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婚約者の騎士様に放置されたので異世界で日本酒を楽しみます~本当に好きなお相手とどうぞお幸せに~  作者: 千早 朔


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希望を願った扉の先へ

 ドサリと倒れ込むようにして身体を預けたベッドの上で、お爺様が"お守りに"と渡してくれたネックレスを握りしめる。

 小さな石がはめ込まれた、一見よくあるシンプルなデザインのネックレスだけれど、これもお爺様がコレクションしていた"魔道具"の一つだという。


(お爺様は、どうしてこの"魔道具"を譲ってくださったのかしら)


 貴重な物だと主張されている"魔道具"は、扱える者のいないこの国では真偽も分からない玩具扱いをされている。

 故にお爺様は"変わり者のコレクター"と認識されているけれど、私が幼い頃から少年のような顔でコレクションを披露してくれるお爺様は、ちっとも気にしていない様子だった。


 私もまた、物語の”冒険家”のようなお爺様が大好きで、歳を重ねてからも活動的なお爺様が館に戻ったと聞いては新たな道具を見せてもらいに行っていた。

 だからこそ、良く覚えている。

 あの日……私に婚約の申し込みがきていると話すお爺様は、寂し気な”祖父”の顔をしていた。


「この婚約を受けるかどうかは、リアナ自身が決めるといい。言っておくが、支援など受けずとも今の生活を続けていけるだけの見込みはあるから、気にせずとも良いからな。だが……"好機"というのは、一歩を踏み出した先に転がっていたりもするからの」


「お爺様は、この婚約が"好機"だとお考えで?」


 尋ねた私に、苦笑したお爺様は「それが分かる道具でもあれば良かったのだが」と緩く首を振り、


「ワシらがこの地を好いてしまったがために、リアナは首都の生活を知らんだろう? この婚約を受ければ、"教育"のためとはいえ侯爵家での生活が約束されている。知らないモノを想像で比較するよりも、経験してから選ぶほうが確実な答えになるというものだ。それに……悔しいが、見知らぬ男に嫁がせるよりは、まだマシな相手ではあるからな」


 確かに、交流もなければ顔もわからない相手に嫁ぐよりは、歳も近く結婚歴もない、幼少期とはいえ知った相手だというだけでも安心感がある。

 おまけに"夫人教育"として侯爵家で過ごす間、全ての面倒を見てくれるというし、さらには領地への支援もしてくださるだなんて、贅沢すぎるほどの好条件。

 断る理由などないわ。


「お爺様。この婚約、謹んでお受けしたいと思います」


 お爺様から了承の返事を受け取ったベスティ家は大喜びしてくれたようで、身一つで構わないから一日でも早く侯爵家へと馬車の手配も申し出てくれたそう。

 そうして慌ただしく準備が整えられ、いざ領地を離れるとなったその日の前日、お爺様は私にこのペンダントを贈ってくださった。


「この"魔道具"をお守りとして持って行くといい。……とある呪文を唱えると、"奇跡"が起こる代物での」


 かつてお爺様は息子であるお父様に渡そうとしされたことがあったそうだけれど、"魔道具"を真偽もわからないガラクタだと考えているお父様は、「またそんなモノを」と呆れて取り合ってはくれなかったそう。

 ばかりか、危険物だからと破棄されそうになったこともあったのだと懐かし気に話したお爺様は、私の手にペンダントを握らせ、


「"奇跡"を起こす魔法の呪文は、異国の言葉だから忘れるでないぞ。いいか。呪文は――」


(本当に、"奇跡"が起きないないかしら)


 ほんのわずかな、小さなものでもいい。

 この夜を耐え、明日からまた"いつものように"頑張れるような、そんな"奇跡"。


 上体を起こし、ペンダントを包み込んだ両手を祈るようにして額にあてる。

 お爺様から教えらえた"呪文"は。


『――――』


 刹那、瞼を閉じていても分かるほどに眩い光。

 急ぎ目を開くと、ペンダントが掌からするりと抜けて宙に浮いた。

 あっけにとられた次の瞬間、部屋の中央に黄金の扉が現れる。


「っ、本当に、"魔道具"だったのね」


 自分よりも大きなそれを見上げながら呆然と呟くと、光が消えた。

 転がり落ちたペンダントを拾い上げると、石の奥がまだ微かに光を帯びている。

 扉が出ている間の目印かしら?


(この扉、開けてもいいのかしら)


 そっとそのノブに触れてみるも、淡く光っている以外は特に異常は感じない。

 この扉はどこに繋がっているのか。

 物語のように、開けたら魔物が飛び出してきたりなんてしないわよね?


 不安はあれど、きっと大丈夫だという確信が勝っている。

 だって、このペンダントをくれたのも、呪文を教えてくれたのもお爺様だから。

 そしてなにより。


(こんなにワクワクするのは、いつぶりかしら)


 ぐっと力を込めて扉を開く。すると。


「! これは……異国の酒場、かしら?」


 規則的に並べられた木製の小さなテーブルとイスは、自国にそれにそっくり。

 けれども昼のように明るい室内は活気はあれど荒々しくはないし、なんといっても、女性だけで席についているだなんて……。


(離れた席で護衛騎士が睨みを効かせているの? いいえ、それだけではああもリラックスした様子でお喋りに夢中になれるはずがないわ)


 もしや、この酒場のマスターはこの国の元英雄だったり?

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

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