第2話:第11部 愛の鎖に縛られて
同棲再開から半年が過ぎ、私は仕事で評価され、残業も増えて家で彼女と過ごす時間は減っていった。それに比例するように、彼女の気持ちも次第に荒れていった。些細なことで怒り、犬の餌やりや洗濯物の取り込みなど、生活の小さなズレも火種になった。
さらに、彼女の会社でのコンテストが思うようにいかず、結果に落ち込み、仕事を休む日が増えていったことも不安定さに拍車をかけていた。家庭でのすれ違いと、仕事での挫折が重なり、彼女は以前より感情の起伏が激しくなっていった。性行為に関しても、彼女は積極的なタイプで、私が疲れて断ると激昂して言い争いになることもしばしば。共通の友達を呼んでも怒りは収まらず、ある日断っただけで泣きながら全裸でマンションを飛び出すこともあった。
残業で遅く帰宅する日々、家の扉に内側からチェーンがかかり入れないこともあり、電話をかけても出ず、仕方なく会社で夜を明かしたり、公園で朝を迎えたりすることもあった。不安に押しつぶされそうになりながらも、私は身を小さくして生活していた。
ある夜、些細な口論がきっかけで、彼女は包丁を手に取り「私死ぬ」と叫んだこともあった。私を会社に行かせないために服や靴をすべて捨て、さらに私がDVをしたと嘘を広めることまでした。時には殴られ、腕や背中にあざが残ることもあった。その度に心が押しつぶされ、どうしたらいいのかわからなくなった。
加えて、彼女は必要以上に私の会社に何度も電話をかけ、「病院に連れて行ってほしい」と要求してきた。仕事で出られないと断っても、電話は鳴りやまず、次第に精神的に追い詰められていった。
そしてある夜、残業を終えて家に戻ると、扉は開いており、彼女はソファで寝ていた。起こさないようにそっとしていたが、突然背中に殴られた感触が走る。目を開けると彼女が立っていて、「あんた、よく寝れるな!」と笑った。その言葉に心臓が凍る。机の上を見ると、大量の薬が置かれ、「私、これで死ぬつもりやったんやで」と震える声でつぶやく彼女。その瞬間、私は言葉を失った。胸の奥に重くのしかかる恐怖と無力感。
幸せだった時間が遠くに消えたように思え、私は深く息をつきながら心の中で呟いた――もう無理だ、と。家庭も、愛も、日常も、すべてが崩れかけていた。