表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/34

第3話:第3部 キーホルダーが映す微かな影

嵐山の川沿いを歩いたとき、春の光が水面にやわらかく反射していた。彼女の笑顔はいつも通り明るく、少しはにかんだ仕草が風に揺れている。私の胸は、そんな彼女の存在でじんわり温かくなるのを感じていた。


ふと彼女はかばんをごそごそし、

「似合うと思ったから、思い切って買ってみた」


差し出された小さな箱の中には、アニメのキャラクターのキーホルダーが入っていた。初めて見る種類に少し驚きつつも、彼女の心遣いが嬉しく、私は自然と笑顔を返した。


しかし、後日、共通の友達との食事の際に偶然見てしまった彼女のSNS投稿が、私の胸をざわつかせた。そこには、私がもらったキーホルダーの写真と共に「友達にあげるキーホルダー…いらんって」と書かれていた。


頭が一瞬真っ白になった。脳内で文字を何度も反芻する。理解は追いつかない。私にくれたものを、他の人には拒絶された…?

好意は本当に私だけに向けられたのか――胸の奥で、静かに疑念が膨らんでいく。


以前の恋で受けた傷がよみがえる。人を信じることの怖さ、依存することの不安。あの感情が、今、彼女との関係に微かな影を落としている。


「聞いたら、きっと余計に壊れる」

私はそう思い、彼女に直接尋ねることはできなかった。信じたい気持ちと疑いたい気持ちが絡まり、胸のざわめきは消えない。


夜、布団に入りながらも、あのキーホルダーとSNSの文面が頭をよぎる。彼女はただ喜ばせたくて選んだのだとわかっているのに、心は臆病になり、彼女との関係に微かな影が差したことを実感していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ