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婚約者の騎士様に放置されたので異世界で日本酒を楽しみます~本当に好きなお相手とどうぞお幸せに~  作者: 千早 朔


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騎士が剣を捧げる淑女

「まさしく、その瞬間に私は恋に落ちてしまった。気付けば"結婚してほしい"と叫んでいた。彼は驚いていたが、その場で承諾をしてくれてな。後から聞いた話では、もう少し時間をかけて私を口説くつもりだったらしい。だから、とても嬉しかったと笑っていた。あれほど苦手だった彼の笑みも、その時は可愛く見えてしまった。本当に、恋とは妙なものだな」


 その後、オリオル公爵夫人となったマルガレット様は公爵夫人としての役目をこなしつつ、商店を中心に事業を増やし今の地位を築き上げた。


 残念ながら子供には恵まれていないが、お姉様の次男がマルガレット様の事業を手伝ってくれていて、将来的には継いでも構わないと勉学に励んでいるそう。

 オリオル公爵も了承済で、マルガレット様が望むのなら養子を迎えても構わないと話されているのだとか。


「リアナ嬢の事情はそれなりに把握しているつもりだ。だからこそ、己の力で選択肢を増やそうと奮闘するそなたを気に入った。特に、このままでは望まぬ結婚を選ばなければならない姿が、余計に過去の私と重なってな。輝く才を発揮できぬままベスティ侯爵家に押し込まれては、口惜しすぎる」


「マルガレット様……」


 真摯な瞳で私を映し、マルガレット様は私の掌にその手を重ねる。


「結婚が良い転機となる場合もある。だがリアナ嬢には、己の意志で選択をしてほしい。これは私の身勝手な願いだ。故に、そなたが新たな道を切り開くための支えになりたいと思った。……理解してもらえただろうか?」


(本当に、お優しい方だわ)


 たとえ周知の事実だったとしても、苦い思いをした過去を自ら語るには大きな疲労が伴うでしょうに。

 じんと熱く痺れる胸の内を感じながら、私は姿勢を正し、


「お願いいたします、マルガレット様。どうか私が新たな道を築けるよう、ご指南いただけますでしょうか」


 下げた頭に、ぽんと優しい手が乗せられる。


「もちろんだ。苦難も多いだろうが、折れるでないぞ」


「はい!」


 微笑みあった私達の髪を、穏やかな風が通りゆく。

 マルガレット様は紅茶とサンドイッチで一息ついてから、「では、さっそくだが」と口を開き、


「なぜ、建国祭までにこのグラスを可能なだけ生産するよう依頼したか、わかるか?」


「それは……建国祭では、通常時に比べ"特別なモノ"を購入する人が増えます。なのでこの機会を狙い、グラスの販売を開始するため……でしょうか?」


「着眼点は悪くない。が、それではただの"目新しいモノ"は売れない。よいか、貴族というのは案外慎重であり臆病だ。そんな彼らを動かすのは、"話題性"。"剣姫選定の儀"は知っているな?」


「はい。ここエグラーフ王国の偉大なる歴史に基づき行われる儀式、と聞きました」


 これは、大戦時代よりも前の話。

 かつてケルシュバイン帝国の兵が国境まで迫った際、当時の王女エヴィータは自ら剣を握り、騎士を率いて戦場へ向かったのだという。


 小国と帝国。

 騎士の数にしても絶望的な状態ながら、逃げるどころか先陣に立った王女の勇気と愛国心に、当時のケルシュバイン帝国の皇帝はひどく心をうたれたそう。


 彼は兵を引き上げさせ、以降、エグラーフ王国への不可侵を約束し、交流を深めた現在においては友好国の一つとなっている。

 マルガレット様は「そうだ」と頷き、


「建国祭における"剣姫選定の儀"では、三名の未婚の淑女と八名の騎士が選ばれる。騎士は四組に分かれ、儀式用の剣を用いて一対一の戦闘を行い、勝者は淑女の一人に己の剣を捧げるのだ。誰よりも多くの剣を手にした淑女がその年の"剣姫"となり、一番に近い満月の夜に、国の繁栄と安寧を祈った奉納の儀を執り行う」


(確か、昨年はアシェル様とエステラ様、そしてゼシカ様が選抜されて、アシェル様が"剣姫"に選ばれていたわ)


 アシェル様の婚約者は、王太子殿下の護衛騎士。

 その彼が、儀式の夜にアシェル様を迎えに行き、個人的に剣を捧げた話が多くのご令嬢の憧れとして語られていた。


(当のアシェル様は、剣を捧げる相手を間違えていると叱ったと言っていたわね)


 フレデリック様も、八名の騎士の一人として儀式に参加していた。

 見事勝利し、ゼシカ様に剣を捧げてい彼は、その前の年も同じようにゼシカ様に捧げていた。

 聞いた話では、フレデリック様とゼシカ様が揃って出席した年は、必ずゼシカ様に捧げていたよう。


(本当、そこまで一途に想い合っていたというのに、どうしてお二人の婚約が叶わなかったのかしら)


「三名の淑女だが、王妃殿下より私が選定の任を賜っていてな。近々正式な通達があるだろうが、昨年の"剣姫"となったアシェル嬢に、騎士団で実権を持つフューストン男爵の娘であるゼシカ嬢。そして、リアナ嬢、そなたに決定した」


「えぇ!? わ、私がですが!?」

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

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