表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者の騎士様に放置されたので異世界で日本酒を楽しみます~本当に好きなお相手とどうぞお幸せに~  作者: 千早 朔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/38

スパークリング日本酒で抜群の調和を

 開いたポーチの中身は、紙幣とやらとコインに変わっている。

 どうやらこの国のお金と自国のお金は価値が違うようで、先日部屋に戻った際、変換されないままだったコインがいくつかあった。


 ひとつはこっそりと保管して、それ以外はこのポーチに入れ一緒に持ってきたのだけれど。

 私があれこれ考えるよりも、任せてしまった方が利口よね。


「こちらを使って、お酒とお料理をお願いできますか?」


 三樹様は「もちろん」と頷き、ポーチを覗き込む。


「それじゃあ、失礼して……うん、なんでもいけちゃうね」


 お金は帰るときにいただくね、とポーチから顔を離した三樹様は、「うーん、そうだなあ」となんとも楽し気に伸びをする。


「うん、決めた。前回とはまた違った趣向に挑戦してもらおうかな。亀さん、"イチジクの白和え"をお願いできますか」


「はいはい、すぐにお作りしてきます」


 厨房に向かった亀さんを見送り、三樹様が"レイゾウコ"という大きな保管棚から取り出したのは、なんとも美しい透き通った空色の瓶。


「まずはお酒。雁木がんぎという、山口県の蔵のスパークリング日本酒だよ。確かリアナさんのところにも、シャンパンってあったよね?」


「はい。ワインほど流通量は多くありませんが、特別な夜会などで振舞われています」


「これはね、そのシャンパンと同じ"瓶内二次発酵"っていう方法を使って瓶の中で再発酵させて、炭酸ガスを発生させているんだ」


 そう言って三樹様は冷えたワイングラスに、ゆっくりと"ニホンシュ"を注ぐ。

 前回とは異なる、シュワシュワと軽やかな音。


「シャンパンのように細やかな泡が……! 色も透明ではなく白いですし、とろみがあって……。前回頂いたものと随分と違うように思うのですが、これも"ニホンシュ"なのですか?」


「うん、"にごり酒"って言ってね。日本酒は"もろみ"っていう状態から色々な方法で液体と固形分を極限まで分けると、透明になるって話をしたのを覚えている? これはワザとおりっていう固形分が残るようにしているんだ。そのぶん、お米の旨味や香りを濃厚に感じられるんだけれど……とろみがあるから、飲み口がしっかりしててね。そこでお勧めなのが、このスパークリング!」


 飲んでみて、と差し出されたグラスを摘まみ上げると、ヒヤリと冷たい。


(とろみのあるお酒なんて、初めて飲むわ)


 好奇心にドキドキとしながら、くいっと煽る。


「……! とろっとしているのに、シュワシュワとした口当たりで飲みやすい……! お米の甘さもしっかりと感じられるのに爽やかで、酸味も軽やかな味わいですのね」


 再び口をつけると、「そう!」と三樹様。


「にごり酒の"ならでは"を楽しめつつ、ぐびぐびいけちゃう! でもね、リアナさん。お料理とも合うから、全部飲み切る前にストップね」


「あ、本当だわ。私ったら、つい」


("ニホンシュ"はゆっくり味わうものなのに、すっかり忘れていたわ)


 おかわりもあるから、とクスクス笑う三樹様に、恥ずかしさを覚えつつも礼を告げる。

 と、「お待たせしました」と亀さんが。


「"イチジクの白和え"です。イチジクはご存じですか?」


「いえ、初めてみます。うっすらと赤く色づいていて、甘い香り……果実、ですか? この白いソースは、チーズかしら?」


「イチジクは、当たりですね。残りの答え合わせは、食べた後にいたしましょうか」


 亀さんに促され、白いソースを纏ったイチジクを一切れ、口内へ。

 食むと、じゅわっと甘い果肉が砕け、淡い塩味のあるソースが混ざり合う。


「美味しい……! でも、このソースはチーズではありませんね。もっと軽さがありつつもまろやかな……白いのに、クリームとも違った味わいで」


 すると、三樹様がふふ、と笑み、


「それはね、豆腐っていう、この国の伝統的な加工食品なんだよ。本来はもっと固形なのだけれど、それを潰して裏ごしして、ソース状にしたんだ。この間、お刺身につけた醤油は覚えてる?」


「はい。黒い"ショウユ"ですね」


「豆腐の元は醤油と同じ、大豆っていう豆なんだよ」


「え!? こ、こんなに白いのにですか!?」


 色だけではないわ。味わいも風味も、全然違うのに……!

 すると、亀さんは「そういえば」と続け、


「この白和えにも、塩味を加えるためにちょこっとだけ醤油を混ぜ込んでいるんです。元が同じだけあって、相性がいいですよね」


「そして相性といったなら、もちろんその雁木スパークリングとも」


「!」


 笑みを深める三樹様に頷き、イチジクをもう一切れ味わってから、残りのお酒を口に含む。


(ま、まるで一流の楽団のようだわ……!)


 イチジクの果実らしい酸味と甘みに合わさる、優しい塩味の効いた"トウフ"のまろやかさ。

 それを追いかける"ニゴリザケ"のシュワっとしたスパークリングの華やかな甘味が、お互いを打ち消すことなく重なり合う。

 ソース状ながら軽やかな舌触りだからこそ、お酒のとろみが際立って……。


(なんて抜群の調和なの……!)

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

気に入りましたら、ブックマークや下部の☆→★にて応援頂けますと励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ