戦力外として追放されました
「お前は弱すぎる」
勇者様にそう言われました。
「足手まといだ」
事実だと思いました。
「故郷で生きろ」
それが私と勇者様達との別れでした。
一度も振り返らない勇者様達の背を私は見送るばかりでした。
――もう、三年も前のことになります。
***
私は故郷で薬師として生きていました。
勇者様達が魔王を倒し平和が訪れてからもうすぐで半年になります。
怪我をする人も毒の治療を求める人も少なくなりました。
私も薬師ではなく便利屋としての仕事が増えてきています。
――そんな折。
「あら?」
現れた人々を見て私は思わず手を止めてしまいました。
「これはこれは……お久しぶりです」
三年振りに会う勇者様達は私が最後にお会いした時と比べ、数え切れないほどの傷が増えていました。
姉のように慕っていた魔法使いは美しい顔に痛々しい切り傷が出来ています。
弟のように可愛がっていた精霊使いは両足を失い背中に精霊の羽を纏わせることで移動をしています。
そして誰よりも強く気高い勇者様は利き腕だった右腕が千切れて、右袖が悲しくもだらんと垂れさがっていました。
「元気そうで何よりだ」
「……ありがとうございます」
勇者様はにこりと笑いました。
「ごめんな。本当はもっと早く来たかったんだけど、諸々の事情で中々来れなかったんだ」
「ええ。王都は三ヵ月以上もお祭り騒ぎだったと聞きました」
「あぁ」
勇者様はそう言うと私の方へ一歩近づき、左腕を差し出しました。
「さぁ、行こう」
「えっ?」
混乱する私に勇者様は言いました。
「旅をするのが好きだったんだろう?」
かつて、私が勇者様に同行を願い出た時の言葉が思い出されました。
――私、色んなところを見てみたいの!
私の同行理由は勇者パーティーの一員としてはあまりにも弱く、そして不適切なものでした。
それでも勇者様は――皆は私の同行を許可してくれました。
「今は平和な世の中だ。今なら、また一緒に旅に出られる」
その言葉と共に魔法使いと精霊使いが口々に言います。
私と別れた後に見てきた世界のことを。
そこを私と一緒に見ることが出来たらと何度も思っていた――と。
「いいのですか?」
「当然だろ?」
勇者様は微笑む。
「俺達、それを楽しみに魔王を倒したんだから」
――その後の旅で見た景色と記憶を私は永遠に忘れないでしょう。
素晴らしい仲間達との幸せな日々を決して忘れることはないでしょう。