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婚約者の騎士様に放置されたので異世界で日本酒を楽しみます~本当に好きなお相手とどうぞお幸せに~  作者: 千早 朔


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お嬢様にバニラアイスを

「リアナさんはまだ日本酒に慣れていないから、今日はもう飲ませたら駄目だよ」


「ええー、課金したいのに……! あ、ならデザートとかどうかな? リアナちゃん……あ、リアナちゃんって呼んでいい? アタシは香穂でいいよ! 甘い物って好き? アタシに驕らせて!」


「そんな、ご挨拶を交わしただけですのに、お金を出していただくわけには」


「あー、この人、気に入った相手に金を使って喜びを感じるタイプなんで。迷惑じゃなければ、好きなの注文してもらえると助かります。この人が」


「そそ、このために働いているといってもいいくらい!」


 にっこりとしながら大きく頷く香穂様は、なんだか可愛らしい。


「それでは、お言葉に甘えさせていただきますわ。三樹様、お願いできますでしょうか?」


「もちろん。そうだなあ……あ、アイスにしよう。ロイドさんも感動していたし」


 ちょっと待っててね、とカウンター奥の部屋へ向かう三樹様の背を見届けて、私は「ありがとうございます、香穂様」と隣へ視線を移す。

 すると、香穂様は「お礼を言うのはアタシの方だよー」と手を振って、


「実はね、この間ここでリアナちゃんを見かけてから、ずっっっと話しかけなかったのを後悔してて……! まだこの国に不慣れってことは、海外から来たんだよね? 旅行? あ、それとも留学的な? いつまで日本にいるの?」


「ええと、ですね」


(そもそもこの世界ではない国から来たって、言ってもいいのかしら?)


 これまでの三樹様の口振りからして、この世界でも異世界から人が来るというのは珍しい事象のようだけれど。

 そうなると、普通は冗談だと思われて終いのような気がする

 どう説明すべきか必死に考えていると、「あの」と笹倉様が小さく挙手し、


「言い辛いことだったら、言わなくて大丈夫っすよ。アニメや漫画が好きで日本に来る人って、よくいますし」


「……申し訳ありません。その、"アニメ"や"マンガ"というのは、どのようなものでしょう?」


「あれ? その恰好、なんかのコスプレじゃないんですか?」


「"コスプレ"、という言葉も自国にはないものでして……」


 助け船を出してくれたであろうに、うまく会話がかみ合わなくて揃って疑問を飛ばし合ってしまう。

 と、「"コスプレ"だなんて、まだまだね辰彦!」と香穂様が腕を組んで、


「これはコスプレじゃなくて、"クラロリ"……すなわち"クラシカルロリータ"というファッションジャンルですー! そうだよね? これってリアナちゃんの通常服だもんね?」


(この世界では、こうしたドレスは"クラロリ"と呼ばれているのね)


 店内の人々の様子から、この国の女性はこうしたドレスを着ないことには気が付いていた。

 だから今回は、手持ちの中でも装飾のほとんどないワンピースを選んだつもりだったけれど、それでも珍しさは拭えなかったのね。


「はい、私の服はこうした形のものがほとんどになります」


「やっぱり! だって着慣れている感じだし、すっごく似合うし。それにしても、これってもしかしてオーダーメイド……? この間のお洋服もこれも、リアナちゃんのために作られたみたいに形が綺麗だし、この生地も縫製も量産品っぽくないし」


「えと、確かにどちらも仕立てたものですが、香穂様や笹倉様のお洋服は違うのですか?」


「ぜーんぜん! 普通にお店で買ったやつだよ」


「同じく。この国でも仕立てることは出来るけど、大多数は既製品じゃないすかね」


「……もしかして、リアナちゃんって本当に"お嬢様"なんじゃあ」


 深刻な顔でぼそぼそと呟く香穂さんの隣で、呆れたような息をついた笹倉様が私の視線を誘導するように軽く手を上げ、


「俺のことも辰彦でいいっすよ。リアナさんはどうしてこの店に? 日本酒が好きなんすか」


「いえ。この店には、ええと、祖父の紹介のような形で繋がりまして……。"ニホンシュ"も先日初めて知ったのですが、とても独特で味わい深いお酒ですね。種類も豊富ですし、お食事によって変化が楽しめるのも興味深いです」


「だって。よかったな、三樹さん」


 カウンターの内側に視線を流した辰彦様につられ視線を遣ると、小皿を手にした三樹様が。


「嬉しいねえ。日本酒って、若い子にはちょっととっつきにくい印象があったりするから。はい、これ。バニラアイスっていう氷菓子のウエハース添え」


 コトリと置かれた陶器の中には、クリームに似つつもしっかりとした重量感のある白く丸いものが。

 ウエハースというのは、刺さっているクッキーのような菓子のことね。

 スプーンで端をすくうにも、案外力が必要だわ。


(潰したポテトを固めたような雰囲気だけれど、”コオリガシ”って何かしら)


 ドキドキしながら口に含んだ刹那、走った衝撃に思わず口を開く。


「冷たい……っ! ……ん、噛んでいないのに、すっと消えてしまいました」

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

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