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第2話:第10部 息ができないほど、遠ざかる心

同棲を再開し、ぎこちないながらも日常は回っていた。そんな中で、私は肺炎と気管支炎にかかってしまった。実は付き合い始めてからも二度ほど肺炎で入院しており、今回も即入院となった。忙しい日々から一変し、ベッドで寝て点滴を受け、ごはんを口に運ぶだけの退屈な毎日を過ごすことになった。


それでも、彼女は時折お見舞いに来てくれたし、友達も顔を出してくれた。私はこれを、神様がくれた休息だと感じ、久々に心からゆっくりできた。三週間ほど経ち、ようやく退院の日が訪れた。


しかし、肺炎の後遺症は大きく、街中を歩くだけでも急に呼吸が苦しくなることがあり、私は携帯用吸入器ネブライザを常に持ち歩く必要が生まれた。


退院後、彼女が久しぶりに外出を提案してくれた。久々のショッピングに私は少し心が躍った。しかし、出かけるときに携帯用吸入器を忘れてしまっていたことに、内心不安を抱えながらモールを歩いた。映画を見たり食事をしたり、表面上は楽しんでいるように振る舞っていたが、胸の奥には常に小さな不安があった。


帰り道、道路を歩きながら次に何をするか話していたとき、突然、呼吸がうまくできなくなった。喉が締め付けられるように苦しく、胸が圧迫されて、肺の奥が焼けるように痛む。息を吸おうとしても肺に空気が入らず、吐こうとしても吐けない。言葉も出せず、心臓の鼓動だけが耳に響き、頭がぼんやりとしていく。水の中に沈むような、重く湿った圧迫感に包まれ、死の恐怖がリアルに迫った。


必死で彼女にタクシーを呼んでほしいと懇願し、手を震わせながら指示した。すぐにタクシーは来たが、彼女の口から出たのは「あー久しぶりのおでかけやったのになー」という言葉。息もままならない状態でその言葉を聞いた瞬間、心の奥底で何かが崩れ落ちた。


恐怖の中で私は彼女の存在に冷たさを感じ、愛情が次第に薄れていくのを自覚した。生死の境をさまよった私にとって、彼女の言葉は支えではなく、壁のように立ちはだかった。これまで支え合ってきた日々の重みさえも、もう届かないのかもしれない――そんな思いが胸を占め、私は静かに心を閉ざした。

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