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Bloody Iris  作者: 翌檜.Rёn
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第4章「無力なるは‘想い’」

「お前等……いったい外で何やらかした?」

 レイスとアイヴィスがネストの中に入ると、アルフレッドがピクピクとこめかみに青筋を浮かべながら、入り口に仁王立ちしていた。

「お散歩に出ていたら、レイスちゃんが、貧民に襲われそうになっていたので、威嚇のために爆弾を使いました〜」

 

「……威嚇なら、CQFで充分だろう……。で、警察も来ていたみたいだが、顔やここに入ったのを見られてないだろうな?」

「多分大丈夫だと思う……結構距離があったから、私達の顔は視認出来なかったと思うし、アイヴィスさんが、殺人的なスピードで逃げたから、ネストに入ったのも目撃されていないと思うよ」

 レイスは、先程の事を思い出して、肩を震わせながら言う。

「はぁ……まあいい。さっさと入って作戦立案室に行け……次の仕事の事を説明する」

 大きく溜め息をつき、アルフレッドは、ネストの奥へと行く。

 

 このネストと呼ばれる建物は、どこかの貴族が建てた、4階建ての建物である。

 元々、ホテルかなにかにするつもりだったのか、一階にはロビーがあり、二、三階にはそれぞれ四の部屋があり、四階は、厨房や、様々な従業員担当の部屋がある。また、屋上もあり、屋上は今は訓練所となっている。

 

 作戦立案室は三階にあるので、レイス達は階段を登って行く。

 

 

 作戦立案室の中には、中央に大きな机があり、その周囲には、四つの簡素なイスが置いてある。

 また、机の隣りにはキャスターが付いている、ホワイトボードも置いてある。

 

「………来たか」

 すでにイスの一つに座り、煙草をくゆらす、サングラスをかけた男が言った。

「あ、EDEN(エデン)さんただいま」

 男……エデンは、煙草を咥えながら、頷く。

「えーと、ミナちゃんは?」

 レイスは、もう一人この場に居て然るべき人間を探す。

「ああ、神称名(カミナ)なら、今別の任務に就いてるよ。と、言っても暗殺じゃないがな」

 アルフレッドは、ホワイトボードに資料を貼りながら言う。

「さて、皆席に着いてくれ。作戦会議を行う」

 ALICEのリーダーたるアルフレッドの言葉と共に、レイスはイスに座る。

「まずは、言っておきたい事がある」

 アルフレッドは、ある程度逡巡を含みながら言う。

「今回のターゲットは、明確な『悪人』ではないかもしれない」

「明確な悪人ではないかもしれない、と言うと……?」

 アイヴィスが不思議そうに言う。

「……実はな、この依頼は、俺達ALICEに資金保証や、その他様々な援助をしてくれている、エリウッド・アラン衆議員からの依頼なんだが、その標的というのが、アラン議員の政敵である、リスト議員なんだ」

『リスト』……その名を聞き、レイスが勢いよく立ち上がる。

「待って!リスト議員って、ディン・リスト議員!?」

「そうだが……どうかしたのか?」

 レイスはうなだれながら言う。

「その人……私の学校の友達のお祖父さんなの………いったい、ディンさんは何をしたの?」

 レイスは、数週間前ペトルーシュカの家の晩餐に招待されたのを思い出す。

 その時に会った、ペトルーシュカの祖父である、ディン。

 レイスは、彼の朗らかで優しく、そして自らの弁を以て、悪を撲滅させたいと語った人柄をとても気に入っていた。

 

「アラン議員から渡された資料の中には、選挙のために、マフィアや、多数の企業や、政治権力者に多額の袖の下を……賄賂を渡し、また街のゴロツキを使い、対立する議員を襲わせているらしい」

 そう言い、アルフレッドはエデンの方を見る。

「………賄賂云々はともかく、確かにリスト議員に対立する議員が、ここ数週間の間に四人も襲われている。うち、一人は頭を鈍器で殴られ意識不明の重体にある」

「そ、そんな…」

 絶望にうちひしがれるように、言葉を紡ぐレイス…。そんな、彼女にアルフレッドが言う。

 

「しかしだ。俺とエデンで調べた所、賄賂にしろ、議員が襲われている事件にしろ、きちんとした証拠があるわけではない。全ては空想の域を出ない」

「まさか……アラン議員は……」

 レイスのその言葉に含まれる意を汲み取ったアルフレッドは、頷く。

「……全ては、アラン議員がリスト議員を暗殺するためのシナリオなのかもしれない」

 刹那、レイスは机を思い切り叩く。

「なにそれ!?たかが政治の思想で対立してるだけで、相手を殺すの?……そんなの許される事じゃない!正義を誰よりも尊ぶ存在である私達ALICEがすることじゃない!!」

「そうだ……。許される事ではない。だから、今回の仕事は、ALICEがやったのでは無く、マフィアがやった事にする。幸い、リスト議員はマフィア廃絶に力を入れているからな」

「アル?!何言ってるの!そんなのは、正義じゃないよ!!」

 

 

 

「黙れ!!!」

 

 

 

 突然のアルフレッドの一喝に、レイスは声を失った。

 

「………思いだけで……何が出来る。いいか、俺達はギルドとは違い、非合法の暗殺者だ。だから、俺達には権力を持った後ろだてが必要なんだ。

 この依頼、全てがアラン議員のいいように仕組まれていたとしても、我々ALICEはこの依頼を断ることはできない。もしも、俺たちがこの依頼を断ったなら、アラン議員は即座にも俺たちへの援助を止めるだろう」

 

「そうなった場合・・・・俺たちがしてきたこと・・・・・エデンさんや、先代のALICEのメンバーがしてきた事が全て無駄になるんだ。・・・だから、この以来は完遂しなければならない

 」

 

 そして、大きくため息をつき、アルフレッドは言う。

 

「せめてもの情けだ。今回の依頼はお前は、出なくて・・・・・・・」

 

 

「今回の仕事はレイス、お前が対象を暗殺するんだ」

 アルフレッドの言葉を遮り、エデンが断固とした口調で言う。

 

「エデンさん?!レイスの友人の祖父が対象なのですよ?・・・・・もしも、それでレイスが失敗したら・・・・」

 

「・・・・・・その時は、どうなるかレイスも、お前も分かっているだろう」

 サングラス越しに、エデンが鋭い視線でレイスを睨む。

 

 

「・・・・・失敗は・・・・・」

 レイスは、茫然自失と言った状態で、言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

「失敗は・・・・死あるのみ」

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