表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者の騎士様に放置されたので異世界で日本酒を楽しみます~本当に好きなお相手とどうぞお幸せに~  作者: 千早 朔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/39

ちょっと抱きしめてもいいですか?

「~~っ、三樹様、おかわりをお願いできますか……っ!」


「もちろん! でも、飲み過ぎは注意だよ」


 新たに注がれた一杯を、意識的に少しずつ口に含む。


(とろみのあるお酒もいいものね)


 うっとりとしながら味わっていると、亀さんが「おや」と店内を見渡し、


「オーダーのようです。ちょっと失礼しますね」


 胸元からペンを取り出し去っていく亀さんに、こちらの世界の"ペン"は便利で羨ましいわ、なんて考えながらその後ろ姿を見送る。


(ペンだけではないわね。この世界は、あらゆるものが刺激的だわ)


 ほんの一杯のお酒に、ほんのひと皿のお料理。

 だというのに、味も食感も、この場所に来るたびに新しい"美味しい"がどんどん増えていく。


「……ここに来ると、なんだか私自身の新しい一面が増えていくような気分になります」


 呟いた私に、三樹様は「楽しんでもらえているみたいで良かった」と、どこか安堵したように微笑む。

 その表情を不思議に思い見つめていると、彼は苦笑気味に肩を竦め、


「なんだか、元気がないように見えてさ。ここにいる間だけでも、気が紛れてくれたらいいなって思って」


(……顔に出てしまっていたのね)


 そんなことにも気づけないほど、切羽詰まっていたことを自覚する。

 そして同時に、フレデリック様は、何も言ってこなかったことも。


(それこそ、今更ね)


 私は沈みそうな思考を打ち消し、一口を流し込む。


「……三樹様が選んでくださる品がどれも美味しいので、嫌なことなど忘れてしまえます。この"ニゴリザケ"というのは、白濁してとろみがある"ニホンシュ"を全てそう呼ぶのですか?」


「よっっっくぞ聞いてくださいました……! 一口に"にごり酒"って言ってもにごり方で分類が変わるし、飲み口も甘口から辛口まで様々な――」


「ちょーーーーっとまったああああああ!」


「!?」


 突如眼前ににゅっと現れた掌に、声のした右耳上を見上げる。


(わ、綺麗なご令嬢ね)


 店長を睨むようにして見つめる瞳は、美しい琥珀色。

 さらさらとしたダークアッシュの髪は、自国でもあまり見ない髪質で、色調のはっきりとしたお化粧とよく似合っている。


「日本酒の話になるとすーぐスイッチ入るんだから! そんなマシンガントークされても困るだけですー!」


「おっと、ごめんごめん。日本酒に興味を持ってもらえたと思ったら、つい嬉しくなっちゃって」


「もー、だから毎回言ってるじゃないですか! ご新規さんを引きずり込みたいなら、慎重にすこーしずつ警戒心を解いていかないとって」


(三樹様のお知り合い……かしら?)


 話している内容はよくわからないけれど、漂う気さくな雰囲気に、二人を交互に見比べる。

 と、彼女の瞳が私に向いた。あ、と思った矢先、彼女は強気な目尻をふにゃりと下げ、


「ねー! どうしよう近くで見てもやっぱりカワイイ!! ね、よかったらちょっと抱きしめてもいいかな?」


「へ? わ、たしですか?」


「出たよ……あのな、それこそ普通に初対面じゃ怯えるだろーが。困らせてすみません」


 女性の両肩を軽く引くようにして私から離したのは、黒く短い髪と同色の瞳をした男性。


(このご令嬢の執事さん……というよりは、護衛かしら? 服装は、騎士らしくないけれど)


 白いシャツに、自国でも馴染みのある形のジャケット姿の彼に、なら婚約者? などと考えを巡らせながらも「いえ」と微笑む。


「抱きしめるのは、この国の挨拶方式でしょうか? でしたら、ぜひ私もよろしくお願いいたします」


 国によって挨拶の形式が異なることは、お爺様の話でよく知っている。

 先ほど彼女がしていたように両手を広げてみせると、男性はやってしまったという風にして額を抑え、


「いえ、違うんで大丈夫です。ただのコイツの悪いクセなんで」


「アタシね、可愛いモノはぎゅっとしたくなるんだよね。あ、お隣座ってもいい?」


「やりたい放題かよ……」


(なんだか面白い方々ね)


 裏のない、率直な掛け合いが見ていて清々しい。

 女性に隣の席を勧めると、「やったー!」と嬉し気に腰かける。


尾上香穂おがみかほです。こっちの大きいのは笹倉辰彦ささくらたつひこ。ほら、デカくて邪魔だから座りなさいって!」


「自由かよ。あの、ホント邪魔だったら言ってもらって大丈夫なんで」


 渋々ながら女性の隣に腰かけた男性に視線を合わせ、「お気遣いいただきありがとうございます」と笑む。


「リアナ・クレコと申します。こちらの国にはまだ不慣れですが、お話しいただけますと嬉しいですわ」


「まっ……可愛くて綺麗なうえに優しくてお嬢様口調……? は? 推せる要素しかなくない? 神すぎない?? 三樹さん彼女に一番いい日本酒を」

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

気に入りましたら、ブックマークや下部の☆→★にて応援頂けますと励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ