 ルックが、(つぶや)いた。

「どっちの剣術の練度(れんど)が上か、勝負だ!」

「あぁ!」

 前に出る。

「使用武器を選んでください!」

 道場に右端と左端に居た。正座の男2人が目の前に来て、壁に手を当てる。

 2人が来た方とは、逆に走り出す。

 目の前に、隠し部屋が現れた。


 武器庫!!


 足が、勝手に動き出す。

 まず目に付いたのが、所蔵数の多さ。

 軽く、100を超えている。

 目立つ所に、湾曲した刀。シミター。

 その下にサーベルが、壁の掛けられていた。

「すげえ」と驚愕の声を発した、ルック。

 ロングソード、ショートソードやブロードソード。日本語で片手半剣のバスタードソードもある。

 本物の剣が目の前に、並んでいる。

 レイピアって以外に刀身が、太いんだな。

 ククリみたいな、大型ナイフもあった。

 長柄武器も、種類が豊富だ。

 ショートスピアー、ロングスピアー。

 ハルバート、三つ叉の槍トライデントだ。

 右足で、何かを踏む。

 足元を見ると、5m程の槍があった。

 パイクじゃん! とてつもなく長いな!

 ここに居るだけで、1日過ごせそうだ。

 他に、鎧や盾。

 弓や打撃武器のメイス、フレイル、ハンマー。

 斧もある。

 ルックの方を見ると、日本刀らしき刀に手で触れようとしていた。

「待て、ルック!」

「それは、日本刀の打刀(うちがたな)と言って。切れ味が、だてじゃないぞ! 指ぐらい簡単に落ちる鋭さだ」

「すげえ。やっぱり、俺達はまだこれで、良いや」

 ルックが2本の木剣を両手で掴んだ。

 木剣を差し出される。

 俺は、無言で木剣を受け取った。

 ルックも口を開かない。

 ルックも俺と同じで、本気で戦いたいからだと思う。

 2人で、前に進んだ。

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