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俺とオーガとおかしな世界  作者: 壬崎菜音@壬生菜
第三章 俺とゴーレム
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俺と彼女のおかしな世界

 俺と春生さんが抱き合っているというか、俺が勝手に抱きしめちゃってる間に、涼太はひそかに扉を閉めていたようで、俺達の目的はいつの間にか達成されていた。

 一方、ドラゴンとガチでやりあってた魔王様は、ドラゴンを殴りと蹴りでぶち倒し高笑いをあげていたりした。

 もう魔王じゃなくて拳闘王とでも名乗ったらどうだろうかと言ったら、ちゃんと魔法を使って殴ってたから魔王で良いのだ! とかなんとか言っていた。

 もっとドカーンと魔法をぶっ放すのをイメージしていたのだが、魔法をかけた拳でぶん殴り、その魔法を身体の表面で発動させた方がより強いらしい。

 なんか品がない気がするが、まぁ他所の世界の事にアレコレ口を出してもしかたがないだろう。

 と、龍を殴り倒した魔王を見ながら呆れてた俺達三人の元へ、ダンジョンの主である佐藤がやってきて、「何かから受けてた干渉が解けたから迎えにきたよ」とありがたい言葉を言ってくれた。

 何でも魔王が言うには、魔法世界側の神が干渉してたとか何とか。

 詳しく聞いてみれば、魔王が神をボコボコにしてたら、科学側への扉を作って逃げやがったとか言っていたが、どうやら大本の元凶は魔王だったらしい。俺たちにまともに接してくれたとはいえ、やはり魔王は魔王だった。ということだろう。

 そんな彼女が、なぜ扉を閉じる事に拘ったのか。

 それはこの世界の神は実体が無いかららしかった。

 流石に実体が無く、世界のどこにも確たる存在がない物は殴れないらしく、「じゃあ世界を元に戻すか」と思い至って、俺が呼ばれた。と。

 非常にはた迷惑なヤツだった。

 が、次に問題になったのは、“扉は一つではない”という、「今更それいうの?」的な魔王様からのありえない一言。

 誰が扉が一つだと言った? とか言ってたが、そんなの流石に詐欺ってものだ。

 一つだと言ってなければ何個あっても良いとかそんなわけないだろうと言いたい。

 つまり、扉を閉める全然簡単なお仕事じゃないお仕事は、まだ続いてしまうわけで、俺は近いうちにストレスで禿げるかもしれない。

 で、まぁ今現在俺がぶち当たっている最大の問題がもう一つ。


「おかわり」

「はいはい」


 うちのカーチャンは、扉を閉めたことにより人間に戻れる事が出来た。どうやらこの地域の人はこの扉ね、なんていう事は無く、割と適当らしい。

 でもまぁ、カーチャンがでっかい最強生物でなくなった事は非常にありがたい。

 なんでかといえば、古代龍ほどじゃないにしても、家事が出来るほどにミニマムなドラゴンじゃないからだ。

 これで俺と親父は料理をしなくてよくなった。

 たまに作るなら良いが、毎日は流石に勘弁だ。カーチャンの苦労がよくわかった。


「おかわり」

「はいはい」


 とにかく、今の最大の問題は、このおかわりを続ける人物。

 黒髪で、ナイスなスタイルで、わがままな身体をしたはた迷惑な人物。


「おかわ――」

「だからなんで魔王がうちにいるんだよォォォッ!!」


 俺の家に魔王が住み着いてしまった。

 一体これはどういう冗談なんだ。

 魔王なら魔王城とかいうセンスの欠片も無い悪趣味な城でも建ててその中で引きこもってれば良いのに、何だってこんな中流家庭の平々凡々な家に住んでるんだよおかしいだろどう考えてもこの世界に神はいないのか!


「なんでって、そりゃ……家族だからなぁ」


 俺は親戚に魔王をもった覚えなんて無い。

 俺の家はもっと普通の、ファンタジーとはかけ離れた普通の家なんだ。

 そりゃあ確かにドラゴンが家にいる程度のファンタジーな家ではあるけど、それでもいたって平凡。ごく普通。たまの焼肉がごちそうとかいうふっつーの家なんだよ。

 それが行き成り、家族に魔王? おかしくないか、ああおかしい。おかしいよ。


「ふふふ、これからも協力してもらうぞ。我が孫よ!」


 俺のバーチャンの異世界同位体――国際的にこういう名前に決定された。まぁこれは日本名だけど――が、つまるところこの魔王様だった。というわけで、確かにこりゃあ家族だ。家族じゃねえ! なんていえるわけがない。あくまでも肉体的には、という注意文を入れなくてはいけないけどな。

 そして、何で若いんだよ! とツッコミを入れれば、そんなの魔法でちょちょいのチョイ、とカーチャンを若返らせた。おかげでカーチャンだけでなく、近所でも超がつくほどの人気者だ。

 ああ、頭が痛い……。


「んじゃ、いってきます」


 軽くため息をつきつつも、俺は軽い足取りで外へと向かう。

 見慣れたリビングも、玄関も、このときだけはいつもと少し違って見える。

 玄関を抜けて、外へ。

 そして、俺は真っ直ぐに学校へと走り出す。




 この世界がおかしくなってから、少しの時間が経った。

 でも、その少しの時間でこの日本という国は随分と平和になった。

 当初は本当に大混乱していたらしいけど、国民性なのか、暴れたヤツもそれほど多くなく、他の国よりも遥かに早いスピードで環境に適応した。

 そんな日本がすぐに取り掛かったのが、一部の地上部分にある閉じやすい扉を使っての異世界を相手にした貿易が可能かどうかの議論だ。これが出来れば、日本が抱える資源なんかの問題が一気に解決するかもしれない! なんてテレビで言っていたが、果たして本当に可能なのかどうか。

 ま、それは偉い人に任せれば良い。

 俺は毎日を生きていくことで精一杯。主に魔王のせいで本当に精一杯だ。

 もしも、もしもだけど、国が扉閉じちゃだめ! って言ったとしたらどうしようかと今から考えてはいるが、そうなったら魔王には無理にでも諦めてもらおう。

 魔王VS戦闘機は良いとしても、そんな状況で俺が扉を閉めるとか無理すぎる。

 とにかく、この日本は結構平和だ。

 おかしくなる以前のように、事件や事故はあるけど、どこそこで何々っていうモンスターが暴れてとか、そういうのはほとんど聞かない。

 世界的に見れば、こんなおかしな世界は少ないかもしれない。


「おはよう。春生さん」

「おはよう。瑞樹くんっ」


 俺は道端で誰かを待つ春生さんへと声をかけた。

 ここまで走ってきたのか、彼女の頬は少し赤かった。


「いこっか」

「うんっ」


 俺と彼女は、まだ付き合ってるわけじゃない。

 でも、少しだけ進展したような気がする。

 少しだけ、少しだけだけど、ダンジョンゴーレムでの出来事以前よりも少し甘い雰囲気が俺たち包んでいるような、そんな感じ。


 まだまだおかしな世界は続いていくけれど、俺は彼女との一口で虫歯になってしまうくらいに、甘すぎるお菓子な世界を作っていきたい。

 そうできるように、色んな事に臆病な自分でも、がんばっていこう。

 そう決心している。


「ね、見たい映画があるんだけど、一緒に行かない?」

「うん、もちろんっ」


 彼女の眩しい笑顔に軽くクラクラしながら、俺は今日も心休まる学校へと向かう。

 これが俺の日常。これからも続いて欲しい日常だ。


 そして俺は、恐る恐る彼女の手へと伸ばし、彼女の手を握り締めた。

 ああ、俺の顔は今真っ赤になってるんだろうな。

 そう分かるくらいに、顔が熱い。


 長い長い学校への道。

 昔だったら、つまらないただの道だった。

 でも今は、何よりも大切な時間。

 俺達は、ゆっくりと前へ進んでいく。






 俺とオーガとおかしな世界 おわり

というわけで完結です。

瑞樹くんはこれからも魔王に連れられて扉を閉じていくわけですが、無駄に長くなるだけなのでここで完結です。

ここまで見てくださった方々、本当にありがとうございます。

それでは、またどこかで!

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