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婚約者の騎士様に放置されたので異世界で日本酒を楽しみます~本当に好きなお相手とどうぞお幸せに~  作者: 千早 朔


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婚約者と妙に着飾った豪華な朝食

 途端、扉からぞろぞろとメイドが現れた。

 まるでパーティーの支度さながらの人数にあっけにとられていると、


「お嬢様、ホットタオルをお持ちしました。お顔、失礼いたします。本日も上等なシルクに負けない美しさにございます!」


「こちらにお袖を通してくださいませ。ああ、この服をこんなにも輝かせられるのはリアナ様だけですわ!」」


「どうぞ、お座りくださいませ。お嬢様はどんな髪型でも愛らしくていらっしゃいますから、結うのが楽しみで仕方ありません」


(皆、いったいどうしちゃったのかしら……?)


 あっという間に支度を整えてしまうその手腕はさすがだけれども、なんだか今日は妙に恭しいうえに、褒め言葉が多い。

 それに服も髪型も、お化粧だって。

 いくらフレデリック様と同席するとはいえ、華やかすぎるような。


「お疲れ様でございました。本日も大変お美しくていらっしゃいます……!」


「あ……ありがとう。皆が頑張ってくれるおかげだわ」


(本当、いったいどうしちゃったのかしら)


 なぜか妙に満足そうなメイドたちに尋ねてみたいけれど、フレデリック様を待たせ続けるわけにはいかない。

 礼を告げて部屋を出る。と、一階へと続く階段の前で、フレデリック様が待っていた。

 見れば騎士団の制服ではなく、平時にしては着飾った姿でいる。


(朝食が終わったら騎士団ではなく、ゼシカ様のところへ行かれるのかしら?)


 もしかしたら、フレデリック様のこの姿を見て"勘違い"をしたメイドたちが、慌てて着飾ってくれたのかも。


(だとしたら、無駄な労力を使わせてしまったわね)


 いっそ、使用人の皆にはフレデリック様から、ちゃんと宣言してもらったほうがいいのかもしれない。

 私はあくまで形だけの婚約者で、本当の想い人はゼシカ様なのだと。


「おはようございます、リアナ嬢。急なお誘いを承諾くださり、ありがとうございます」


「いえ、お待たせしてしまって申し訳ありません」


「少しも苦ではありませんでしたから、お気になさらないでください。食堂までご一緒してもいいですか?」


「え、ええ、勿論ですわ」


 軽く腕を曲げエスコートの体勢をとったフレデリック様に右手を預け、階段を下りる。


(フレデリック様も、なんだか妙だわ)


 これまでも何度か朝食を一緒にすることはあったけれど、こうして階段上からエスコートをしてくださるなんて、初めてだもの。

 それに――。

 フレデリック様と共に食堂に足を踏み入れるなり飛びこんで来た光景に、私は思わず絶句してしまう。


(ご、豪華すぎるわ!!!)


 焼き立てのパンが数種に、サラダとスープと、卵料理。

 朝食だというのに、ベーコンではなく焼かれた肉まで用意されていて、チーズ入りのマッシュポテトが添えられている。

 断面の瑞々しい果物たちはそれだけで充分過ぎるデザートなのに、ケーキをはじめとする焼き菓子も用意されているし……。


「どうぞ、リアナ嬢」


「あ、ありがとうございます」


(やっぱり変だわ!!)


 明らかにいつもと様子が異なる食卓にも、平然と椅子を引いてくれたフレデリック様には微塵の動揺も見られない。


(フレデリック様は、この状況を既にご存じだった……?)


 対面の席に腰かける姿を眺めながら思案していたせいで、パチリと視線が合ってしまう。

 と、僅かながら彼の頬が強張った。脳裏に今朝のメイドの表情が過るも、「お紅茶をお注ぎいたします」と使用人に声をかけられ、思考が途切れる。


「温かいうちにいただきましょう」


 フレデリック様に促され、食事に手をつける。

 すっかり慣れ親しんだ侯爵邸の食事は相も変わらず美味しいのだけれど、どう考えてもこの量は食べきれる気がしないわ。


(残っても皆で分けることが出来ないお料理から食べていくべきね……)


 それにしても、フレデリック様のご朝食は長いこと固定化されていたはず。

 私の朝食だって、メニューに多少の差異はあれど、食べきれる量だったのに。

 普段と違うことといえば、フレデリック様が昨日お戻りになったくらいで……。


(もしかして、久しぶりの長期任務から戻られた帰宅祝い?)


 フレデリック様がちゃんとしたお食事をとれているか、皆、心配していたものね。

 彼がこの明らかな異常事態に疑問を抱いていないのは、昨晩の夕食も同じ理由で豪勢だったからなのかも。


(そういうことなら……)


「本当にお疲れ様でございました、フレデリック様。無事にお戻りくださり、屋敷の誰もが喜んでおりますわ」


 と、フレデリック様が手を止めた。

 てっきり軽い相槌で終わるかと思っていたのに、彼は何か言いたげな瞳で私を見て、


「……リアナ嬢も、"誰もが"の中に入っていますか?」


「え? え、ええ。勿論です」


「……嬉しいです。本当に、心から」


 フレデリック様はカトラリーを皿に置き、取り繕ったような笑みを浮かべる。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

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